自然採光による明るさから照明を制御
大成建設(株)、東京理科大学は、明るさに対する人の感覚値を考慮した照明制御システム「T-Brightness Controller」を共同開発した。
●開発の背景
近年、室内の光環境は、採光装置(光ダクト等)を用いて自然光を室内に取り入れることで、照明の出力を減らして省エネを図るとともに、執務者が健康的に働くことができる場の創出が広まりつつある。
しかし、従来方式では、机上面のみの照度をセンサで検知し、執務者の手元で必要な照度を確保するために室内照明の出力を変化させる制御方式が主流だった(第1図)。
しかし、実際には自然採光を含めた空間全体で明るさを感じているため、手元のみを対象とした制御では、室内全体でみると明るすぎる状態となり、エネルギー削減の余地が残されていた。
そこで、自然採光を含めた室内の光環境において、空間全体の光の量を制御する新システム「T-Brightness Controller」が開発された。
●同システムの特徴
(1)快適な光環境を実現
同システムは室内の天井面に明るさ制御センサを設置し、「窓面」と「天井面」から得られる自然採光を含む室内の光の量を計測する(第2図)。
これにより、快適な光環境の指標となる「明るさの感覚値」※を確保した室内照明の出力制御を実現し、常に快適な光環境が提供可能となる。
※ オフィス内の光環境に関する被験者実験から導き出した式を用い、天井面と窓面の光の量から人が感じる明るさを数値化した同社独自
の値。
(2) 照明エネルギー消費量を削減
自然採光の光の量に応じて、「明るさの感覚値」を維持し、室内照明の出力を制御するため、照明エネルギーの削減効果が期待できる。窓のある室内空間を対象にしたエネルギー消費量の年間シミュレーションでは従来比で年間で約11 %の省エネ効果が得られた。
●今後の展望
同社は今後、新築、改修を問わず、オフィスや病院などさまざまな用途の建物に同システムの普及を目指す。