トップインタビュー 西日本電線 鈴木貞二社長

20年度目標 『減収増益』アルミ分岐ケーブル拡大

西日本電線 鈴木貞二社長

今年創業70周年を迎えた西日本電線の鈴木貞二代表取締役社長は「20年度は減収増益と高いハードルの計画を立てた。アルミ分岐ケーブルや宮崎大学と共同で開発を進めてきた高圧地中線の劣化診断システムなど新製品やサービス分野の拡大で目標を必達したい。5G案件とトンネルのLED化は前期からの好調が継続するだろう。また、安全を軸に種々の改革を通じ、社内のリーダーシップ教育も進めている。また、モノ作りを究めるため、次期中期で理想の工場実現へ向けてグランドデザインを描いていく」と語った。

 ―前期の実績と今期の計画を伺いたい。

「19年度通期業績は、総売上高が約255億円で営業利益が約3億5千万円。売上の内訳は、ケーブル事業部が約132億円、住宅用屋内配線ユニット(RC)等を扱う配線システム事業部が約77億円、分岐ケーブル・電力向け機器・収縮チューブを扱うモジュール機器事業部が約27億円で、光ケーブルやコネクタ付コード等を扱う光機器システム事業部が約19億円。特に、上期はNTTの市内電話工事大幅削減等によるCCP(市内線路用メタルケーブル)の落ち込みや5G移行の遅れ等で苦戦したが、下期で5G投資の立ち上がりによって持ち直すことができた。RCは18年度から堅調で、トンネル向けのLED化に纏わる分岐ケーブルは生産が追いつかない程好調に推移している」

ビル用幹線のAl化で積極的に利益確保へ

「20年度は総売上高で約230億円、営業利益で約3億6千万円という減収増益の計画を立てた。売上の内訳は、ケーブル事業部が約110億円、配線システム事業部が約70億円、モジュール機器事業部が約27億円、光機器システム事業部が約21億円。5G案件とトンネルのLED化は前期からの好調が継続すると見ている。また、インフラ系の案件も動いており、第2次補正予算では情報通信環境整備で光ファイバ関連の予算が500億円付き、関連した需要も期待できる。一方で、新型コロナの影響を受け、住宅展示場での契約ができない一般住宅向けケーブルは、想定以上の売上減の可能性をはらむ」

―新製品への注力状況は?

「現在、大きなビル内では、幹線ケーブルのアルミ化が進んでいる。当社も大手ゼネコンと協力して納入実績を作ったうえ、住宅メーカーからもアルミケーブル検討の話が来ている。当社の場合は幹線・分岐ともにアルミケーブルを採用しており、電源盤の銅端子部分には銅・アルミのバイメタルを用いて接続する方式を利用している。また、開発した高圧地中ケーブルの劣化診断システム(PDL)は、顧客とプロジェクトを組んで、新事業として立ち上げが進んでおり、既に数社から引き合いも頂いている。こうした新製品・サービス分野で積極的に利益確保を狙うと共に、RCは中堅住宅メーカーにも拡販を進めていく」

 ―一昨年にグループにおける品質管理の不適切事案が発生したが、その後の御社の取組みは?

「原因分析や再発防止の取組みに加え、JIS・ISO規格認証の一時停止解除と客先との品質確認も済んだということで、昨年4月に当社として事案の終結宣言をHP上にて発表した。社内においても風化させないように、社内報や朝礼で品質やコンプライアンス維持について逐次言及している。再発防止の取組みとしては、グループ内で検査データを人の手をできるだけ介さずに自動レポート化を行っている。また、品質保証部も社長直轄としており、第三者的位置付けでチェックを行う。生産条件変更についても、技術会議で材料や条件変更を申告させて審議を行うことで透明性を確保している。

一方で、終結宣言後も顧客に適宜フォローアップに来て頂いて、再発防止の取組み維持をご確認及びご評価頂いている。顧客からも『品質に問題がないことは確かなので、今後は無駄を省くなど双方にメリットのある方法を両社で模索していこう』と弊社への配慮も寄せて頂いており、以前よりも顧客との距離が縮まった感がある」

―事案の他に、御社及びグループ内の取組みはいかがか?

「働き方改革に伴う『健康経営』をグループ全体で進めている。今年は『エイジフレンドリー(高齢労働者の安全・健康確保)』という全国安全週間スローガンも出ているが、新しい体操や健康診断に加え体力測定も実施を計画している。また、昨年9月より海外プラントでも浸透している『IIF(無事故・無災害)』にも取組み、3K(関心・声掛け・感謝)に努めることで、安全を切り口にしてコミュニケーションとリーダーシップを醸成しようと試みている。IIFは、日本初の導入事例としてフジクラと弊社が率先して採用を推奨したことから、弊社がモデルケースとしてグループ内でも認知され始めている」

モノ作りで競争力向上次期中計も策定予定

 ―中長期の企業戦略を伺いたい。

「国内における競争が厳しい電線業界だが、だからこそモノ作りを究めて競争力を高めていきたい。そのために、コスト低減や設備・レイアウト変更、IoT・AIによる省力化等でどのような工場を目指してゆくのか、具体的なグランドデザインを描くべく準備を進めている。同時に20中期が間もなく終わるので、それに合わせた弊社の次期中期計画も策定予定だ。特に現場では、ベースとなる基幹ソフトウェアを自分達で使いやすいようにカスタマイズしたり、設備のデジタル化も可能な限り共有して効率化したい」

―本年度の最重要課題は何か?

「コロナ感染拡大を防ぐため、リモートワーク推奨や社内の三密回避は緩まぬように継続する。また、今期計画は減収増益という高ハードルなので、従業員一体となって必達したい。高ハードルだからこそ、やり遂げた際の達成感は従業員にも大きな意識改革をもたらしてくれるだろう。従業員には高い目標でも諦めずに、強い意志のもと前を向いて仕事をしてほしい。そして、共に新しい西電を作り上げたい」

電線新聞 4207号掲載