換気扇特集

好調な市場続く

ここ数年、堅調に推移している換気扇市場は、今年度上期においても数量、金額ともに前年同期を超え、極めて安定した状態を保っている。その好調の原因やメーカー各社の商品提案の切り口などについて探ってみた。

日本電機工業会が発表した資料によると、2019年度上半期の換気扇国内出荷実績は、数量ベースで前年同期比102.1%、金額ベースでは103.2%(同)と、ともに前年同期からの伸長をみせた。先ごろ発表された10月の出荷実績では、数量で96.9%、金額で96.7%と前年同月を割り込んだが、4月~10月の累計では、数量で101.3%、金額で102.2%と、相変わらず前年同期を上回る数字を残している。

換気扇市場はここ数年、堅調に推移しており、10月に始まった消費税増税の影響による山谷は予想されるものの、今年度も順調な市場となりそうだ。
換気扇市場と密接に関連する新設住宅着工件数をみると、消費税増税前後の山谷などを含め、通期で均してみると微減で落ち着くという見方が一般的だ。
こうした環境下、換気扇市場が安定しているのは、非住宅分野での伸長も見逃せない。民間需要が活発で、物流業などの設備投資により、倉庫などへの高単価機種の納入が好調だという。
また、住宅分野においても、人口減や高齢化などにより、新築が期待できないなかで、各メーカーでは、リニューアルや新たなニーズに的確に対応し、堅実な市場開拓を行っている。
具体的にみると、省エネ、リニューアル、空気質の向上、高付加価値化など、様々な切り口で市場のニーズをいち早く取り入れ、積極的な製品開発と提案を行っている。とくに、「空気質」と「健康」、さらにZEHやスマートウェルネス住宅などをキーワードにした製品開発が目立つ。

パナソニックエコシステムズでは、室内に存在する空気そのものの向上を実現し、IAQ(室内空気質)の価値提供が生活価値の向上にもつながる提案を強化している。“いい空気”が人の生活における“コト”の改善に貢献できることを体感も含めて訴求展開している(高橋正人IAQビジネスユニット営業部営業企画課係長)。
同社では2017年6月に、愛知県春日井市の換気扇工場内に実験型住宅「IAQ Labo」をオープンした。この住宅は、体感型の住宅として換気方式よる空気価値の違い、温湿度・気流まで踏み込んだ空間を体感でき、各要素を見える化した。多くの住宅関連業者や流通業者などが来場し、換気方式の違いによる体感としての室内空気の違いの訴求、省エネ型住宅の換気設備として大きく市場が拡大している熱交換換気のメリットも体感訴求している。
商品としては、熱交換換気などの給気フード側から浸入する虫や粗塵を旋回流により分離し、自然風でフード外へ排出するサイクロン給気フードの接続口径150㎜タイプを10月に発売したほか、大きく拡大している住宅用熱交換気システムIAQ制御搭載モデルである「住宅用熱交換気システム・カセット形(FY-14YBD2SCLほか4機種)、大空間の除菌・脱臭機器として市場拡大している「次亜塩素酸空間除菌脱臭機“ジアイーノ”」の新モデルを発売。快適空気環境実現に向け、換気による給気・排気の空気の流れに加え、室内循環形の機器による空気浄化事業も展開する。

三菱電機では「24時間換気提案」に加え、「室内環境改善商品」による用途別提案の取り組みを強化し、新設・既設の両市場の換気啓蒙活動に取り組み、換気扇全需のさらなる拡大に向けた啓発活動に引き続き注力する(赤木秀亘同社中津川製作所電材営業課長)。
同社では、換気・送風技術による更なる省エネ・快適性向上などの新たな付加価値提案や新規需要創造が不可欠と考えており、新設・リニューアルを問わず、「より省エネ」かつ「高い快適性」を生み出す商品開発・提案に注力する。さらにこうした活動を通じて、換気による「空調負荷低減効果」や「空気質改善効果」をユーザーに伝えることが重要な役割のひとつであると考えている。
具体的には、「ロスナイセントラル換気システム〈高効率シリーズ〉」の新商品を6月から発売している。新商品は従来以上に室内の涼しさや暖かさを再利用(熱回収)しながら換気し、冷暖房機器の負荷低減(省エネ性)や部屋間の温度ムラ軽減(快適性)に貢献する。
同社ではほかにも、既設のダクト用換気扇からのリニューアル提案が可能なバス乾燥・暖房・換気システム〈コンパクトタイプ〉を10月から発売している。
新商品は、従来品から埋込寸法を約30%小型化、かつ200Vパワフル暖房を実現した。リモコン配線工事が不要なワイヤレスリモコンを採用、また電動ルーバーを搭載し、暖めたいところに素早く温風を送風できる商品として注目されている。

東芝キヤリアでは、省エネ、空気質の向上をキーワードに新商品の提案により換気扇需要の拡大に努める(小松明美同社換気企画担当グループ長)。
商品としては、ダクト用換気扇「ツインエアロファンシリーズ、羽根径10㎝・14㎝サイズ」の本体鋼板製タイプのラインアップを拡充。昨今の節電意識の高まりによる省エネや換気扇の基本性能である換気風量アップと快適さを損なわない運転音との両立、性能を維持するためのメンテナンス性をさらに向上させた商品として注目されている。
そのほか、省エネ性や衣類乾燥の仕上がり品質や施工性に優れた浴室換気乾燥機「バスドライ」計6機種(DCモータータイプ2機種)、戸建て住宅の24時間換気の主流である「ダクトレスシステム」において、室内へ侵入するPM2.5を高い性能で捕集し、24時間換気運転時の給気をきれいにするパイプ用ファン「PM2.5対応給気ファン」1機種、建物のデザインにマッチするスクエア形状で施工性を向上させた外壁部材「スクエアパイプフード」計10機種を発売している。
同社では、多様化する換気のニーズに応え、より快適で健康的な空気環境を創造するための商品とサービスを提供する。
変わりつつあるユーザーニーズに対応しながら、様々な切り口で活路を見出している換気扇市場。新築市場では大きな伸長が見込めないなか、リニューアルも含め、「空気質の向上」などをテーマとした新たな商品提案を行う各メーカーの今後に注目したい。