電工さんの工具箱 第11回「ペンチ」現場作業の基本アイテム。

  1. ペンチの種類は多種多様

最近の若い人は知っているだろうか? うそをつくと、地獄の閻魔大王(えんま)に舌を引き抜かれるということを――。

うわさでは、閻魔様は大きなヤットコを手に、鬼の形相で罪人の舌を引き抜くらしい。うそつきは二枚舌というが、やはり、うそはつかないほうがいいようだ。

ヤットコとは本来、針金や板金、鍛造材料などを挟む鉄製の工具である。

ペンチと同じような造りで、ペンチの一種に数えられたりもする。物を切断する機能はない。ちなみに、大工道具としてよく用いられる釘抜きにもヤットコ型のものがあるが、その名称は「エンマ」という。やはり、うわさは本当なのだ。

さて、ご存じの通りペンチは、物を挟んで切ったり、曲げたり、回したりする工具であり、電気工事士の七つ道具の一つといえる。一口にペンチといっても種類は豊富で、代表的なものとしては、先端が長く、細かい作業に適したラジオペンチ、先端が短く、切ることに特化したニッパー、口の開く範囲が変えられ、いろんな物を挟めるプライヤー、そして、最もオーソドックスかつポピュラーなのが電工ペンチだ。

ラジオペンチ

株式会社マーベル:MA-500-150 ラジオペンチ

ニッパー

ジェフコム株式会社:電工プロニッパー(圧着付・薄刃タイプ)

プライヤー

ジェフコム株式会社:寸切りポンプラ

電工ペンチ

株式会社マーベル:MC-1050-200 ペンチ

電工ペンチは単にペンチとも呼ばれ、一般家庭の工具箱にも入っているタイプ。その存在感は、工具箱の主と呼んでいいかもしれない。(※電線と端子を圧縮接合する圧着ペンチも電工ペンチと呼ばれる。)

ちなみに、ペンチは和製英語であり、その語源は、つまむ、挟むといった意味を持つ英語のPinch(ピンチ)とされる。では、ペンチを英語で何と呼ぶかといえば、pliers(プライヤー)だ。また、ニッパーも和製英語だそう。

数多くのメーカーが製造・販売

電気工事の際には電線の被覆むきや切断・加工、ネジやナットを回したり、バリ取りや、ときにはハンマーとしても使えるペンチ。一般家庭でもいざというとき頼りになる、汎用性のある工具だけに、多くのメーカーが製造・販売している。たとえば、フジ矢、ジェフコム、マーベル、スリーピークス技研、京都機械工具、宮本鉄工などなど。海外メーカーではアメリカのKLEIN TOOLS(クラインツールズ)やドイツのKNIPEX(クニペックス)などが人気のようだ。
先端のギザギザの部分で物をつかみ、奥の刃の部分で物を切るという、基本的な機能や形状は不変でも、扱いやすさ、握りやすさ、切れ味、耐久性、軽量化、小型化、付加機能の追求など、各メーカーが創意工夫を凝らした新製品が次々に登場している。一見同じようでも、すべて違うのだ。

好みや感触も人それぞれだから、いろいろ試して、自分に最適な1本を探してみるのもいいだろう。