【トップインタビュー】西日本電線工業協同組合 尾﨑勝理事長

中小の連携、素地形成へ 次世代人材と共に議論

西日本電線工業協同組合 尾﨑勝理事長

西日本電線工業協同組合(西協組)の新理事長に就任した尾﨑勝氏(伸興電線社長)は、新型コロナや貿易摩擦など電線業界を取り巻く政治経済環境や社会環境が大きく変質していくなか、「次世代の意見も取り入れた議論を進めることが重要だ。また、新しいリスクも含めたBCPにおける議論を複層的な立場から進める必要もある。一社で様々なリスクに対応するのではなく、中小企業間が必要に応じて連携できるような素地を作るため組合の存在意義を模索していきたい」と語った。

―新理事長としての抱負から伺いたい。

「1949(昭和24)年10月に、戦後体制の中で中小企業のビジネスを補助する母体を目指して西協組は設立された。当初は、お互いを支え合いながら業界として伸びていく互助的な役割を持ち合わせており、現在では休止されている材料の共同購入や手形の割引等も行われていた。しかし、70年が経ち電線業界や各企業の様相など時代は大きく変わった。それに伴い、組合の果たすべき役割も変わらなければならない。

近年では互助的な役割を保ちながらも、それぞれが競争相手という側面がコンプライアンス問題等で取り上げられることで、役割の軌道修正を求められる部分もある。谷口直純前理事長(太陽ケーブルテック社長)の頃から『時代に適応した組合の存在意義』は議論されてきた。引き続き、組合員の意見をお聞きしながら、現在の組合の在り方を問い直していくとともに、工業会とは異なる中小企業からの視点で、組合並びに中小電線メーカーの存在価値を高めていきたい。また、工業会とも交流を密にして、中小企業の声をきちんと届けつつ、組合企業の取組みに対しての支援をお願いする機会を増やしていく。例えば、西協組役員会に工業会大阪支部から出席いただいて、お互いの伝達事項や意見の交流、また組合会員事業所で工業会との意見懇談会なども提案してみたい」

変化へ、若い世代が軸 西、東の交流を活発化

 ―新型コロナの影響など変化の激しい時代への対応策は?

「新型コロナウイルスやかつてない少子高齢化、5Gなど従来の社会の在り方が大きく変わる時代が到来しつつある。デジタル社会に慣れ親しんだ若い世代が中心となって、新たな対応の方向性を議論すればいい。リモートワークの例として、試験的にWebを介して組合員のそれぞれの事業所を繋ぐような形式の理事会も今の時代にはあっても良いだろう。組合員各社でも今後世代交代が進むだろうし、その若手の感性が間違いなく次世代を担うことになる。40年弱続いているJPC(西協組若手経営者の会)も同様で、同じ立場のNLA(東協組若手経営者の会)との交流も活発化させたい。

また、新しい多くのリスクを踏まえて、BCP対応など新しい部会を立ち上げる必要がある。BCPと一口に言っても、生産態勢のリスク分散だけを指すわけではない。政治経済及び社会情勢や、自然災害から業界内の問題に至るまで、多様な経営リスクが存在するし、対応する側も経営・総務・製造・技術など、複層的に考える必要がある。例えば、国内が市場縮小する環境下、中小企業は大手・系列の合従連衡や共同配送や事業承継の問題などに対応しなければならない。個々の企業で対応する場面もあるが、中小電線メーカー全体の業績・地位向上を見据えて、時には連携する必要も出てくるだろう。海外の廉価品流入にしても、自社のみで全て対応できると考える中小企業は多くない。西協組として企業間連携の誘導・強要はできないが、様々なリスクの可能性や対応を示唆し、立場の近い企業同士で製造や配送など連携しやすい環境を整えることはできるだろう。副理事長も三人体制に増員するので、事業委員会で新分科会への担当をお願いしつつ、諸問題にしっかり対応できるスキームを確立させる」

 ―確かに、今の時代に中小企業一社が個々で立ち向かうのは難しい。

「我々の業界にも取引適正化のさらなる浸透や業界の地位向上など複数の課題が存在し、コロナや働き方改革等の問題に即して新しい変化を求められる部分もある。働き方改革ひとつとっても、現場のリモートワーク化の問題から特定技能外国人労働者確保に向けた指定業種申請検討など課題は多い。ただ、本質的な議論をするために、現状抱えている問題をすべて洗い出さねばならない。組合に足を運んでいただいた事業者が、中小企業の抱える問題を組合内で共有することで業界全体の課題としての認識もできるし、そこで生じた意見によって課題を抱えた事業者が解決への一歩を踏み出せるのなら、それも組合の存在意義の一つだろう。この二年は、まず組合内で忖度なしに様々な課題や問題点を提示してもらって、出てきた各々の課題に対して様々な施策を打ち出していきたい。試行錯誤も出てくるだろうが、トライを繰り返しながら、これからの時代に適応した組合の様々な存在意義を模索していきたい」

電線新聞 4205号掲載