趣変えたジャンボ見本市

ロボットへの眼差し強まる 電材・電工業界にも新技術の大波

人を隔てるためのガラスケースの内側で、ロボットがうなりを上げるような勢いでアームを振り回している。担当者によると、スマートフォンの製造現場を想定したデモンストレーションだそうだ。動き方は高速性能を強調するためというが、見ているとちょっと怖い気もしてくる。
このほど東京ビッグサイトで開かれた「ジャンボびっくり見本市」は、これまでとは雰囲気を大きく変えた。それを演出したのが、ロボットなど技術革新の波に乗って登場してきた製品群だ。「労働生産性の向上」をテーマに、「生産性の省人化」「施工の省人化」を訴えるコーナーでは、このほかにも、安全柵などを取り払って人と一緒に作業ができる協働型のロボットや、センサーで作業者などを察知して追従する荷物搬送型ロボットなどが紹介された。
東芝クライアントソリューションは、スマホ型のPCとセットで使用するグラス型装置「インテリジェントビューア」をアピールした。作業者がこれを装着すれば、離れた場所にいる支援者と視界や音声を共有できる。例えば、作業者が不慣れな作業でも、支援者が現場を見ながら適切な指示を出すことが可能になる。将来は、拡張現実(AR)の技術を使って、作業に必要なデータをグラス上に映し出すようなことも想定しているようだ。
ジャンボ見本市は、AIやIoT、ロボット化のうねりが、電材・電気工事関連業界にも確実に押し寄せてきていることをうかがわせた。三菱電機は既に4月1日付で、「電材住設PV事業部」を「電材住設スマート事業部」に衣替えさせている。住宅設備も、これからはインターネットにつながることによって、新しいサービスの創出が期待される時代。同社の動きは、設備を単独でとらえるのではなく、すべてのものをIoT化の流れの中に取り込んでいこうとの意識の表れと見ることができるだろう。
ただそうはいっても現時点では、新製品がかなりの高額であることは間違いない。小規模、あるいは零細な電気工事業者がそれらを実際に導入できるようになるのは、まだ先の話になりそうだ。見本市でのロボット担当者の話によると、本格的な作業ロボットなどを出展するのは、今回が初めて。因幡電機産業側から、テーマに沿った製品を出展してもらうよう依頼されたという事情が背景にはあるようだ。
それでも、主催者側の鼻息はあくまで荒い。因幡電機産業の守谷承弘社長は、昨年4月に開かれた大阪の見本市で「われわれは変化に対応すべく、さまざまな業界とつながりながら、パイプを大きくしていく。ジャンボは、いままでの電気工事店中心の動員から、ゼネコンやサブコン、設計事務所、学校、銀行など、幅広く動員していく」と述べていた。今年の見本市は、さながらその言を実現させた趣が濃い。
IT調査会社、IDCジャパンは2月にロボットに関する報告書を相次いで発表した。それらによると、ロボットは2018年以降、本格的な展開が見られそうだという。関西や中部の電材組合、電気工事組合も今年に入ってから、AIやIoTなど新技術に向けた取り組みを活発化させている。
後年振り返ったとき、電材・電気工事業界にとって今年は“ロボット元年”だったといわれるような年になるのかもしれない。


ロボットコーナーに展示された協働型ロボットなど


床面のテープをセンサーが認識して追従する搬送ロボット


ウェアラブル型のビューアセット

「生産性向上」を訴えるテーマゾーンのパネル

電材流通新聞2018年4月26日号掲載