資源エネルギー庁 2018年度エネルギー需給実績

最終エネルギー消費 1万3124PJ
前年度比 2.7%減 1次エネルギー国内需給 1万9728PJ 前年度比 1.8%減

経済産業省資源エネルギー庁はこのほど、各種エネルギー関係統計等に基づいて2018年度総合エネルギー統計確報を作成し、エネルギー需給実績として取りまとめた。それによると、最終エネルギー消費は前年度比2・7%減、1次エネルギー国内供給は同1・8%減、エネルギー起源CO2排出量は同4・6%減となった。(一部抜粋)

最終エネルギー消費

平成30(2018)年度の最終エネルギー消費は、省エネルギーの進展と暖冬によるエネルギー消費の減少により、前年度比2.7%減の1万3124PJ(原油換算3億3900万●kl)となった。

部門別では、すべての部門で前年度比減となり企業.事業所他部門が前年度比2.1%減(寄与度▲1.3%)、家庭部門が同7.8%減(寄与度▲1.2%)、運輸部門が同1.2%減(寄与度▲0.3%)となった。平成23(2011)年3月の東日本大震災の影響が本格化する前の平成22(2010)年度と比較すると10.8%減となった。部門別では、企業.事業所他部門が10.2%減、家庭部門が15.5%減、運輸部門が9.5%減となった。

エネルギー源別では、再生可能エネルギーが前年度比5.4%増、熱が同2.6%増となったが、石油が同4.1%減、都市ガスが同3.3%減、電力が同2.0%減、石炭.石炭製品が同1.9%減、天然ガスが同0.8%減となった。

実質GDPが同0.3%増加した一方で、最終エネルギー消費は同2.7%減少し、実質GDPあたり最終エネルギー消費は同3.0%低下し、16年連続で改善した。

 ①部門別最終エネルギー消費の動向

平成30年度の最終エネルギー消費を部門別にみると、企業.事業所他部門は前年度比2.1%減の8225PJ(原油換算2億1200万kl)となった。このうち製造業は同1.5%減、業務他は同3.4%減となった。

気温の影響を受けやすい家庭部門は、暖冬の影響で給湯.暖房需要が減少したこと等から、前年度比7.8%減の1833PJ(原油換算4700万kl)となった。

運輸部門は前年度比1.2%減の3066PJ(原油換算7900万kl)となった。輸送量は増加したものの、旅客部門は継続的な燃費改善により同1.3%減、貨物部門は自家用貨物自動車でのガソリン消費の減少が大きく寄与したこと等から、同1.0%減となった。

②エネルギー源別最終エネルギー消費の動向

エネルギー源別にみると、約5割を占める石油は、企業.事業所他部門、家庭部門のエネルギー源が石油から電力、都市ガスへ転換していること、運輸部門で燃費改善が進んでいることなどから、近年減少傾向にある。平成30年度は前年度比4.1%減の6232PJとなり、2年ぶりに減少した。

都市ガスは、平成2(1990)年度以降増加傾向を示したが、平成19(2007)年度にピークとなり、以降は横ばい若しくは微減傾向となっている。2018年度は民生部門(家庭部門、業務他部門)を中心に減少し、前年度比3.3%減の1065PJとなった。

電力消費は暖冬にともなう民生部門の暖房.給湯需要減少があり、前年度比2.0%減の3405PJとなった。最終エネルギー消費に占める電力の割合(電化率)は、産業構造の変化(素材系から加工組立型へのシフト)や民生部門でのOA.IT化や家電機器の増加により、1990年度の20.3%から2018年度には25.9%まで上昇した。

石炭(石炭製品を含む)は、旧産業部門(主に鉄鋼)で減少し、前年度比1.9%減の1340PJとなった。最終消費において、石油、電力に次ぐ第3のエネルギーとなっている。

エネルギー転換

 □電力

 ①電力需要

平成30年度の電力需要は、企業.事業所他部門で機械工業の生産は伸びたものの、省エネルギーの進展に加え、家庭部門での暖冬による暖房.給湯需要の減少等により、最終消費は前年度比2.0%減となり、エネルギー転換部門も含めた電力需要全体では同1.6%減となった。平成25(2013)年度と比較すると、全体の電力消費は3.6%減、企業.事業所他部門は3.0%減、家庭部門は8.1%減となっている。

 ②電源構成

平成30年度の発電電力量は前年度比0.8%減の1兆512億kWhとなった。電源構成をみると、原子力は2018年3.5月に大飯原子力発電所3.4号機が、同年4.6月に玄海原子力発電所3.4号機が運転再開し同97.3%増、風力は同15.3%増、太陽光は同13.8%増と大きく増加した。電源構成比は、化石燃料全体では77.0%となり、再生可能エネルギー(水力を除く)全体では9.2%、これに原子力と水力を加えたゼロエミッション電源全体では23.0%となった。

平成25(2013)年度と比較すると、発電電力量は全体では3.1%減となった。太陽光が387%増、原子力発電が598%増となる一方、石油等は53.0%減、天然ガスは9.2%減となっている。

 ③発電用燃料(事業用発電)

平成30年度の事業用発電電力量は、前年度比2.5%減の9065億kWhとなった。事業用発電の燃料投入量の合計は、同2.6%減の7698PJとなった。燃料投入別にみると、原子力は同97.0%増、未活用エネルギーは同15.5%増、再生可能エネルギー(水力を除く)は同13.1%増と大きく増加した。一方で、石油は同30.4%減、石炭は同6.5%減、天然ガスは同5.8%減となっている。都市ガスは同0.3%の微増となった。

④発電用燃料(自家用発電)

平成30(2018)年度の自家用発電の発電量は、前年度比7.1%増の583億kWhとなった。自家用発電の燃料投入量の合計は、同8.3%増の1411PJとなった。燃料投入別にみると、石油は同6.5%減、未活用エネルギーは同5.6%減となった一方で、石炭は同25.0%増、再生可能エネルギー(水力を除く)は同11.8%増と大きく増加した。

 ⑤電力化率

平成30(2018)年度の電力最終消費は前年度比2.0%減少し、最終エネルギー消費全体が同2.7%減少したことで、消費側電力化率(最終エネルギー消費計に占める電力の比率)は前年度差0.2%ポイント増となり、3年連続での増加となった。1次エネルギー国内供給のうち、発電用に消費されたエネルギーの比率である供給側電力化率は、同0.4%ポイント増となった。

1次エネルギー

国内供給

エネルギー転換部門を含めた我が国全体のエネルギー需要を表す1次エネルギー国内供給は、平成30(2018)年度は省エネルギーの進展や気温などの影響により、前年度比1.8%減の1万9728PJ(原油換算5億900万kl)となった。

エネルギー源別では、石油は発電用途の減少や自動車の燃費改善などの影響により、同5.4%減と6年連続で減少した。石炭は同1.9%減となった。天然ガス.都市ガスは原子力発電の再稼働及び再生可能エネルギーの導入進展などにより、同4.0%減となった。原子力は平成30(2018)年3.5月に大飯原子力発電所3.4号機が、同年4.6月に玄海原子力発電所3.4号機が再稼働したことで、同97.0%増と4年連続で増加した。水力は渇水の影響から2018年度は同3.4%減少した。再生可能エネルギー(水力を除く)は太陽光を中心に同10.0%増となった。未活用エネルギーは同0.6%減となった。

東日本大震災の影響が本格的に出る前の平成22(2010)年度と比較すると、1次エネルギー国内供給は10.3%減となった。エネルギー源別では原子力が 77.5%減、石油が16.3%減、石炭が1.0%減となった一方、天然ガス.都市ガスが12.9%増となった。

2018年度は実質 GDPが前年度比0.3%増加する中で、エネルギー消費が同1.8%減となったことで、実質 GDPあたりの1次エネルギー国内供給は同2.2%減と7年連続で減少した。1人あたり1次エネルギー国内供給は同1.6%減となった。

 エネルギー源別1次エネルギー国内供給動向

 ①石油

平成30(2018)年度の石油(原油+石油製品)の国内供給量は、前年度比5.4%減少し、7415PJ(原油換算1億9100万kl)となった。発電用の減少、産業用での省エネルギー.燃料転換、自動車の燃費改善、貨物輸送の効率改善等による燃料用需要の減少の影響により、国内需要は同5.3%減と6年連続で減少した。

 ②石炭

平成30(2018)年度の石炭(石炭+石炭製品)の国内供給は、前年度比1.9%減の4947PJ(原油換算1億2800万kl)となった。石炭需要全体の6割を占める発電用の需要は同4.2%減、自家蒸気用の需要は同2.7%減、企業.事業所他部門の需要は同1.9%減となった。

 ③天然ガス

平成30(2018)年度の天然ガスの国内供給は前年度比3.9%減と2年連続で減少し、4510PJ(原油換算1億1600万kl)となった。発電用が原子力発電の再稼働や再生可能エネルギーの導入進展などにより同5.7%減、都市ガス用は省エネルギー機器の普及や気温影響等から同2.3%減となった。

 ④原子力

原子力の国内供給は、東日本大震災以降、定期点検入りした原子力発電所がほとんど再稼働せず、とくに平成25(2013)年10月から平成27(2015)年7月までは稼働ゼロとなっていた。平成30(2018)年3.5月に大飯原子力発電所3.4号機が、4.6月に玄海原子力発電所3.4号機が再稼働したことから、平成30(2018)年度は前年度比97.0%増の553PJ(原油換算1400万kl)となった。1次エネルギー国内供給に占める割合は、平成22(2010)年度の11.2%から2.8%にまで低下している。

 ⑤水力

平成30(2018)年度の水力の国内供給は、渇水の影響により3.4%減の690PJ(原油換算1800万kl)に減少した。発電設備容量が同1.0%減となる一方で、発電電力量が同3.0%減となったことにより、設備利用率は前年度より0.4ポイント減の21.5%となった。

 ⑥再生可能(水力を除く).未活用エネルギー

平成30(2018)年度の再生可能(水力を除く).未活用エネルギーの国内供給は、前年度比5.9%増の1613PJ(原油換算4200万kl)となり、7年連続で増加した。再生可能エネルギー(水力を除く)は発電用を中心に増加し、同10.0%増の1033PJとなった。とくに、太陽光発電は平成25(2013)年度から2018年度にかけて4.8倍に増加した。また、未活用エネルギーは前年度比0.6%減の580PJとなった。

エネルギー起源 CO2排出量

平成30(2018)年度のエネルギー起源CO2排出量は、エネルギー消費が減少し、再生可能エネルギーの普及や原子力発電の再稼働が進んだことなどで、前年度比4.6%減の10億5900万トンとなり、5年連続で減少した。平成25(2013)年度と比較すると14.2%の減少となった。

部門別では、家庭部門(前年度比11.1%減)、企業.事業所他部門(同4.1%減)、運輸部門(同1.4%減)、エネルギー転換部門(同1.6%減)のすべての部門が減少した。

2018年度のエネルギー起源CO2排出量増減を「GDP要因」「エネルギー原単位要因」「炭素集約度要因」に分解すると、GDP要因が300万トンの増加寄与となったが、炭素集約度要因が3100万トン、エネルギー原単位要因が2400万トン減少に寄与した。

電材流通新聞2020年4月23日号掲載