電線メーカー 工場訪問レビュー 西日本電線・大分事業所

アルミ配電線全国シェア約50%
自動化やDX化で生産現場改革


西日本電線の大分事業所は、同社の事業基盤とも言える「ケーブル事業」及び「光機器システム事業」の製品群を製造する主力工場だ。本社を含めて建物は約6万1千平米と、同社の住宅配線ユニット専用工場の挾間事業所との単純比較では約20倍弱の規模を誇る。フジクラグループ屈指の主力工場を訪問した。


大分事業所は、電力・通信ケーブルに被覆線・裸線を合わせた銅ケーブルや、配電線中心のアルミ線および光ケーブルの生産能力はフジクラグループ屈指だ。
その中で18年にフジクラグループにおいて品質管理の不適切事案が発生し、JIS・ISO規格認証が一時停止されるなど同事業所にも激震が走った。しかし、親会社を含む原因分析および再発防止への取り組みが即時行われ、また客先でも品質に問題がないことを確認し、19年に終結を宣言している。同事業所では、この事案を風化させないために、社内報や朝礼で品質維持やコンプライアンス遵守について逐次言及し、毎年1回はフジクラグループ全体でeラーニング研修するようにしている。さらに、品質保証部が社長直轄となり、事業部門から明確に分離することで牽制の効く体制としている。
同事業所で生産される主な製品は、「ケーブル事業」の製品群では、600V低圧から33高圧までのパワーケーブルとコントロールケーブル、各種メタル通信ケーブル、各種難燃ケーブル(IEEE383)、アルミ電線・ケーブル。特に、アルミ電線・ケーブルは九州電力の意向を受けて昭和40年代よりACSR—OC(アルミのOC=屋外用配電線)やCVを製造し、電力事業者向けアルミ配電線のシェアは今や全国で約半分を占める。アルミ配電線は事業者によって耐風圧基準が異なることが多く、特に西日本エリアや日本海側エリアでは強風に強い形状が求められるが、同事業所では各々の規格に適応した多様な仕様にも対応している。

アルミ配電線 専用工場で一貫製造

同社は低コストで軽量であるアルミ化が一段と進むとみて、アルミ配電線・ケーブルの拡販に注力している。アルミ配電線は同事業所内の専用工場で、伸線、撚線、絶縁押出、をひとつに集約して一貫製造している。人や物の移動距離を最小化した設備配置の専用工場は多能工化の促進や高品質の確保を可能にしている。また、絶縁押出機は自社開発したIoTを活用したデジタル制御を進めて、「品種ごとに作成した製造レシピにより、工程負荷組指令からの製造レシピの自動取り込み、押出開始後の形状、外径の自動制御、品質データの自動取り込みにより、段取り時間の短縮やエラー防止、監視業務の省略を可能とした、自動スタート、自動停止の製造ラインである。このアルミ工場をモデルとして自社開発したデジタル技術は、現在、銅工場への水平展開を推進している」と同社は語っている。
「光機器システム事業」の製品群では、光ケーブルの他、コネクタ付き光コード/ケーブル、電子機器用アセンブリ、鉄道車両用(メタル)ハーネス等を生産している。コネクタ付光コード/ケーブルはマニュファクチャリングで、いかにコストを抑えるかが重要になる。同事業所の光専用工場では、ストックされた光ケーブルを、可能な限り自動化やロボットを活用してコネクタ付けすることで、生産コスト節減に努めている。光コネクタ付きコード/ケーブルの一部は親会社のOEM品としてフジクラブランドで納入されている。同工場では搬送用にAGVを導入することで、従業員は組立作業に集中できるような配慮も行われている。
コネクタ加工の全作業台にはタブレットが配置され、常に進捗管理が行われている。また加工工程にはロボットや自動加工機を複数導入し、生産性の効率化を図っている。
このような自動化によって手の空いた従業員は他部門の応援へ回り、多能工化へのサイクルへとつながっている。
19年度以降グループ全体が緊縮財政を前提とする事業再生を余儀なくされた。しかし、西日本電線では、大型設備投資が出来ずとも、ロボットを活用した自動化や自社開発設備のDX化、地道なVEなど着々と時代に即した独自の生産現場改革を進めているようだ。

電線新聞 4301号掲載