AIデジタル室設置、基幹システム刷新
東日本物流センター 切断能力を増強
矢崎エナジーシステムの矢﨑航社長
矢崎エナジーシステムの矢﨑航社長は、取材のなかで「AI・デジタル室(矢﨑航室長)を設置し、基幹システムを刷新している。受発注伝票などをデータベース化するとともに、ビックデータを用いてAIやIoTで分析してニーズや繁忙期を予測し、製造の最適化を図る。さらに物流センターの電線切断加工の営業時間を延長し、当日出荷を図りたい。いわば流動性に即し、小回りが効く生産・サービス態勢の強化、短納期対応ができるサプライチェーンに適したスマートファクトリー化に向け、構想を練り直す。また、一部で効率化が滞ると、総合的に効率が下がるため、その点にも配慮したい」と語った。また、急な受注用に最近、東日本物流センターの切断能力の増強を図った。
(電線新聞第4260号11月15日付け1面からの続き)
――御社では、AIやIoTを活かし、人間が本来すべき人間らしい仕事、人でなければできない仕事をするために、その移行に取り組まれている。この一環として、コト売りに取り組まれていると伺ったが、具体的にコト売りとは?
「当社ではAI・デジタル室(室長=矢﨑航社長)を設置し、AI・IoT時代に向け基幹システムを刷新している。受発注の伝票などを整理する際、データベース化するとともに、ビックデータを用いてAIやIoTで分析し、顧客のニーズを予測しながら、最適な生産時期などを割り出して、製造の効率化・最適化を行えればと考えている。さらに顧客の電線ケーブル発注の繁忙な時期や必要な品種もAIやIoTで予測することによって、物流センターにおける電線ケーブルの切断加工の営業時間を延長し、当日のうちに出荷できるようにしたい。いわば流動性に即し、小回りが効く生産・サービス態勢の強化・充実を図り、短納期対応を実現したい。
一方、電材店からの注文に多いFAXを用いたケースにも、今まで通りしっかりと対応する。
また、一般的に鉄道切符を予約する際、インターネットで申し込むと通常料金よりも割安になるケースが多い。当社で受注する場合も、世の中の流れに沿って、特典も付与しながら、電材店にもネット発注を勧めたいと考えている。電材店にも、それに徐々に慣れていただけるような企画も進めたい。いずれにしても、進化するAIやIoT時代を、顧客に寄り添いながらともに乗り切っていきたい」
――ところでAI・デジタル室とは?
「データサイエンティストを含めたIT技術者たちの集団である。異業種経験者で構成されているのもAI・デジタル室の特色といえる」
電線ライズアップ計画の推進を実施
――御社が進めている60期(22年6月期)事業戦略の特色とは?
「電線ライズアップ計画を推進していることだ。これにより、『コンパクトな在庫』『ムダの無い配送』『揺るぎない品質』『タイムリーな生産』をテーマにして、『買う』『雇う』『つくる』『売る』『運ぶ』をキーワードに事業戦略を遂行している。つまり4テーマ、5キーワードの観点から問題点を洗い出して解決し、電線事業を効率的にしっかり運営できるようにしていきたい。
その際には、様々な業種の経験を持つAI・デジタル室スタッフの視点も重視しながら、基幹システムの刷新が完了する頃に合わせて計画を進めていく」
――御社の電線事業分野での注力製品は?
「一つ挙げるとしたら、VVFの製品開発を進めているところである。VVFはどこも同じなのが当たり前と言われている状況を、トップクラスメーカーの1社として何とか、打破する気概を持って取り組んでいる。顧客のためになることを念頭に置いて、差別化と脱コモディティ化を主眼にしながら、同時にモノづくりとコト売りの両面で、付加価値の高い製品化を図る」
――電線のアルミ化については?
「様々な企業が電線のアルミ化を進めていることは認識している。ただ、アルミ電線は、施工性と、コネクタ接続の際の電食・腐食性に課題がある。矢崎総業の自動車事業部門と連携して検討を進め、需要があれば、対応できる準備をしている」
会社全体・総合的な効率化を推進を推進
――御社の物流への取り組みは?
「東日本物流センター(神奈川県海老名市)の建設や、他の物流拠点の整備・拡充によって、当社の物流拠点網の整備はある程度、完了した。ただ、急な受注に対応するため、最近、追加措置として東日本物流センターの切断能力の増強を図った」
――設備投資については?
「当社の沼津製作所の改修は、(第1ステップの第2ステージまで)プラン通り順調に進み、現段階では、ある程度一段落した。次の投資機会をうかがっているところだ。
これまでは耐震などを重視してきたが、今後はAI・デジタルを導入したスマートファクトリー化に傾注する。電線ケーブルの受注から出荷・納入までの間で、工場が流動性にマッチして、最適な生産ができるようにAIやIoTを導入し、適切な情報などを把握できるようにしていく。つまり、AI・デジタルを導入したサプライチェーンに即したスマートファクトリー化に向けた構想の練り直しを図ることにした。それが電線ライズアップ計画などに繋がる。会社全体・総合的な効率化の推進であり、一つの事業部で効率化が遅れると、全体的な効率化が進まないため、そうした点にも配慮しながら、計画を遂行したい」
――今年度の御社の最重要課題は、何か?
「いくつかあるが、一つに絞ると、一部前述の(本紙・前号11月15日付け1面掲載=銅建値に見合う適正価格の販売を推進し、収益の適正化を進めていく、とした)ように銅価高や石化高、物流費アップ分に見合う適正価格の販売を推進し、収益の適正化を進めていくことである」