エイテックスを訪ねて 「テープライト」「シリコンライトα」に つながる「曲がるLEDライト」の技術

創意・工夫が満ち溢れるモノづくりの現場

椿社長(右から2人目)とエイテックス社員

福岡・博多駅近くでモノづくりに励む会社が存在する。その会社の名は「エイテックス」。LED照明の製造・販売を手掛けているが、材料・部品の調達が困難をきわめるなかで業績は好調である。今回、エイテックスがどういった会社なのかについて聞いた。

エイテックスは1991年、当時の九州松下電器に在籍していた石橋和雄氏によって設立された。現在、大光電機、コイズミ照明、ウシオライティング、遠藤照明、YAMAGIWAといった照明メーカーのほか、大手電材会社などが主要取引先となっている。

創業者の石橋会長

1996年に開発したシリコンライトは、99年に生産ラインを強化して国内外での販売を開始した。シリコンライトは、「消えないネオン管」をコンセプトに開発され、砲弾型LEDをFPC(フレキシブル基板)に実装してシリコンケースで封止することで実現した世界初の「曲がるLEDライト」として誕生した。その技術は、現在主力製品となっている「テープライト」や「シリコンライトα(アルファー)」につながっている。

テープライトスリム

テープライトアドレッサブル

テープライトスリムディフューザー

テープライトディフューザーアドレッサブル

シリコンライトαディフューザーフルカラー

石橋氏は2019年に社長を退いて会長となり、後任の社長にはウシオライティングの社長も務めた椿隆二郎氏が就いた。石橋氏と椿氏は、ゴルフの場で初めて出会い、椿氏は石橋氏の熱心なアプローチで社長を引き受けることとなった。
昨今、コロナ禍の影響で材料・部品の調達が困難をきわめているが、エイテックスでは設立当初よりLED素子など主要部品については国内メーカー製を使用し、福岡本社工場と長崎県島原市にある協力工場で製造している。材料・部品不足にほとんど悩まされないこともあって引き合いもこれまで以上に発生し、直近の業績も好調を維持している。
ここではあまり詳しく触れられないが、モノづくりの現場には町工場らしく創意・工夫が満ち溢れていた。あるメーカー関係者は、椿氏からエイテックスのモノづくりについて聞かされたときは半信半疑だったが、現場を見るなり取引を即決したという。
主力製品のテープライトやシリコンライトαは、特許技術である折り曲げ基板や網線構造、さらには長尺1枚基板といった特長をもつ。折り曲げ基板は、LEDチップを正面実装することで光の照射方向に対して側面方向への曲げを可能とし、高い効率の反射を実現。また高い防水性・耐候性を持ったシリコーン材料を採用することで、屋外建築照明としても幅広く使われている。
網線構造は、電源ラインを網線で強化し、電気の通り道を増やして末端まで均等な明るさを実現している。そして、長尺1枚基板は、一般的な短冊状の短い回路基板を半田で連結する必要が無く、継ぎ目を無くした1枚基板である。継ぎ目を無くす事により、半田クラックによる断線不良の原因を無くし、連結部の無い10m製品の納入を可能にした。
また、数十m連続的に部品実装が可能な「リールtoリール生産方式」を自社開発し、それにより納期短縮と製造コストの削減を実現させた。

リールtoリール生産方式

 いまなおモノづくりに携わる石橋会長は、「これからも新しいコンセプトのLED照明をつくり、新しい照明分野を開拓したい」と情熱が冷めることがない。
椿社長は、「テープライトはすでに市場に浸透しているが、品質面も含め満足されているユーザーは少ないのではないか。当社はこれからも九州で生まれ、九州の工場で、九州の人々により、照明を愛する方々により良い品質に優れたあかりを提供する」と語ったうえで、今後の展開について「灯体だけではなく制御するためのシステムについても今期よりソリューション部を創設し、より高度な制御も含めトータルに提案できる体制を強化している」と語る。
すでに、国内外のさまざまな施設において、エイテックスのテープライトやシリコンライトαが用いられている。各々が日常足を運んでいる施設においても、知らず知らずのうちにエイテックス製の照明灯具を目にしているかもしれない。


テープライトが採用された阪急神戸三宮駅

電材流通新聞2022年2月24日号掲載