電工さんの工具箱  第37回「空冷服」熱中症対策の新定番。

日本が亜熱帯の国になる⁉︎

背広にネクタイ? タイトスカートにハイヒール? 信じられなーい。今はみんなTシャツに短パンにビーチサンダルでしょ。えっ、熱いお茶が飲みたい? 冷たいトロピカルジュースでも飲めばぁ。残業? 暑くてやってらんねー(笑)。
とまあ、こんな時代がやってくるかもしれない。このままだと日本は亜熱帯の国になるらしい。“このまま”というのは、地球温暖化などによる気温上昇が続けば、という意味だ。ちなみに冒頭のつまらない小ネタは、亜熱帯化した日本における新人女性社員と古株のおじさん社員との会話である。亜熱帯地域の人がこんなイメージなのではない。ともあれ、「ニッポンが亜熱帯⁉︎ なんだか楽しそうじゃん!」なんて思ったら大間違いじゃん。

21世紀末の夏は全国各地で40℃超え⁉︎

気象庁によると、わが国の年間平均気温はさまざまな変動を繰り返しながら上昇していて、長期的には100年あたり1.28℃の割合で上昇。特に1990年代以降、高温となる年が頻出しているという。たったの1.28℃かと、あなどってはいけない。日本の気温上昇値は世界の平均値を上回っており、2100年末には6.4℃上昇するといった予測もあるようだ。専門家ではないので確かなことはいえないが、そうなると夏など40℃超えが当たり前になり、熱中症の危険性は高まり、異常気象や自然災害が増え、生態系が崩れて多様な生物や農作物などに悪影響が出るのだろう。南国のリゾートへ遊びに行くのとは訳がちがう。四季とともに暮らしてきた日本の風習や文化が失われてしまうかもしれない。もちろん、そうした現象は日本に止まらないはずだ。地球規模の問題である。

こまめに水分補給を

思えば、高度経済成長期の真っただ中にあった昭和40(1965)年頃、自動車(Car)、カラーテレビ(Color Television)、クーラー(Cooler)の3Cが「新三種の神器」と呼ばれていた。つい50年ほど前はクーラー、つまり冷房機は庶民の憧れの的だったのだ。では、それまでの夏はどうしていたかというと、扇風機やうちわ、行水、打ち水、風鈴などで暑さをしのいでいた。クールビズなんてなかったし、子どもたちは炎天下で紫外線を浴びまくっていたし、体育の授業や部活でも水を飲んではいけなかった。喉の渇きなど根性で克服するのだ。現代の暑さより少しはマシだったかもしれないが、それにしても昭和、恐るべしである。
そんな時代から半世紀が経った今、家庭はもちろん、ほとんどすべての建物にエアコンが完備され、屋内は快適になった。が、コンクリートで固められた街はヒートアイランドと化し、夏の猛暑は殺人的とまでいわれている。職場での熱中症も増えているようだ。屋外や蒸し風呂のような屋内で作業をする人は特に注意して、こまめに水分補給することを忘れないでほしい。

スタイル豊富な空冷服

キーポイント 空冷服フルハーネス対応ベスト

いわゆるファン付き作業服は、すっかり定着した感がある。空調服と呼ばれることが多いようだが、その名称は登録商標なので、ここでは空冷服と称する。
空冷服はご存じの通り、上着に小型のファン(送風機)が取り付けられた画期的な作業服だ。通常、ウエアとファンとバッテリーで構成され、ファンが電動で回って服の中に風を起こし、汗を気化させて涼しさを生み出すという仕組み。簡単にいえば、服に扇風機が付いていて涼しい~のだ。一度着たらもう、ぬぎたくなくなるかもしれない。
一口に作業服といっても種類は豊富で、スタイルとしてはベスト、半袖、長袖はもちろん、ツナギタイプ、レインスーツタイプ、警備員タイプや白衣タイプなど、ワークスタイルに合わせた各種のウエアがあり、フルハーネス対応や難燃性など機能性も豊富。カラーもデザインもバラエティー豊かで、一昔前の作業服のイメージではなく、おしゃれなワークウエアという印象だ。近頃はキャンプや釣りなどのアウトドアレジャー、屋外でのイベントやスポーツ観戦など、多彩なシーンで活躍するカジュアルウエアとしても人気なのだ。
暑い現場で仕事をする人の必須アイテムとなった空冷服。21世紀末は、エアコン付きの作業服が登場しているかもしれない。