電気の豆知識 第8回 「非常灯と誘導灯」~いまさら聞けない非常灯と誘導灯の違い・そして時代は蛍光灯からLEDへ~

「非常灯」と「誘導灯」の違いとは

会社・ホテル・イベント会場などでよく目にするものに「非常灯」と「誘導灯」があります。
どちらも人が多く集まる場所で火災や事故が発生した場合、人々が迅速かつ安全に避難を行うための装置です。しかし、その目的は少し違うようです。今回はその「非常灯」と「誘導灯」についてお話しします。

「非常灯」とは、停電の際に室内、廊下、階段などを照らしてスムーズに避難を行うための照明のことです。バッテリーを内蔵しているものと、電源別置のものがあります。停電時に30分以上点灯し、避難経路を照らし、安全かつ速やかに避難できることが法律によって定められています。

              非常灯

 次に「誘導灯」ですが、こちらも火災や事故が発生した際に人々が迅速・安全に避難するための装置で、「非常灯」と同じです。しかし「誘導灯」は、非常口(避難口)や誘導経路を教えるためのもので、室内や廊下を照らすためのものではありません。簡単にいうと、非常灯は「速やかに避難するために必要な最低限の明かりを提供する灯」ですが、誘導灯はその名の通り「避難口や避難する道筋をガイドする灯」ということになります。

               誘導灯

 夜間や、窓のない地下で停電した場合、誘導灯の灯だけでは安全に避難することができません。そのため非常灯と併用して安全な避難方法を確立することが、法律で義務付けられているのです。ちなみに非常灯は建築基準法によって、誘導灯は消防法によって設置が義務付けられています。

こんなにある「非常灯」の種類

非常灯は点灯の形態により、専用型・組込型・併用型の3種類があります。

「専用型」とは光源がひとつで、平常時には消灯していて、停電時のみ点灯するもの。
「組込型」は平常時と非常用の2つの光源があるもの。
「併用型」は光源はひとつですが、平常時には通常電源で点灯し、停電時はバッテリーに切り替わるものをいいます。

非常灯は「電源内蔵型(バッテリー)」と電源が別の「電源別置形」があり、電源内蔵型はさらに大きく次の5種類に分けることができます。

1・非常用蛍光灯組込形
平常時は蛍光灯を使用し、非常時には別に組み込んだ非常用蛍光灯を点灯させるもの。

2・非常用ミニハロゲンランプ組込形
平常時は蛍光灯を使用し、非常時には別に組み込んだミニハロゲンランプを点灯させるもの。

3・非常用白熱灯組込形
平常時は蛍光灯を使用し、非常時に白熱灯を点灯させるもの。

4・非常用LED・蛍光灯併用形
平常時はLEDランプを使用し、非常時には蛍光灯を使用。

5・非常用LED・白熱灯専用形
平常時はLEDランプを使用し、非常時には白熱灯を使用。

電源内蔵型の非常灯は、バッテリーを内蔵しているため光源と同じくバッテリーの交換が必要になってきます。同じタイミングで交換できればいいのですが、通常は光源よりもバッテリーの方が寿命が短く4~6年で交換が必要になります。近年はLED光源の非常灯が発売され光源の寿命が延びていますが、バッテリーの寿命はこれまで通りです。したがって新しく非常灯を設置したり交換を考える場合は、電源内蔵型から電源別置型に切り替えた方が、長期的に見て維持費を少なくすることができます。

蛍光灯が生産終了に

東芝ライテック、岩崎電気などの大手メーカーが、次々と蛍光ランプ・蛍光灯照明器具の生産中止を発表しました(ただしメンテナンス用の蛍光ランプは継続生産されています)。
その背景には政府による「新成長戦略」「エネルギー基本計画」や、一般社団法人日本照明工業会の「照明戦略2020」の目標があります。蛍光灯の生産中止によって、今後はLED化が加速するとみられています。

LED非常灯・誘導灯のメリット

まず「非常灯」についてですが、従来の非常用光源は白熱灯と蛍光灯に限られていました。しかし2017年の建設省告示によってこれが改正され、非常用光源としてLEDが新たに追加されました。LEDの著しい進化に、ようやく法整備が追いついたといったところでしょうか。
LEDは従来の蛍光灯と比べて約50%の節電が可能です。またリモコン自己点検機能を標準装備しているため(装備していない機種もあります)、点検作業効率が大幅にアップします。

ところでLED非常灯において、電池内蔵型と別置型ではどちらのメリットが大きいのでしょうか?
それは使用する施設の大きさによって違ってくるようです。
長寿命のLED光源と違ってバッテリーは消耗品です。4~6年に1度は交換が必要になります。
大きな施設の場合、膨大な数の非常灯のバッテリーをそのつど交換していくのは大変な労力とコストがかかります。それが別置型であればバッテリーを一カ所で集中管理でき、LED本来の低コスト性を十分に生かすことができます。

一方、小規模な施設であれば、非常灯の数も少なく単体でのメンテナンスが可能です。
別置型よりも費用が安くつく電池内蔵型のLED非常灯の方がメリットが大きいといえるでしょう。

次に「誘導灯」についてですが、こちらは24時間点灯しているので、LEDにすることで電気代を大幅に節約することができます。また従来の電球に比べて衝撃に強いので、大規模な地震が起こった際にも有効といえます。

2020年12月より水俣条約が施行され、水銀ランプの製造・輸出入が全面禁止となることが決まっています。このような理由からも、今後あらゆる分野においてLED照明器具が普及拡大していくことでしょう。それに伴って「非常灯・誘導灯」も、順次LEDに切り替わっていくことが予想されます。

電気代の節約だけでなく、災害時の迅速な避難や安全な誘導のために、あるいは環境保護や人体への影響といった観点からも、この機会にLEDへの切り替えを検討してみてはいかがでしょうか。