EV・PHV用充電器 および関連機器特集

電動車両の新たな社会的価値を創出

相次ぐ自然災害によってEVやPHVには高い期待が寄せられるが、普及率や保有率の現状をみると伸び悩みの感が否めない。充電器や充電施設が決定的に不足していることもまた、伸び悩みの要因のひとつとなっている。新型コロナウイルス感染拡大による影響で経済の動きが止まるなか、こうした局面打開のための新たな動きもみられる。

メーカーもEVのさらなる普及を願っている(日東工業・Pit-C3)

安全・安心な普通充電器普及の取組み

EVPOSSAの取組み

政府のEV・PHEV充電インフラ整備事業費補助金の令和2年度予算案額は8・9億円となっている。予算資料には「2030年までに新車販売に占める次世代自動車の割合を5〜7割とする目標の実現に向けて普及に不可欠な充電インフラの整備を推進する」と記載されてはいるが、その文言とは裏腹に昨年度よりも減額となっている。
こうした厳しい環境のなか、電動車両用電力供給システム協議会(EVPOSSA・イーブイポッサ)は、電動車両用普通充電に関する業界横断的な議論・検討を行い必要な対策を実施する。
年々、さまざまな電動車両が市場投入され、車両に電力を供給する普通充電器も各種タイプが市場投入されているなか、普通充電器と車両間との接続に関する問題や安全性に関する問題の発生への懸念の高まりに対して一定の接続互換性や安全性が担保された充電器のみが設置される体制構築や解決に向けて広く議論・検討する場を提供している。
今年度の事業方針については、「2050年の電動車率100%ならびに2030年のEV・PHEVのシェア20〜30%達成には、これにともなった普通充放電インフラの整備が望まれる。それととともに、バッテリーを災害対策の電力インフラとして利用したりVPPの実証等の取組みを通じて再エネ電力の出力変動の調整に活用するなど電動車両の新たな社会的な価値を生み出すことが期待されている。補助金額も年々減額傾向となっているなか、電動車普及のため普通充放電インフラでの新たな需要・価値の創出や施策の提言と補助金に頼らない普及策の展開が望まれる。今後、2030年においてEV/PHEVと同等数以上の普通充放電器の普及を目指し、安全・安心な普通充放電インフラの普及に向けて引き続き積極的に取組む」としている。

世界の充電インフラ市場

富士経済はこのほど、主要16カ国(欧州大陸6・米大陸2・アジア4・ASEAN3・オーストラリア)のEV・PHV向け充電インフラ市場を調査した結果を公表した。
EV・PHV向け充電インフラは、各国がEVやPHVの普及を積極的に進めており、それにともない需要が増加している。普通充電器を中心に普及が進んでいるが、急速充電器の需要も増加しており、中国を中心に市場は拡大するとみられる。ワイヤレス給電システムは、現状では数千台にとどまるものの、中国や米国を中心に普及が進んでいる。2025年頃から市場は急拡大するとみられ、2030年頃には普通充電器の設置台数を上回ると予想される。
国別にみると、中国では国策によりEVやPHVの販売が急増しており、各充電インフラの普及が進んでいる。
次いで普及が進んでいるのが米国であるが、トランプ政権下で環境保護庁(EPA)と運輸省道路交通安全局(NHTSA)から企業平均燃費規制の基準値を緩和する新たな規制案が発表され、一部で内燃車への回帰がみられるなどEV・PHVの普及が阻害される可能性もある。ASEANなどの地域でも国策としてEVやPHVの普及が進められている。

◇急速充電器
急速充電器は、中国の標準であるGB/T、日本発祥で世界に先行普及したCHAdeMO、欧州や米国を中心とするCCS(Combo1・Combo2)、Teslaが展開するSuperchargerなどの方式がある。
日本ではCHAdeMOが主力であり、Superchargerもみられるものの、2019年時点で100個の設置にとどまる。CHAdeMOはこれまで、出力50kWもしくはそれ以下の出力機であったが、新電元工業が90kW機を投入したことで設置が進んでおり、今後も伸びるとみられる。用途別では公共用が中心であり、職場用や商用車用の普及は時間がかかるとみられる。

◇ワイヤレス給電システム
ワイヤレス給電システムは停車中給電システムと走行中給電システムがある。現状では大半が停車中給電システムであるものの、米国や中国では商用車用の走行中給電システムの普及が始まっている。2035年には停車中が87万台、走行中が414万台になるとみられる。
日本では、ダイヘンが投入したEV・PHV向けシステムなどがあり、2018年は僅少にとどまっている。停車中給電システムは2019年に200台が見込まれ、2025年以降、本格的に伸びるとみられる。また、走行中給電システムは2025年頃に市場が立ち上がり、2030年以降、急伸するとみられる。

◇普通充電器
普通充電器は、米国や日本で普及するType1、欧州で普及するType2、中国の標準であるGBなどの方式がある。
日本ではType1が主流である。搭載バッテリー10kWh前後のPHVの普及が進んでいることなどから、大部分が出力1kW機(100V電源使用時)と3kW機(200V電源使用時)となっており、今後もこの2タイプを中心に伸びるとみられる。

急速充電器の規格統一へ

CHAdeMO3.0(CHAdeMO協議会ホームページより)

前述の市場調査にもあるとおり、日本における急速充電器の主力は「CHAdeMO(チャデモ)」で、中国では「GB/T」が標準となっている。
この、CHAdeMO陣営とGB/T両は、2018年より共同開発を進めており、開発した次世代超高出力充電規格「ChaoJi(チャオジ)」がこのほど「CHAdeMO3.0」として正式に発行された。
「CHAdeMO3.0」は、「500kW超級の超高出力対応」「液冷技術の採用およびロック機構のインレット側への移設等によるコネクタの小型化と充電ケーブルの小径・軽量化」「CHAdeMO3.0車両の既存急速充電器との後方互換性確保」といった特長があり、欧州や米国からも有力企業がプロジェクトに参画して先端技術の粋を集めた開発が進行している。
また、インドが検討への参画を正式に表明しているほか東南アジアや韓国の政府・企業等も強い関心を示しており、次世代の世界統一規格としての期待が高まりつつある。
日中関係者間では、今後さらなる技術検討を進めるとともに新規格に基づいて試作された超高出力充電器の市場へのトライアル設置や技術デモンストレーション等を通じ、世界に次世代新規格を広く情報発信することで合意している。
CHAdeMO陣営では、今年度中に新規格の試験要件等をまとめ、新規格に基づいたEVの市場投入は早ければ2021年にも可能となる見通しである。

EVリースサービス

関西電力はこのほど、法人向けEVリースならびにカーシェアリングシステム等を活用したモビリティサービスの提供を開始した。
EVリースサービスは、「EV」「EV用充放電器」「EV充放電管理システム」を一元的にリースで提供するもので、複数台のEVを制御して事業所等のエネルギーマネジメントやBCP(事業継続計画)対策として利用できる。
また、EVを業務利用にとどまらず、従業員の通勤やプライベートにも利用することができる「カーシェアリングシステム」も提供する。
同社では、サービスの採用によりEVによる低炭素社会への貢献やエネルギーの有効利用、カーシェアリングによるEV維持費の軽減、従業員のマイカー維持費軽減といった効果を期待する。

まとめ

当然ながら、充電器を発売する電材メーカーにとってもEV・PHVの普及は、業界活性化のためにも大いに望むところである。そのためにも、これらの動きが今後どのように推移するのか、注目したい。