全国の高校・高専・専門学校の学生を対象に行われている「ロボットアイデア甲子園!2022」の全国大会が、先月28日に大阪市北区の大阪工業大学梅田キャンパス常翔ホールにて3年ぶりに開催された。同大会では全国各地(21カ所)で予選が開催され、既に各地区予選最優秀者25名が選出されていた。今回の全国大会では、1次審査として各自80秒のポスタープレゼンテーションによって10名を選抜、その10名によって各自5分の最終プレゼンが行われた。主催は日本ロボット工業会FA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)で、後援は経済産業省。全国大会協賛として川崎重工業、KUKAジャパン、ファナック、三菱電機、安川電機等大手ロボットメーカー9社、全国大会一般協賛として住友重機械工業、東京海上日動火災保険、四国銀行、三洲電線、特電など12社、地方大会協賛はデンソー、東日本電信電話、日本生命保険、三井住友銀行など117社、電線業界からも前述の三洲電線ほか光昭、OKI電線が参加した。
最優秀賞に選出されたのは、「産業用ロボット共通化インターフェースGrippy」と「プログラムストアRobotStore」を提案した東京地区代表・茨城県立つくば工科高等学校二年の押木秀隠さん。Grippyはアームロボットとハンドをジョイントする器具で、最大の特長は別メーカーのロボットやハンドでも接続することができる幅広い互換性にある。さらに、各メーカーの製造したロボットを汎用化するためにSIerが統一ソフトウェアを製作、そのソフトウェアを販売するためのネットストアがRobotStoreだ。押木さんの提案の根幹にあるのは「ロボットをもっと身近にするために、低コスト化と汎用化を」という思想で、競争と差別化を続けることで世界のロボット出荷数トップシェアを占めるに至った日本のロボットメーカー、ひいては審査員席に強烈なメッセージを投げ掛けることとなった。審査員の一人からは「彼の提案内容に、審査員室は大きく揺れた。賛否が割れたという意味ではなく、各ロボットメーカーが『今後、我々は競争から汎用化の方向へ進まなければならない』と腹を括ったかのように見えた」という声が聞かれた。準優秀賞に選出されたのは浜辺のゴミを処理するカニ型ロボット「ビーチクラブン」を提案した東北地区代表・福島県立二本松工業高等学校の菊地和奏さん。上位入賞者2名に関しては、「プレゼンの巧みさが際立っていた」との審査員のコメントがあった。
審査委員長の東京大学名誉教授・SIer協会参与の佐藤知正氏は「今回は若い人達の凄さを感じた。特に、最優秀賞はあまりの深い考察に質問さえできなかった。今回の参加者は皆自信を持っていただきたい。また、世の中は常に進歩しているので、慢心せずに新しいことを一生考え続けてほしい。深く考えることで行き着く本質は様々な分野に通じるし、人間の脳は進化することができる。そのきっかけとして、今日の経験を大切にしていただきたい」と総評を述べた。また、閉会の挨拶に立ったSIer協会副会長・HCI社長の奥山浩司氏は「今後の大会は地方予選47都道府県開催を目指していく。また、23年度の全国大会は12月の国際ロボット展内の開催が決定している」と発表した。