LED照明特集

平成から令和に元号も変わり、世の中はいろいろな面で変化してきている。
LED照明も普及し始め10年以上が経過し次の10年に向け変化を示してきている。我が国の照明市場はほぼLED化が進み2009年以降、LED照明器具の出荷台数は右肩上がりで増加し、2019年度の照明器具の出荷台数におけるSSL化率は99%を超えているが、昨年対比で出荷量、価格ともマイナスに転じてきていることも事実である。
LED市場を取り巻く環境は、紫励起のLEDの登場、レーザーLEDの製品化や、異業種との協業など変化が大きく表れてきている。今後、LED照明はどう進んでいくのか。LED照明業界を展望する。


我が国ではLED照明が普及し始めた頃と時を同じくして東日本大震災という未曽有の経験をし、原子力発電所の事故も重なり、電力事情が悪化、消費者の省エネルギー思考の向上などもあり世界でも類を見ないスピードでLED照明化が進展した。2017年度末でストック市場におけるSSL化率はおよそ34%といわれているが、日本照明工業会では2030年に国内照明市場におけるSSL化率100%を目指し消費電力量の60%削減を目標とするとしている。

照明器具市場を住宅分野、非住宅分野と分けてみると、住宅分野では新築住宅ではLED化はほぼ100%と見てよいが、一方で年々空き家などが増え現在、およそ900万戸も空家があり、毎年およそ50万戸ずつ増え続けていくという。この手つかずのストック需要を考えると住宅でのLED照明の普及率100%とはそう簡単なものではない。

一方、非住宅分野の照明は設備投資が困難な中小規模店舗やアパート、マンション、賃貸住宅、賃貸オフィスなどの賃貸施設のリニュアル活性化のために、業界挙げての普及啓発活動ももちろんであるが、政府、自治体などの補助金や税制優遇などの支援策が必要となろう。ネット販売が当たり前になり、若者世代は実店舗に出向く事もなく手軽に製品を購入し、アパレルなどでは旗艦店以外は実店舗の必要がなくなり物販店舗への照明器具需要が減っているという。大型店なども含め、10年程前のLED黎明期に誕生した店舗もそろそろリニューアル時期となり需要も期待できるが、物販店などの撤退もあり期待通りには需要がないかも分からない。

飲食、サービス業やホテルなどはインバウンド需要もあり物販ほどは冷え込んではいないようだが、先の日韓関係の悪化や、新型コロナウイルスの感染問題など外的要因に左右されることも多く、今後の展開に注目する必要がある。
工場や倉庫、道路、橋梁、トンネルなどは水銀灯からの置き換え需要があり少しは期待できる可能性があるようだが、マーケットへの参入企業も多く価格競争になるのは必然だろう。

LED照明は誕生当初は高効率化させることが主眼だったが、いまではコモディティ化が進み高率や長寿命だけでは製品の優位性を保てなくなった。
調光・調色、高演色など効率以外の部分でも性能が向上し、各社が新製品を続々と生み出しては来たが、すでに、調光・調色・高演色は当たり前になりこれも製品の優位性を保てなくなった。調光・調色機能により、人の生体リズムにあわせたあかりを作り出す事は古くから言われては来たがLED照明が登場し、色温度や明るさを自由に変えることが安易になったものの、青色LEDと黄色蛍光体の組み合わせではすべてのスペクトルが揃わず太陽光に比べ不自然なことは否めない。

より自然光に近い光をと開発された紫励起のLEDは赤・橙・黄・緑・菁・藍・紫のすべてのスペクトルを含みより自然光に近くなる。これを応用して、アメリカのSORAA社、韓国のソウル半導体などに続き日本の京セラも製品化を行い健康・ウエルネスをキーワードにした製品が今後生まれてくる可能性が高くなった。

最近は新卒の就職内定率も上がり、優秀な学生は多数の内定を得て、企業を選ぶ学生売り手市場になっている。「リクルート対策」や政府の「働き方改革」もありオフィスのデザインも様変わりし、オフィス照明も従来の照明とは全く違う照明手法が採用されはじめ、いままでの施設照明とは一線を画し、インテリアを得意とする照明メーカーにも参入の機会が出てきたようだ。

調査情報会社の富士経済によると、2018年度に6260億円あった日本の国内照明製品市場売上げは2025年には5497億円に、また2018年に1946億円あった日本国内の光源市場売上げは1233億円にそれぞれ減少し、成長局面から成熟局面へと予測している。
そのような国内市場の動向の中で、国内の照明制御・ソリューション・IoT化市場は継続的な成長が見込まれ、2018年に1111億円であった市場は2025年には1956億円になるだろうと予測している。

世界に目を向けると世界市場はLED化と人口・経済成長などが成長ドライバとなり、2018年8兆1141億円であった世界の照明器具市場は2025年には10兆4826億円に膨らむが、光源は照明器具とも一体化も進み、2018年2兆1909億円であったが2025年には1兆9516億円と予測している。今後はZEHやHEMSにも対応した照明器具のさらなる開発や人工知能AIによる照明制御や最適な照明設定、IoTにつながり各種情報とリンクした照明設定などより高度な人にとってより豊かな生活が享受できるような、照明器具の開発も大いに期待される。

照明器具メーカーと素子メーカー、あるいは蛍光体メーカー、実装メーカーなどとの協業も従来光源メーカーと照明器具メーカーという関係とは違った形で展開されていく点にも注視していきたい。

新たなLED照明の技術として、レーザーLEDの実用化の兆しが見えてきた。まずは自動車のヘッドライトとして1Km先までグレアもなく明るく照らすことができるヘッドライトが米国などで実用化されている。今後は高照度が要求されるアリーナ照明や高天井などへ展開されるだろうし、視点を変えれば配光制御が容易なため店舗や住宅用の超小型ダウンライトへの展開や防災用の懐中電灯への応用の可能性など考えられ現在のLED照明よりはるかにポテンシャルが高いと思われる。

将来的にはWi-Fiを凌駕するかもしれない可視光通信Li-Fi(Light Fidelity)はマイクロチップを照明器具に取り付けるだけでLEDの可視光を使って高速通信が可能になる。すでに自動車のヘッドライトに組み込まれ車・車間通信の研究も進められているという。広く普及させるためには国際標準化規格など必須となるがLEDで先行している我が国のLED関係者がリーダーシップを取って欲しいところだ。

また、植物育成、医療、などLEDの用途開発も進み、新たにLED照明とスピーカー、カメラ、センサーなど他の用途のものとの組み合わせなど照明器具メーカー以外がLED照明分野に進出するなど業種のボーダレス化も進んでいる。

現在は、LED照明普及期のように海外メーカーも含め雨後の竹の子のごとく、LED照明に参入はしてきてはいないが、他業種、異業種など想像もつかないところから、LED照明が市場に出てきてもおかしくない時代になった。反対にLED照明器具メーカーが全く違う市場で活躍するかもわからない。その各メーカーの可能性やポテンシャルに期待したいところだ。