日本電気(株) コンクリート電柱のひび割れ検知を実証

光ファイバセンシング技術やAI技術を応用

日本電気(株)(NEC)と(一財)電力中央研究所(以下、電中研)は、コンクリート電柱(以下、電柱)に共架している既存の通信用光ファイバを振動センサとして活用する光ファイバセンシング技術やAI技術を応用した実証実験を実施。振動データから電柱のひび割れの有無(写真1)を判定することに成功した。

●背景

近年、国内の電力送配電事業者は、送配電設備の保全、工事の担い手不足や、災害時の設備被害の状況の迅速な把握といった課題があり、配電設備の点検、管理業務の高度化かつ効率化を実現する仕組みが求められている。
特に現在、国内の電力会社は2,200 万本以上の電柱を保有し、これらの経年劣化の状態や災害時における被害状況の把握の効率化が課題となっていた。

●実証実験の概要

同社の光ファイバセンシング技術では、光ファイバケーブルの片端から光パルスを送信し、微弱な戻り光(後方散乱光)の位相の変化を検出することで、経路上に生じた振動などの状態変化を測定する。
実証実験では各電柱設置地点を事前に特定し、そこから得られる振動波形を各電柱の自然振動として継続的に取得。また、社の最先端AI技術群「NEC the WISE」の1つである「RAPID機械学習」※1により、この振動波形と電柱のひび割れの有無をセットとした学習モデルを構築した。これらにより、遠隔での電柱のひび割れ有無の判定を行う(第1図)。

光ファイバから得られる振動には周辺音響や交通振動などのさまざまな振動が含まれるため、フィルタを適用して電柱に起因する振動成分を抽出する必要がある。そこで、試験対象のコンクリート電柱のひび割れ検知を実証
日本電気(株)
光ファイバセンシング技術やAI技術を応用電柱群の振動特性を事前に調査、設定することで振動成分を抽出した。

●実験の結果

実証実験は電中研 赤城試験センター構内の電柱を用いて行われた。その結果、ひび割れ電柱を遠隔から約75 %の精度で判定することに成功した。

●今後の展望

同社は、電中研とともに、今後はより広範囲な構造、材質の電柱へ対象を広げる等、多様な環境での評価検証、判定制度の向上に取り組んでいくとのこと。

※1:ディープラーニング技術を搭載し、事前に手本となるデータを読み込むことで傾向を自動で学習するため、データの分類、検知、推薦などの高精度な判断が可能。

オーム社「電気と工事」2020年11月号掲載