トップインタビュー 泉州電業 西村元秀社長

海外拠点の生産体制8割まで回復
金沢と名古屋の新拠点、23〜24年に稼働予定

泉州電業 西村元秀社長


泉州電業の代表取締役社長西村元秀氏は、「22年度10月期上期の連結売上は551億5千400万円、営業利益35億3千600万円。通期連結業績予想は売上高1千80億円、営業利益64億円に上方修正した」と好調な業績について語った。注力製品・事業としては「工場の省人化・自動化は今後も進む。AI、IoT用の第4次産業革命向け製品の展開は、FA・ロボットケーブル商社として注力する」とした。最重要課題については「電線業界が目指す、取引適正化ガイドラインに沿って、当社独自の経営方針を発展させ、ユーザの声を意識しながら『泉州ファン』を増やしていく」と力強く語った。


 —御社ビジネスを取り巻く市場環境は?
「現在は改善に向かっている。半導体製造設備向け需要の拡大が前期に続いて上向いている。また工作機械、自動車製造ライン向け需要など、直需エンドユーザ向けが好調だ。さらに建設・電販部門も銅価の高騰により売上は伸び、営業利益も確保できている。22年度10月期上期(21年11月〜22年4月)の連結売上は、551億5千400万円(前年同期比28・3%増)、営業利益35億3千600万円(同85・6%増)となった。よって、1株あたり50円だった中間配当を60円とし、併せて通期(20年11月〜22年10月)連結業績予想を、売上高1千80億円(前年度比18・6%増)、営業利益64億円(同34・9%増)と上方修正した」

 —22年度の事業戦略は?
「半導体製造装置、工作機械、自動車設備関連をさらに伸ばしていく。現在、銅価や石化材などの材料コストが高騰しているので、ユーザと値上げ交渉を進めていく。
また今年3月に、制御盤の設計、製造、販売に強みがある北越電研を連結子会社化したが、上海にある製造子会社とともに、直需関連を広く展開したい。
さらに、2つの国内拠点の新設を予定している。一つは、石川県金沢市に建設中の北陸支店で、開業は23年5月になる。建設・電販向けにおいて当社が得意とするジャストインタイム物流体制を充実させ、ユーザのニーズに合わせてサービスを向上していくのが狙いだ。
もう一つは、名古屋に建設するFAセンター。広さは2千坪クラスで、来年着工予定だ。当社の名古屋支店は開設して30年ほどになり、倉庫も各所にある。これらを集約して、主軸の自動車製造設備関連に加え、制御盤加工などの新たな事業展開、タイやフィリピンなどの海外拠点との連携強化に対応していく。24年前半の稼働を目指している」

FAロボットケーブル工場の省人化に対応

—注力製品・事業は?
「得意とするFA・ロボットケーブルは需要増が見込まれる。製品特長をしっかりとアピールしていく。工場の省人化・自動化は今後も国内で進んでいくことから、AI、IoT用の第4次産業革命向け製品の展開に、FA・ロボットケーブル商社として注力していきたい。
電力ケーブルは、関西での大阪万博、IRといった大型案件に期待している。当社の物流倉庫をしっかりと活用しながら、案件確保を進めていく」

—新規事業については?
「ビニールハウスの土壌を直接温める、アビルヒーターという農業用の電線を全国で展開している。従来のビニールハウスは、ボイラー暖房でビニールハウス内を温めていたが、重油値上げによるコスト高やCO2発生などの問題点があった。アビルヒーターは、電気で温めたアビルヒーター線で直接土壌を温めるため、これらの問題点を改善した。さらに生育・出荷が早くなり、生産性の向上に寄与する。
愛知県長久手市にある自社ビニールハウスで、作物ごとに実証実験を行い、この実験結果をもとに特長をPRし、製品の展開を広げている。27年までに年間売上10億円を目標としている」

—材料費、物流費高騰への対応は?
「銅、石化材の値上がりによって、電線ケーブルの原材料は値上がりしている。ユーザに適正な値上げを説明していくことが大切だ。また、経費の削減は、生き残り戦略のためにも必須だ」

—コロナ、ウクライナ侵攻、円安の影響は?
「20年春〜夏にかけてはコロナの感染者が増え、各企業がテレワークとなり、当社の営業活動に支障をきたした。コロナの影響は徐々に薄れてきているが、入国や行動に制限があるため、海外では現地で据付工事ができないといった問題がまだ残っている。また、電子部品や半導体などは海外からの部材調達が停滞することによる、納期遅れは改善されていない。コロナ禍も3年目に入り、ワクチン接種も進んでいることから、生活様式はコロナ前に戻ったと感じ、今後の経済の回復に期待している」

—海外拠点でのコロナの影響は?
「今年4月からは上海のロックダウンにより、上海拠点は2カ月間、稼働ゼロという厳しい状況にあった。6月1日からはロックダウンが段階的に解除となり、生産体制も戻りつつある。ベトナム、フィリピンもコロナの影響を受けたが、台湾は比較的感染者が少なく、影響は少なかった。
また、21年8月に設立した米ミシガン州の拠点は、現在は入国も緩和され、米国の経済もコロナから脱却していることから、本格的な稼働を急いでいる。自動車関連の設備向け、加工がメインだが、電線以外にも、工作機械、ハイテク関連も担う重要な拠点だ。
海外拠点の生産稼働、生産体制は、現状では8割まで回復した」

関連子会社とのシナジー効果を強化

 —各拠点、子会社との連携については?
「海外に製造会社、子会社、販売拠点を抱えるなど、国内ユーザのグローバル化は進んでいる。
国内拠点と海外拠点の連携、海外拠点同士の連携については、国際本部、営業本部が中心となって進めている。また、海外拠点増に伴い、現地のユーザも増えてきたので、海外でのニーズにも応えていく。子会社に関しては、当社とのシナジー効果、子会社間の協力体制を強化していく」

 —カーボンニュートラルへの取り組みについては?
「脱炭素社会にどう貢献していくか、社内で議論しているところだ。昨年12月に、企業や団体に対し、気候変動関連リスクや機会に関して「ガバナンス」「戦略」「リスクマネジメント」「指標と目標」について開示することを推奨する、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同した。今年4月の東京証券取引所再編で、当社はプライム市場の区分となった。欧米では社会性のある活動に取り組む企業は、利益率、成長率も高いとみられ、とくに外国人投資家は、企業の収益のほかにも、SDGsや気候変動への対応・活動も注視している。当社もプライム市場銘柄として、気候変動、ESG(環境・社会・ガバナンス)、SDGs、カーボンニュートラルに、長期的な目標を持って取り組み、収益増を念頭に置きながら、社会の役に立つことを意識し、企業価値を上げていきたい」

 —御社の最重要課題は?
「電線業界が目指す、取引適正化ガイドラインに沿って、当社独自の経営方針を発展させ、ユーザの支持をさらに増やしていく。従来のビジネスを踏襲する場面もあれば、変えていく場面もあるだろう。いずれにしても、ユーザからの支持があってこそだ。ユーザの声を意識しながら、『泉州ファン』を増やしていきたい」

電線新聞 4288号掲載