LED照明特集

東日本大震災以降、各分野で省エネ化が進むなか照明分野ではLED化が進展した。住宅、店舗、オフィスビルに加えて工場・倉庫等の高天井照明市場に向けてメーカー各社が特長ある製品を投入し販売を競っている。また訪日外国人旅行者の観光対応や町おこしの観点から夜の観光への関心も高まり照明・音響・映像を一体化して演出するビジネスも盛んだ。2020年に、半導体照明をフロー100%、ストック50%。2030年にストック100%という流れのなかで、いまの照明業界の動きをまとめた。

イベント会場

 東日本大震災以降、電力不足への懸念から各分野で省エネ化が進んだが、特に照明分野ではLED化が急速に進展した。
大震災から7年が過ぎ、身の周りのあかりを改めて見直すと、従来照明からLED照明への切り替えが、各分野で大きく進展していることに気づく。
住宅ではLED電球から始まりLEDシーリングライト、LEDダウンライト、間接照明が普及。オフィスビルなどでは直管蛍光灯から直管型LEDランプへ、そして、LED一体型照明器具への交換が進んだ。店舗などの商業施設でもまた、ハロゲンランプや蛍光灯照明からLEDダウンライト、LED間接照明の取換えが進展した。
さらに、大空間を有する工場や倉庫、スポーツ施設などでもLED化への歩みが着実に進んでいるが、この分野では高天井照明を従来の水銀灯器具などからLED高天井用照明器具に換えるメリットは大きい。

工場地帯

たとえば、施工現場では人手不足が問題となるなか、高所におけるランプ交換作業には、手間とコストが掛かるが、その作業を大幅に削減することができる。
また、従来の水銀ランプなどは再点灯に時間がかかるので、一日中、点灯した状態にすることが多かったが、LEDは瞬時に100%の点灯が可能なため、使用したい時にすぐ全点灯し、使わない時はこまめに消灯ができる。
具体的には、休憩時間には消灯し、休憩終了後には点灯し、すぐに作業が開始できる。そのため、休憩時間の電気代の削減にもつながる。さらに、従来の光源よりも明るく作業効率の向上もはかれる。

商業施設

商業施設のライトアップ

LED高天井用照明は、大手電機メーカーをはじめ照明専業メーカーも販売を競う市場となっているが、こうしたなか、演色性の優れた器具を開発しラインナップしているのがNECライティングだ。
太陽光の下の色の見え方に近い、高演色LEDチップを採用(耐塩害・防雨型を除く)し、その演色性はRa82から83という。メタルハライドランプと同等の高演色性で、製品本来の色味を確認できるのが強みである。
演色性が高いとより自然光に近い色味で空間を照らすことから、色を重視する塗装工場やアパレルなどの検品倉庫等に最適な高天井用照明器具とアピールしている。

体育館

LED高天井用照明は、省エネ、省メンテナンスなど優れた特長から、体育館等のスポーツ施設をはじめ工場・倉庫などを中心に普及が進んだが、これからは、オイル、塩、揺れなど厳しい使用条件に囲まれる工場等へのさらなる広がりが期待される。
パナソニックは、粉塵、塩、高温、振動、オイルミストなど厳しい環境に適用することが要求される、特殊環境の工場に向けたLED高天井用照明器具の機種を多数ラインアップしている。
そのうち粉塵の多い工場に適応したLED高天井照明器具は、マルチハロゲン灯400形器具に相当、電源内蔵型と電源別置型を用意した。電源別置型は、電源を別置にすることで灯具部分を軽量化し、建物への負荷を軽減できる。また、電源部のメンテナンスも容易になる。灯具質量は、4.6㎏。従来品に比べて約0.5㎏軽量となった。
消費電力は、130Wで、従来よりも約69%削減、また、光源寿命は、6万時間で、従来よりも約5倍増えた。保護等級はIP65。防噴流型・耐塵型構造のため軒下や屋側でも使用が可能だ。
三菱電機照明は、LED高天井用照明器具「GTシリーズ」で、クレーン耐衝撃用、高温用、低温用、重耐塩用、耐油煙用等の機種を揃えた。
同社が、高温かつ油煙の発生する工場に販売提案するのは「GTシリーズ」のなかでも最もタフなモデル。強度確保と防錆のため、器具本体にはステンレスを使用し、カバーには強化ガラスを採用することで、油煙環境に対応できる。保護等級IP65に適合。適用温度は、マイナス10度からプラス60度までだが、段調光で明るさを抑えれば70度までの使用が可能となる。
岩崎電気の「LEDioc CEILING HB 低温対応形」は、使用温度範囲がマイナス40度からプラス35度までと幅広い施設に設置が可能。使用範囲が幅広いため冷凍倉庫の新設工事や倉庫改修時などの常温環境でも使用できる等の利点もある。
東芝ライテックも、保護等級IP65性能の特定環境用LED高天井器具として、耐塵・防噴流形、防塵・防湿・低温対応形、オイルミスト・重耐塩形などをラインアップし、幅広い用途・環境に対応している。

さまざまなタイプの機種が開発されるLED高天井用照明のなかでも、無線調光タイプの利用方法は、多様性に富んでいる。
特長は、制御のための信号線工事が、無線を使用するので不要となり短工期・省施工を実現するなどだが、調光機能を利用した応用事例は多数挙げられる。
体育館等のスポーツ施設では、イベントや災害避難時など用途・状況に応じた調光制御や節電が可能だ。たとえば、昼間の授業やクラブ活動では明るさを抑えて点灯する一方、観客のいる試合では100%点灯にするなど節電対策もできる。
また、学芸会や音楽会などのイベントの際は、会場の前席と後席の明るさを調整したり、舞台進行や内容に合わせて調光することができるなど、演出にも利用可能だ。大きなスポーツ施設では使うコートと使わないコートの照度を分けて調整することで省エネがはかれる。

さらに、昨今多発する地震や大雨などの災害時には、体育館などが避難所となるが、昼間は、日の光を利用して明るさを抑えて点灯し、就寝時には、保安灯として必要な照度で点灯することもできる。
工場、倉庫などではその日の作業に合わせて、必要な場所のみを点灯し、使用しない場所を消灯できる。また、明るさを抑えた調光で省エネを実現することができる。

大規模な空間を持つ施設では、高い位置から全体を照らす照明器具の役割は重要だ。工場、倉庫などでは、作業の効率化、安全性の確保のために欠かせない。
また、スポーツ施設・体育館などでは、まぶしさを抑えつつ競技をスムーズに進行し、選手の素早い動きや全体のダイナミックなプレイをくっきりと浮かび上がらせ観客を楽しませている。
一方、商業施設では、物品の見せ方で買い物客の購買意欲を喚起し、催事やイベントなどで賑わい感を創出することが重要視される。ここでは明るさや省エネ性はもちろん、空間を演出する光が求められている。
この商業施設等の市場に向けて、ミネベアミツミがスマートLED照明器具と呼ぶ「SALIOT」を販売展開している。
「SALIOT」は、スマートフォンやブレットで、配光角・明るさ・色温度・上下左右を簡単にコントロールすることができる。
同社は、機械加工品や電子機器部品の製造・販売を行っているが、スマートフォン用のバックライトに使用する導光板を応用して照明用レンズを開発。そのレンズを使用して、得意とするモーターや電源、無線技術などを組み合わせ「SALIOT」を開発した。
従来、高天井に設置された照明器具の調整は、脚立や調整棒による手作業で行われていた。現場では、高所の作業に時間と労力、そして、高いコストが発生し課題となっていた。
これに対して「SALIOT」はコントローラーで、さまざまな光の照射域・角度を制御できることから、高所作業やレイアウト変更時の負担軽減を実現した。また無線通信規格・ブルートゥース メッシュを採用し、100台まで操作ができるので、大規模空間での利用も可能だ。
同社は、百貨店、ショッピングセンター、アパレル店舗、カーディーラー等のショールームなど、商業施設をはじめ、博物館・美術館、教育施設、イベントスペース、ホテル等を販売先として想定。これから施設の高天井、大型スペースへの導入を進めている。

テーマパークのナイトパレードやプロジェクションマッピングを見るために大勢の人々が集まりそれがニュースとなるほど、照明の演出効果とその集客力は高い。
ウシオライティングは、アミューズメントパークやライトアップイベントなどで、照明と映像、音響による演出を、ワンストップサービスで提供している。
今年4月、多くの観光客が訪れる神戸市のメリケンパークに、新たに噴水広場が完成した。広場の地面には、渦潮をイメージした配置で噴水口が設けられ、20分おきに約3分間、緩急をつけて水が噴き出し、子供連れの家族などに好評だ。
夜になるとこの噴水は、同社の納入したシステムにより、音楽と46台のフルカラーLED照明器具が稼働し演出される。
7月には、姫路市立美術館と好古園(姫路城西御屋敷跡庭園)の2カ所で開催されたライトアップイベント「ぶらり城歩きNight」に協賛。このイベントは姫路城周辺の観光スポットをあかりと映像で演出。姫路の文化にふれながら、観光客と地元住民がいつもと違う夜を楽しむという企画。
このうち美術館では、壁面をフルカラーLED投光器の光で演出し、印象的なシーンを創り出した。また建物構造を生かした幻想的なプロジェクションマッピングも行った。
この他にもZOZOマリンスタジアム、大阪市の鉾流橋ライトアップ、JR姫路駅ビルの外壁演出照明などを全国で展開している。これらの照明と映像、音響による演出は、フルカラーLED照明器具、LED投光器、LEDコントローラー、DMXレコーダー、音響レコーダー、プログラムタイマー、屋外スピーカーなどを組み合わせ実現している。
同社は今後もこうしたシステムを構築し空間演出を行うソリューションビジネスを推進する。

ここ数年、訪日外国人旅行者数が急増するなか、今後は夜の観光消費をいかに伸ばすか、ということが課題であるという。以前から夜の工業地帯を船で巡るツアーが人気だが、夜景は、重要な観光資源の一つといえるだろう。
コイズミ照明は、人にも街にも快適で魅力的な環境を実現する屋外照明器具2機種を発売した。
「andon」は、足元への光を確保しながら、発光面の輝度を抑えることで、周辺環境や遠景を見られるように設計され、一般的な拡散タイプの発光面輝度が約1500cd/㎡なのに対して、同製品は約400cd/㎡と低く抑えられている。
これにより、歩道を行き交う人の顔や樹木のライトアップ、イルミネーションや遠い街の光が浮かび上がることで、夜景が魅力的なものになると説明している。
「Ground Washer」は、光学反射板とレンズの組み合わせで、低い位置から遠く、広く、光を届けることができる。機種はロング配光とワイド配光を揃えた。ロング配光は、長く伸びる光をつくり出し幅の広い歩道を照らす際などに最適。ワイド配光は、横方向に広い光をつくる。器具の間隔を広くとる際に有効だ。
魅力あるナイトスポットとして海辺の夜景は欠かせない。ただ、ここに設置される照明器具は塩害という条件をクリアしなければならない。
大光電機は、インバウンド需要が好調な沖縄に、新ショールーム「ライティングコア沖縄」を新設した。開設の背景には沖縄の観光客数が増加するなか、ホテルの需要が今後もさらに見込まれることが挙げられる。
沖縄は、四方を海に囲まれることから、塩害に強い重耐塩標準仕様のLED屋外用照明シリーズ「ZERO—ゼロ—」を中心にダウンライト、スポットライト等を揃え対応する。
沖縄に限らず日本自体が島国であることから、ホテル、公園、水族館など海に近い施設が多い。ZEROは、その場所でも安心して使える。設計寿命は約10年間、色褪せや錆が出ない。通常、重耐塩仕様は別注であるが同製品は業界で初めて、重耐塩処理を標準仕様した。

ここ数年、身の周りのあらゆるモノがインターネットにつながるという「IoT」(Internet of Things)が登場し、この言葉がメディアに現れない日はないほどだ。
IoTは、モノのインターネットと呼ばれているが、照明器具もつながるモノの一つだ。
今年は各種展示会で、ブース説明員が、スマートスピーカー・AIスピーカーに話しかけて、ネットに接続されている照明器具を、音声操作するというデモンストレーションを何度か見た。
照明器具の操作は、スイッチからリモコン、そしてインターネットに接続されたスマホ・タブレットなどへと移り変わった。また、有線制御から無線制御へと進化する一方、操作自体は人の手が一番だと思っていたが、この音声で簡単に操作する様子を目の当たりにして、これもありかと考えた。
今後、照明器具にカメラや人感センサー、音センサー、ニオイセンサーなどが当たり前のように搭載される日が到来したら、照明と人が一体化するのではないか。操作は手動から自動操作が基本になるかもしれない。
住宅、店舗、オフィス、工場・倉庫の照明はどう変化するのか。進化する照明のあり方をこれからも楽しみながら見守りたい。
2020年に向けて、国や日本照明工業会では、LEDを中心とする半導体照明をフローで100%、ストックで50%にするという目標を掲げている。さらにその先、2030年には、ストックで100%という大きな目標がある。しかし、ストック市場には、まだ使えるからという理由で従来照明器具を手放さないユーザーも多い。
IoT照明など魅力的な新製品が登場して、こうしたユーザーが従来器具をこぞって半導体照明に交換する日が来ることを期待したい。