矢野経済研究所 空調衛生設備工事に関する法人アンケート調査(主要事業者 89社対象に) 市場環境は好調維持

空調衛生設備工事事業者89社の空調設備工事売上高推移

矢野経済研究所はこのほど、国内の主要な事業者89社を対象に空調衛生設備工事に関する法人アンケート調査を実施し、2015年度から2019年度までの空調衛生設備工事の売上高推移を明らかにした。

1、調査結果概要

調査では、国内の主要な空調衛生設備工事事業者89社を対象に法人アンケート調査を実施。2019年度の空調衛生設備工事売上高(89社の設備工事売上高合計)は、前年度比104・9%の1兆4276億円となった。
国内の空調衛生設備工事は、引き続き受注環境は好調に推移し市場規模も増加したが、東京オリンピック・パラリンピックの工事需要が一巡したことで伸び率の鈍化がみられ、2019年度で一旦ピークアウトしたものとみれる。
2020年に入ると、新型コロナウイルスの感染拡大によって宿泊施設などインバウンド(訪日外国人客)向け関連施設案件の受注動向に影響が出始めた。2020年4月までに着工していた工事案件は計画通りに進んだものの4月以降に着工予定の案件は施主の意向もあり、先送りや計画中止が増加した。
さらに、緊急事態宣言の発令にともなう施工・営業の自粛期間があったことで営業活動の好機と考えられる諸口(複数の小規模)工事の受注が減少したことにより、2020年度下期以降の業績に下方圧力を及ぼすと考える。

2、注目トピック

コロナ禍による工事量の減少によって資機材費や人件費の一方的な上昇は回避
職人不足が常態化していることに加え、東京オリンピックの工事需要増等を背景に仕事量が急激に増加したため、空調衛生設備工事事業者は職人・専門工事事業者などの確保という課題に対する糸口が見えない状態となっていた。
しかしながら、コロナ禍により需給バランスに変化がみられ、一時的に人手不足の問題は緩和していることから労務費は高止まり状態にあるものの一方的な上昇は回避できている。
ただし、これはコロナ禍という特殊要因を背景にしたものであり、職人不足に対する根本的な解決には至っていないことからコロナ禍が収束に向かうにつれて再び人手不足の問題が顕在化する見込みである。
現在は、労務費が右肩上がりで上昇していた時期に多くみられた空調衛生設備工事事業者から施主に対する価格交渉の構図が少なくなっている。

電材流通新聞2020年12月3日号掲載