LED照明特集 注目の深紫外線LED

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が中国で初めて確認されてから4カ月あまりが経過した。この間、各国が防疫措置を講じてきたが感染拡大やその死者はとどまることを知らない。

そうしたなか、深紫外線LEDが持つ高い殺菌能力がいま新型コロナウイルスの殺菌用途で注目されている。これまで省エネの優等生といわれたLED照明だが、防災等に加え殺菌用途も含めたセーフティ分野やウェルネス、スマートといった新たな分野でもその存在感を示し始めている。多分野への応用が進むLEDの現状を探ってみた。

 注目の深紫外線LED

新型コロナウイルスの発生源とされる中国では新規の感染者は中国政府の発表では減少傾向にあるが、米国や欧州ではイタリアやスペイン、フランスなど一部の国で感染者が飛躍的に増加しており、今後アフリカなどへの感染拡大も懸念され終息はまだ見通せない。
我が国でも4月7日、安倍首相が東京、大阪など7都府県に「非常事態宣言」を発出した。欧米などのような都市の封鎖、ロックダウンこそしないが不要不急の外出自粛を求めるなど、感染拡大を何とか食い止めたいと、全国民が一つとなって見えない敵、新型コロナウイルスと戦っているが、確実に罹患者は増えつつあり、収束時点が全く見えず国民生活や経済に多大な影響を与えている。

LED照明業界も、製造面では一部の中国やアジアなどでの生産部品や製品の入荷が不安定になり、思い通りの生産・販売計画が立たない状況で、同時に通勤者の7割削減要請やテレワークへの移管など、戸惑いが発生している企業も多い。
営業、販売面では大規模イベントの中止や延期、建設工期の遅延などいろいろな面で大きな影響を及ぼしている新型コロナウイルス。そうしたなか、感染拡大で注目されてきているのが、深紫外線LEDだ。

紫外線の中でも波長が短い領域に属する深紫外線は、高い殺菌能力をはじめとした特長を持ち、水や空気の殺菌をはじめ、医療や工業など、多分野への応用が始まっている。これらの用途では、これまでは「水銀ランプ」が使われてきたが、水銀の人体や環境への有害性から、いわゆる水俣条約により、2020年に取り扱いが制限されることになった。
それに代わり登場した深紫外線LEDはそうした悪影響が極めて少ないうえに、コンパクトでエネルギー効率も良く、省エネで長寿命というLEDならではの特長を持ち、まさに「次世代の光源」として殺菌用途で注目されており、東芝ライテックなどが、深紫外線LEDをUV-LED流水殺菌装置などに組み込んで製品化をしている。

◇活発化する応用技術

波長によるUV LEDのアプリケーション(資料提供:ジャパンソウル半導体㈱)

世界的LED素子専業メーカーのソウル半導体の日本法人ソウル半導体・照明事業部SEチーム、Vice Presidentの木村好秀氏によると「ソウル半導体のグループ会社のUV・LEDのトップメーカーであるソウルバイオシスでは新型コロナウイルスが全世界で拡散しているが、細菌の殺菌に優れたUV・LED革新技術である『バイオレッズ(violeds)』とその製品に対して顧客からの問い合わせが前月比で5倍以上増加している」と述べ、深紫外線LEDの特長を次のように語る。

「紫外線殺菌に関する手引書である『Ultraviolet Germicidal Irradiation Handbook』によると、短波長の紫外線(UV-C)に1分間さらされるとウイルスは90%上が殺菌されることが分かっている。また、ソウルバイオシスのUV-LEDバイオレッズ殺菌技術を使った空気清浄製品を中国の試験機関が試験した結果、空気中のウイルスが97%減少したという報告もある。
最近の韓国の高麗大学で行われた実験では、UV-LEDバイオレッズを3㎝の距離で30秒照射することにより99・9%の新型コロナウイルスを殺菌できたという報告もある。

問い合わせが増加している背景にはソウルバイオシスの生産能力増強によりコスト競争力が向上したのに加え、一般的なLEDと同等となる5万時間以上の寿命向上によるものと、新型コロナウイルスの拡散の影響に加え、深紫外線技術は、国際宇宙ステーションを無菌状態に保ち、宇宙飛行士の健康を守るために使用されているなどの実績も評価され、中国の完成車メーカーと車内殺菌のための深紫外線技術の応用検討が現在活発に進められており、これ以外にも多様な深紫外線製品関連プロジェクトの引き合いが急速に増えている。

◇活用される殺菌効果

欧米ではオフィスのベース照明の一部にこの深紫外線を搭載し、環境浄化を試みている例があるが、日本人の多くは主照明から紫外線が出ることに抵抗がある。日本の照明器具メーカーには採用された事例は今のところないが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大で流れが変るかもしれない」と日本の照明器具メーカーでも深紫外線を使った照明器具の開発による需要の喚起に期待する。

他にもアメリカの航空機製造大手のボーイング社ではB-787ドリームライナーのキャビンラバトリーで、乗客が使用しているときは通常のLED照明で、乗客が退出すると紫外線LEDによりおよそ3秒で99.99%の細菌を死滅させることができるというLED殺菌灯を設置している。世界中を不特定多数の乗客を乗せて航行する航空機にとっては非常に意味のある設備だ。今後、列車やバスなどトイレを備えた公共交通機関でも採用が期待される。
医療の現場でも、一部の皮膚病では、特定波長の紫外線を照射することで治癒効果が認められている。従来は紫外線水銀ランプが用いられていたが小型・波長選択性・長寿命・低消費電力・水銀フリーといった特徴を有する深紫外線LEDは従来よりも、はるかに小型で安全な機器の開発ができると期待されている。

また深紫外線LEDは治療中の人工透析排液などの光学測定にあたって「小型・単一波長・任意の波長選択制」という特長から、同様に、血液分析など医療分野における他の分析用途への期待も広がっている。

そして、病院内では、感染症防止のため、待合室・病室・診察室・手術室などあらゆる空間を清潔に保つために従来の照明器具に殺菌機能を付加した小型で水銀フリーの深紫外線LEDを組み込んだ今までにない照明器具の開発は、より清潔な院内環境の実現に大きく貢献できる可能性は非常に高いものと思われる。
新型コロナウイルスの感染拡大の中、LEDの大きな特長の一つである照明以外のLED用途としての深紫外線の殺菌効果について注目したが、殺菌機能を持った照明器具の開発は急務だろう。

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