人工知能が人間の頭脳を超えた!?
2029年の話である。1984年製作のアメリカ映画「ターミネーター」は、人類とAIとの戦争を描いた近未来SFだ。サイエンスフィクション、つまり空想科学の物語。人間がつくり出した機械やシステムが自我を持ち、人間に反旗を翻す――。果たして、本当にフィクションなのだろうか? そんな映画みたいな話は、起こり得ないのだろうか? Hanson Robotics社が開発したAI搭載のヒト型ロボット「Sophia(ソフィア)」が、「人類を滅ぼす」と発言したのは記憶に新しい。
2016年3月、囲碁の世界では、それが現実のものとなった。
GoogleグループのGoogle DeepMind社が開発したAIシステム「AlphaGo(アルファ碁)」がプロ囲碁棋士のイ・セドル氏と対戦した結果、アルファ碁が勝利したのだ。人類を滅ぼすつもりはないだろうが、5戦して4勝1敗という圧勝である。
このニュースが、一般の人はもちろん囲碁棋士界やIT業界にも大きなインパクトを与えたのは、着手数の多い囲碁でAIが勝つなんて10年早いと思われていたことに加えて、AIが過去のデータを駆使して勝ったのではないという点にあるらしい。人工知能が、名人や解説者も考えつかないような戦術を、常識を覆すような一手を繰り出して勝利したことが衝撃的だったのだ。
私たちの暮らしはAIに包囲されている!?
最近よく耳にするAI(Artificial Intelligence)とは、ご存じの通り、人工知能のことだ。詳しくは専門家に聞いていただきたいが、ごく簡単に説明すると、人間に代わってコンピューターに知的行動をさせるための研究と技術である、らしい。やはりターミネーターか、はたまた鉄腕アトムか、機動戦士ガンダムか? いや、AIは今さまざまな分野に導入され、そして実社会で活用され始めている。
身近な例を挙げれば、私たちに代わって小まめに働いてくれる「Roomba(ルンバ)」などのロボット掃除機、ときにはイタズラだってするらしいソニーの犬型ロボット「aibo(アイボ)」、すでに多くの企業で利用されているソフトバンクロボティクスの感情認識ヒューマノイドロボット「Pepper(ペッパー)」、〝アレクサ〟を家族全員が質問攻めにするCMでおなじみの「amazon echo(エコー)」など。これらのすべてにAIが搭載されている。ちなみに、AI=ロボットというわけではない。
わが社の人事担当はAIです
ビジネス社会に目を向けると、最近の企業は人事担当がAIらしい。学生の就職活動において、一次選考であるエントリーシートをAIで評価する企業が増えているのだ。AIに過去のエントリーシートと選考結果を学習させ、その企業独自の選考基準を持たせるという。さらに近頃は、面接官もAIらしい。採用面接の評価もできるのだ。このような人事業務などの新たな改善技術を、Human Resource(人的資源)+ テクノロジーの造語で「HRテック」という。省力化やスピード化、正確性など、企業にとってはメリットが多いのだろうが、マッチした新入社員が企業のロボットばかりになりそうで、少し心配だ。
婚活もAIの時代
マッチングといえば、婚活もAIでする時代だ。従来の婚活アプリなどは、年齢や居住地、学歴、年収、趣味、そして写真などの情報を元に、好みの異性を絞り込んでいくのが一般的といえる。近所の面倒見の良いおばさんが「あなたにピッタリの人がいるのよ~」などとおせっかいをやいてくれた時代から比べれば、活動としては格段の進歩だが、今はもっと進んでいる。例えば、国内最大級の恋愛・婚活マッチングサービス「Pairs(ペアーズ)」はAIを導入しているそうだ。インプットされた各種の情報はもちろん、ログイン時間から生活スタイルなども分析して、共通点の多い異性を抽出することができるのだとか。ある意味、とてもおせっかいだ。
そのほかにも、インターネットの検索エンジンやスマートフォンの音声応答アプリであるAppleの「Siri(シリ)」、人間を感知するエアコン、顔を認識するデジカメ、コールセンターなどでオペレーターをサポートするシステム、車の自動運転、災害救助ロボットなどなど。私たちの生活に身近ではないところまで含めれば、おそらくキリがないだろう。
電材・電工業界とAI
2018年の「ジャンボびっくり見本市」では、「労働生産性の向上」と題したテーマゾーンを展開した。少子高齢化・人口減少社会が急速に進展するわが国では、人手不足や後継者不足が深刻な問題であり、電材・電工業界も例外ではない。人材確保とともに生産性の向上は、最も重要な課題の一つである。そこで、ジャンボびっくり見本市では「生産の省人化」と「施工の省人化」にスポットを当て、人間の補助および生産性の改善につながる自動搬送装置「AGV」や協働ロボットなどを展示し、業界の新たな方向性を示した。
人間をサポートするべく研究・開発が続けられているAIだが、場合によっては、私たちの敵となる可能性もある。AIに取って代わられる職業が出てくるからだ。昨今、AIの進化によって将来なくなる仕事、生き残る仕事が各方面で取り沙汰されており、人間は戦々恐々としている。素人なりに解釈すると、柔軟性や応用力、視覚と手技の協調、思いやりや共感、芸術的な感性などが必要とされる仕事は、今後も生き残る可能性が高いようだ。アメリカのデータだが「ダイヤモンド・オンライン」に掲載されていた「機械が奪う職業・仕事ランキング」によると、3位が一般事務員、2位が会計士、1位が小売店販売員という結果だ。ちなみに電気工事士は、なくなりにくい仕事のようである。AIを味方として、良きライバルとして、仕事の生産性や安全性などを高めていきたいものだ。