【住友電気工業】世界初の地中送電線遠隔監視システムを開発

地中送電線の遮へい層を活用したセンサネットワーク

住友電気工業(株)は8月17日に、東京電力パワーグリッド(株)(以下、東電PG)と既設の地中送電線のセンサネットワークが容易に構築できる遠隔監視システムを世界で初めて開発した。

●現状の課題

電力会社の地中送電線設備の保守点検は地下トンネルやマンホール内で作業者が行っており、その効率が課題となっていた。
また、電力の安定供給を目的としたIoTやAI等を用いる設備故障の早期検出や事前の予知診断等についても、使用するセンサ情報を収集する通信線敷設等のインフラ構築に多大な費用がかかる問題があった。

●開発の概要

既設の66 kV以上の地中送電線にある遮へい層を第1図のように新たに伝送路として使用し、電力線通信(G3-PLC)を用いて、センサネットワークを容易に構築できる遠隔監視システム(第2図)となっている。
このシステムでは、送電線路の途中の接続部に設けられているボンド線(遮へい層と接地して隣接区間と接続する単線)に小型の分割型CTを取り付けることで、既設の地中送電線の遮へい層を伝送路とした電力線通信を可能としている。そして、センサ情報をまず地上部まで伝送し、そこから携帯電話等の既存の通信手段を使ってデータ蓄積用のクラウドサーバーまで伝送する。
これにより、新たな通信線を敷設する必要もなく安価で信頼性の高いセンサネットワークが構築できる。
同システムは住友電気工業が開発、東電PGが実証した。東電PGは7月から地下トンネル内設備の温度監視に同システムを採用している。

●今後の課題

これまで保守用のセンサ情報取得が困難だったマンホール設備内の温度、水位、電流、映像等の情報が取得可能なシステムを、2021 年の実用化を目指して開発を進める。今後もセンサ情報をもとにAIやIoT等を活用したデジタルトランスフォーメーションの導入によるシステム構築を通じて、人手不足や電力の安定供給の課題解決に寄与する送電線保守の高度化を進めていくとのこと。

オーム社「電気と工事」2020年10月号掲載