エフ・エー電子 極細線用精密圧延装置を開発

ノンスリップ伸線と併せクリアな品質
医療用特殊電線の需要狙う

設備装置ベンダのエフ・エー電子は、6月21〜23日に開催された「第28回機械要素技術展」に出展した。今年度末の上市に向けて開発中の極細線用精密圧延装置を展示し、動態デモを行った。

このシステムには、同社の独自技術である張力・速度制御技術から生まれた多機能張力・速度コントローラ「DTC—3000A」が使われている。これにより、圧延ローラーのすき間を高精度に制御し、繰り出し・巻き取り・圧延の一連の動作を一定の張力で行うため、高精度な圧延を安定して実現する。

同機は、①安定したバックテンションコントロールによって、圧延後の製品寸法のばらつきや蛇行を抑制する。㈪動作時に厚みを実測しながらフィードバック制御する(従来は手動で行っていた)。②平角線のきれいなボビントラバースが可能。③低テンションコントロールが可能で、さまざまな極細線に利用できる。また、1分あたり最大100mの速度と厚み10µmを実現している。

同社営業技術部の宮谷直希課長によれば、ロボットやボンディングワイヤーなどの需要に加えて、ターゲットとして注力するマーケットは、近年超極細線の医療用ブレードやコイリングなどの需要が高まっている、医療業界である。低侵襲医療のジャンルにおいて、従来の技術では対応が難しかった、ステントやカテーテルなどの医療用特殊電線の需要に応えていくという。

また、ブースでは同時に50µm〜10µm対応の1フレームタイプ極細金属線用ノンスリップ型伸線機「D3ULTUF—10DS」も展示された。こちらは1筐体で完結する省スペースモデルで、医療やフード業界のクリーンルームなど、スペースに限りがある生産現場においても容易に設置が可能。また、電源をつなぐだけで簡単に設置できるため、セットアップが不要となり、海外出荷にも向いている。

同機は個別駆動される各キャプスタンにセンサを設置、超高速で超高精度な制御を行い、完全な同期運転によるキャプスタンの完全ノンスリップ駆動を実現している。スリップ型または低スリップ型の伸線機と従来型の圧延機の組み合わせでは、伸線工程でついた傷やねじれが後工程の圧延加工で拡大するリスクがあるが、同社の完全ノンスリップ型伸線機と極細線用精密圧延装置の組み合わせにより、傷がないクリアな面の平角線を作り出すことが可能だ。

ノンスリップ型伸線機シリーズは同機以外に、3フレームモデルで100µm〜30µm対応の「D3ULTF—10DT」、50µm〜10µm対応の「D3ULTUF—10DT」がラインナップされており、国内やアジア市場で販売実績を積み、好評を博している。宮谷課長によると、今後のグローバル戦略としては、同社の優れた技術力を欧州マーケットへアピールし、拡販に注力していく。

電線新聞 4323号掲載