塩ビ コンパウンド 各社値上げ完了 5、6月

過去を上回る 大幅値上げ 素原料や可塑剤の高騰を受け

塩ビ系コンパウンドメーカー各社は、5月から6月頭にかけて値上げを発表した。値上げ幅は30円/㎏以上~59円/㎏以上の間。今回の値上げは、3月に既報の塩ビレジンと可塑剤の値上げを受けたコスト増に伴うもの。値上げ幅を仮に40円/㎏としてVVF2芯×2.6㎜(㎞)で目付計算すると、3千760円以上のコスト高となり、銅価の高止まりもあって製品価格への転嫁は必須だ。当初、短期で終わると思われていたウクライナ紛争に端を発する世界的なエネルギー高騰は、戦争の長期化による混迷が続き、先行きは不透明だ。状況が長引けばナフサ高騰によるさらなる値上げも視野に入る。

塩ビコンパウンドメーカー各社は、5月から6月頭にかけて値上げを発表した。値上げ幅は企業やグレードによって異なり、30円/㎏以上~59円/㎏以上。ナフサ高騰による3月の塩ビレジン・可塑剤の値上げを受け、価格転嫁したかたちだ。

各メーカーとも、値上げの原因として、粗原料高騰のほか、エネルギー、設備維持、運賃などのコストアップを挙げ、安定供給のため踏み切ったとしている。

長引くウクライナ紛争に端を発する国際的エネルギー高騰の状況は好転しない。終結後も経済制裁は続くとみられ、ロシア産が出回らないため、原油価格が下落する保証がない。その反面、OPECの増産など価格抑制要因もゼロではなく、当面は不透明な情勢が続くとみられる。

大手4社をはじめ、各社の値上げの内訳は次の通り。

リケンテクノスは4月19日に打ち出し、実施は5月10日出荷分から。㎏あたりの価格引き上げ幅は、一般用軟質塩ビコンパウンドが40円以上、一般用電線塩ビコンパウンドが43円以上、耐熱電線用塩ビコンパウンドが45円以上、耐油・非移行等特殊軟質、電線用塩ビコンパウンドが45円以上、硬質塩ビコンパウンドが30円以上、特殊硬質塩ビコンパウンドが45円以上とした。

昭和化成工業は4月25日に打ち出し、実施は5月16日納入分から。㎏あたりの価格引き上げ幅は、軟質塩ビコンパウンドの一般グレードが38円以上、医療用グレードが41円以上、耐熱グレードが41円以上、耐油・非移行グレードが41円以上。硬質塩ビコンパウンドの一般グレードが28円以上、耐衝撃グレードが30円以上、医療・トウメイグレードが42円以上。非PVCコンパウンドは非塩ビ全グレードで43円以上とした。

三菱ケミカルは個別交渉のため期間や価格に幅が大きいとしながらも、4月に打ち出し、実施は5月上旬出荷分からが目安。㎏あたりの価格引き上げ幅は軟質塩ビが42円以上、硬質塩ビが34円以上とした。

プラス・テクは4月22日に打ち出し、実施は5月10日出荷分から。5月21日から6月11日までで客先の改定を終了させた。㎏あたりの価格引き上げ幅は一般軟質コンパウンドが39円以上、耐熱軟質コンパウンドが48円以上、耐油・非移行軟質コンパウンドが45円以上、一般硬質コンパウンドが30円以上とした。

信越ポリマーは4月25日に打ち出し、実施は5月9日出荷分から。㎏あたりの価格引き上げ幅は、硬質コンパウンドが32円以上、軟質/電線コンパウンド(フタル酸系可塑剤)が44円以上、軟質/電線コンパウンド(ポリエステル系可塑剤)が45円以上、軟質/電線コンパウンド(トリメリット系可塑剤)が48円以上、難燃軟質/電線コンパウンド(フタル酸系可塑剤)が56円以上、難燃軟質/電線コンパウンド(ポリエステル系可塑剤)が56円以上、難燃軟質/電線コンパウンド(トリメリット系可塑剤)が59円以上で、いずれもグレードにより異なるとした。

塩ビコンパウンドは昨年から複数回にわたって値上げされ、上げ幅も小さくない。電線価格に与える影響も大きくなっており、銅価の高騰に次ぐ悪材料となっている。

電線新聞 4282号掲載