電工さんの工具箱 第35回「台車」重たい荷物も楽に運べる。

石を運んだのは古代人か宇宙人か?

 エジプトのピラミッド、イギリスのストーンヘンジ、イースター島のモアイ像など、地球上には巨石で形づくられた遺跡が数多く残されていて、その存在は今も謎に包まれている。

 難しい話はさておき、それらの遺跡を見て私たちが真っ先に思い浮かべる謎はというと、「こんな大きな石をどうやって運んだの?」だ。たとえば、世界最大規模を誇るクフ王のピラミッドはおよそ230万個の石で構成されており、1個の重さが平均2.5トン、大きな石だと7トンもあるらしい。また、大平原に忽然と現れるストーンヘンジの石は最大で約50トン、イースター島にざっと1000体もあるモアイ像は最大で約80トンだという。古代遺跡はしばしば宇宙と関連づけて論じられるが、本当に宇宙人の仕業ではないかと思いたくなるほど、古代人の文明は驚きと不思議に満ちている。

 しかし、現代人だって負けてはいない。持てる英知と科学技術を結集し、さまざまな角度から“謎”の解明を進めている。その中で、巨石の運搬法として定説の一つとなっているのが、地面に丸太を並べたコロの上にソリを置き、その上に石を載せて転がすという方法。また、モアイ像は頭の部分に掛けた長いロープを左右交互に引っ張って揺らし、像を“歩かせて”運んだという説もある。一人で冷蔵庫を運ぶときの要領だ。古代人は天才なのかもしれない。

大阪城の石から、だし文化が生まれた⁉︎

 巨石でつくられた遺跡は日本でも見ることができる。城の石垣である。たとえば、難攻不落の要塞と称された大阪城は全国の城の中でも巨石が多く、最も大きい蛸石(たこいし)は表面積が約36畳、重さ100トン以上と推定されている。こうした巨石も舟運以外では丸太を並べたコロで運ばれたようだが、その際、昆布が使われたという。水に浸した昆布のヌメリを利用して滑りを良くしたというのだ。そして、このとき大量に用いられた昆布が、大阪の昆布だし文化のルーツなのだとか。知らんけど。

丸太を輪切りにすると車輪になった

 さて、そろそろ本題が近づいてきた。というより、これまでの話の中に本題の核心部分が隠されていたのだ。ほんまかいな。

 現代、地上における運搬手段といえばトラックなどの四輪車や自動二輪車、貨物電車、自転車やリヤカー、そして台車がある。それらすべてに共通するのは何かというと、車輪だ。車輪は、古代に巨石を運んでいたあの“コロ”から発達したと考えられており、一説によると起源はメソポタミア文明に見られるという。つまり、丸太を輪切りにしたものが車輪というわけだ。そこから長い年月を経て、車輪同士を軸で連結し、その上に台を乗せた荷車が使われるようになった。今でいう運搬台車の誕生である。

多種多様な現代の台車

アルインコ株式会社 台車 ツインキャリー

株式会社ピカコーポレイション 折りたたみ式リアカー

 物を載せて運ぶというシンプルな機能の台車だが、その種類は豊富だ。多種多様なタイプがメーカー各社から販売されている。主なものを列挙すると、まず、手押し用のハンドルが片側にだけ付いているタイプが汎用的で、ハンドルは折り畳み式と固定式とがある。次に、ハンドルが前後両方に付いていて、どちらからでも押せるタイプ。これだと少々勢いよく押しても荷物が前に崩れない。そして、ハンドルが左右両サイドに付いているタイプ。これは長い物を運ぶのに便利だ。さらには、荷物を載せる部分が網カゴのようになっているタイプ、荷台が2段や3段になったタイプ、ハンドルのない平台だけのタイプなどもあり、用途に合わせて選ぶことができる。材質も、鋼鉄製、アルミ製、ステンレス製、樹脂製とさまざま。電気工事などの場合は、工具類と一緒に車に積んで現場に向かうため、軽量コンパクトなタイプの台車が人気だ。

ミノル工業株式会社 台車ドラムコロ

ジェフコム株式会社 キャリースライダー