既存の砂防ダムを有効活用
(株)関電工は、建設を進めていた上かみ結けっ東とう水力発電所(新潟県中魚沼郡津南町、990 kW)の運転を5月11 日に開始した(写真1)。
同社が手がける水力発電事業は、葛野川マイクロ水力発電所(160 kW)の事例があるが、1000 kWクラスの水力発電所と
なると今回が初めてとなる。
再生可能エネルギーに力を入れている同社の総発電量は70.940 MWとなる。
●上結東水力発電所の概要
信濃川水系中津川にある上結東砂防堰堤は、土砂崩れや土石流を防ぐために昭和36 年に建造された砂防ダムである。
同社はダムの33 mの堤高に着目し、ダムの脇に発電用の立坑(40 m、写真2)を掘削し、発電所を新設(写真3)。
そして、流れ込み式水力発電所(有効落差約21 m)としてダムを有効活用した。同発電所の特徴は以下の2点である。
① 排砂立坑の設置
水量が増し濁流となると、発電所に砂や土砂が入りやすくなり、故障の原因となる。そこで、電力中央研究所で水利模型実験を実施し、それをもとに土砂対策の排砂立坑を設置した。
② 環境への配慮
砂防ダム建設時の仮排水路を発電所放水路として再利用したことで、減水区間が120 mと短く、河川環境への影響が少ない。
③ 立軸チューブラ水車の採用
国内では実績の少ない立軸チューブラ水車(写真4)を採用し、発電所開発面積を最小限にした。
●発電量と売電
一般家庭の約1 200 世帯分の年間消費電力量に相当する約6500 MWh/年の電力を発電。
二酸化炭素の削減量は年間約3000 トンとなる予定。
また、FIT(固定価格買取制度)により、東北電力に20 年間にわたって29 円/kWhで売電を行い、1.8 億円の売電収入を見込んでいる。