淀屋橋駅は開業当初の写真を見ると、アーチ天井の頭頂部にV型のカバー付きのライン照明が取り付られ、シャンデリアではなかった。
その後、昭和27年に蛍光灯化されているが、その当時と思われる写真が大光電機のカタログに掲載されている。
V型の天井に、蛍光灯がライン上に並んでいるだけで、デザインを施したというほどのものではなかったようだ。
淀屋橋駅の蛍光灯シャンデリアは一番新しい。といっても昭和57年に私と同僚の2人で担当したので、今年で既に37年になる。
当時、大阪市交通局から、淀屋橋駅と天王寺駅のシャンデリアを提案するように依頼があった。
要望は梅田、心斎橋と同様に、直管蛍光灯を使用する事だった。
直管蛍光灯を用いながら全くチープ感のないモダンな照明器具として先輩が考案された梅田駅、心斎橋駅を超えるデザインはなかなかできなかったというのが正直な気持ちだ。その頃はちょうどテクノロジー、科学ブームで、「鉄腕アトム」や「サンダーバード」を観て育った私たちはやがて来る21世紀に宇宙にはばたくロケットイメージに行きついていた。
日本では縁起のいい数字とされている七・五・三をデザインにも取り入れた。蛍光灯7灯を5組の灯具に分け、下面に3灯の非常灯を設けた。
数々のスケッチの中からバランスの良い灯具の角度など、模型を作って確認し提案した。
灯具の上下をステンレス鏡面仕上げにし、キラリと輝くイメージ。それを支える支柱はドッシリとしたステンレスヘアーライン仕上げ。フランジやパイプはその存在感を消すために天井と同色とした。
実際の製作設計に入る頃から、いくつかの問題点が出てきた。最大の問題は灯具上下のステンレス鏡面仕上げ部分の材料が硬くヘラ押し加工で厚みを薄くすれば形状は保てるがきれいな鏡面にならない、希望のアールが出ないという本社工場側の申し出だ。
デザイン側にとっても大きな問題で、このアールは譲れない。しかし、最後に本社工場のヘラ職人さんの「任せておけ」の一言があり、何度も挑戦してデザイン通りの形状を生み出していただけた。
今も淀屋橋駅でその独創的なフォルムは健在だが、今回のリニューアルプランでどうなるか気になるところだ。
(中尾晋也)