データセンターEXPO 冷却技術で各社しのぎ 富士通は水冷でリアルタイム監視

 「Japan IT Week秋」(主催:RX Japan)が10月22〜24日の3日間、千葉県千葉市の幕張メッセで開催され、2万6604人が来場し、大盛況の会期となった。構成展の「第2回データセンターEXPO」では、各社がDC内やサーバラックの冷却技術を披露した。

 DCの電力需要は供給を上回るほど増加し、消費電力の削減は社会課題の1つとなっている。従来の空冷方式に代わり、より冷却効率の高い水冷方式が注目されている。

 スーパーコンピュータの京や富岳への導入実績を誇る富士通は、40年以上培ってきた水冷ハードウェア技術に加えて、新たに開発したDC向け冷却ソリューション「富士通・リキッド クーリング マネジメント フォー DC」を提案した。

 このサービスは、独自に開発した専用ソフトウェアで、水冷サーバの状態をリアルタイムで監視しながら、複数台のCDU(水冷装置)を仮想化する。1台として統合管理することで、サーバ全体の発熱量に応じた最適な冷却能力を提供する。水冷装置の消費電力を削減し、DC全体のエネルギー使用効率を、従来のボイラー方式比で最大40%向上できる見込みだ。

日東工業のRei Rack

 同製品は、省スペース・省施工に加え、52㏈の静音性が最大の特長で、空調機がない工場やオフィス、空調機が増設できないテナントビルに最適だ。ラック下部のクーラーから送風される冷気を、サーバの背面に向けて効率よく循環させることで、高い冷却効果を実現する。ノンドレン方式を採用したため、ドレン水の排水処理は不要だ。発売後は、首都圏の設計事務所や法律事務所から引き合いが多いという。

 3種の冷却方式 展示されていたのはオープンループ水冷で、サーバの熱によって高温になった液体を、CDUを介してサーバ外部の冷却塔や冷水装置に運んで冷却する。液体を使ってサーバの熱を建物の外まで運ぶため、ラック内ではサーバを高密度に実装することが可能だ。システムを停止させないために、すべてのユニットの冗長化も実現している。

 同社は、顧客のDC計画段階からのコンサルティング、導入設計、工事、保守までワンストップで支援し、ハードウェア・ソフトウェアは、初期投資費用を抑えられるサブスクリプション型で提供する。

 日東工業は、クーラー実装型ラック「Rei Rack(冷ラック)」を出展した。ラックに空冷による冷却機能が実装され、オールインワンでIT機器の発熱問題を解決する。

 鎌倉製作所は、開発中のハイブリッド空調機「AirX」をコンセプト展示した。

 同製品は、コンテナ型DC専用で、地下水などを使った冷水、冷媒を使った直膨コイル、屋外の空気を使った外気、の3方式で空調を冷却する。冬は外気、夏は直膨と地下水など、季節や外気温に合わせ冷却方式を切り替え、電力負荷を大幅に低減する。地域や外気温によるが、消費電力は冬期3kW、中間期5kW、夏期15kWで、試算では従来の空冷方式と比較して約50%削減する。

 同社は産業用換気装置のトップメーカーで、空調の経験・技術に、近年開発した地下水を使った空調システム「COOLEX」を応用した。同社によると、コンテナ型DCを完全自社設計するゲットワークスと実証実験を重ね、来年4月に生産開始するという。

電線新聞 4413号掲載