電工さんの工具箱 第26回「電工ハンマー」ハンマー+レンチの便利工具。

人類最初の工具かもしれない

「天才かよ」とか「マジで神」などと、周りから称賛されたに違いない。

旧石器時代、手に持った石をハンマーのように使い、初めて物をたたき割った“ヒト”がである。

まさに人類初の快挙だ。そして、その行為をみんなが真似たのだろう。約200万年前にアフリカで暮らしていたホモ・ハビリス(器用な人)は、道具を知的に用いた最初の人類とされる。いや、300万年以上前、アウストラロピテクス・アフリカヌスという猿人がすでに道具を使っていたという説もある。

道具を使う動物たち

道具の使用がヒトとサルとの大きな分かれ道だが、猿の仲間以外にも道具を巧みに使う動物がいる。

たとえば、子どもたちに人気のラッコだ。

あおむけになって泳ぎながら、おなかの上に乗せた石に貝を何度もたたきつけて割るのだから器用で賢い。ちなみに、あの石はお気に入りの“マイ道具”で、普段は脇の下にしまっているのだそう。

利口な鳥として知られるカラスのクルミ割りは、さらに頭脳的だ。道路上に、しかも車のタイヤが通りそうな位置にクルミを置いて、木の上などで待つ。やがて車が通り、見事に踏みつぶされて飛び出たクルミの実を労せずして食べるのである。カレドニアカラスという種類などは小枝でフック状の道具を作り、狭い場所から虫を引きずり出して食べるという。

土の中にも知恵者がいる。地中にトンネルを掘って暮らすハダカデバネズミは、その出っ歯で土を掘る際、薄い木の皮などをマスク代わりにする。

また、道具は使わないが、中南米に分布するハキリアリは農業を営む。葉や花を切り取って巣に持ち帰り、それらを発酵させて小さなキノコを栽培するというのだから驚く。

多用途な電工ハンマー

株式会社マーベルT-290 電工ダクトレンチハンマー 

話を元に戻すとしよう。人類が初めて手にしたハンマーは石製だったかもしれないが、現代には金属製、木製、ゴム製と、さまざまなハンマーがある。ハンマー(Hammer)は、日本語では「つち(鎚、槌)」。金づちや木づちなど、物を打ちたたく工具の総称だ。「とんかち」とも呼ばれるが、これは俗称で、“とんとん、かちかち”という擬音が名称の由来だとか。

また、金づちの頭の部分が両側とも平たいタイプのものは「玄翁(げんのう)」という伝統的な工具で、おもに大工や石工が使っている。玄翁和尚が殺生岩を砕いたという伝説に由来するそうだ。

そして、電気工事士が使うハンマーが、いわゆる電工ハンマーだ。ご存じの通り、木造住宅の配線作業をはじめ、照明器具の取り付けや空調機の吊り込みなど、電設工事でハンマーを用いる場面は意外と多い。というのも、電工ハンマーにはグリップの台尻にソケットレンチが付いているので、通常のハンマーのように打ち込んだりたたいたりする作業の他、ナット締めもできて重宝するのだ。腰袋にすっきり収まるショートタイプ、狭い場所でもたたきやすい横打ち機能が付いたタイプ、落下防止のロープ接続リングが付いているタイプ、切替式のダブルソケットタイプなど種類もさまざま。常に持っていたい必須工具の一つだ。