2021年度グッドデザイン賞 おもな受賞製品

先日発表された2021年度グッドデザイン賞では、1600件以上が選出された。今回、各社受賞製品のなかから、一部抜粋して紹介する。

パナソニック

純水素型燃料電池
SmartArchi Broad Washer シリーズ

バイオシャドー 

■純水素型燃料電池「FC-5KLR1HS」(ベスト100選出)

発電時にCO2を出さずに水素だけで発電可能な純水素型燃料電池。単独設置に加え複数台を連結して設置することで、ビル屋上等の限られたスペースを活用した発電や大規模発電など幅広い用途に柔軟に対応する。

【デザインのポイント】

①建材でも多く使用されるアルミの押し出し工法を採用することにより建築物との高い親和性を実現

②正面パネルには加工過程で燃料となる副生水素を発生するアルミを使用

③縦ローレットのデザインは屋外での防汚性に優れサイズ拡張性も高い

【評価】
近年、カーボンニュートラル社会実現への関心が急速に高まっているが、個別的な取組みだけでなく、社会全体のエネルギー供給システムを見直さなければ大幅な改善は困難である。受賞製品はその具体的な取組みとして高く評価できる。実際に定着させる過程では燃料の供給体制などの課題が予想されるが、それでも水素による燃料電池発電を導入できる現実的な製品が提案されたことは、今後の社会に向けた価値ある提案として期待したい。

■屋外向け照明器具「SmartArchi Broad Washerシリーズ」

導光板技術を用いた「まぶしくないのに明るい」を実現する革新的な屋外低位置照明。夜間の通路では暗がりだけでなく、眩しさも歩行者の事故要因となる。従来の屋外照明は「明るい=まぶしい」というジレンマがあったが、独自の導光技術で両立を実現する。

【デザインのポイント】

①独自の導光板技術:高精度マイクロレンズが上方光を抑え安心して歩道を歩けるワイド配光を実現

②景観への調和:導光板形状を活かした薄型デザインが器具の存在感を軽減し昼夜問わず景観に調和

③使い方に応じたアイテム展開:庭園灯だけでなく適材適所の展開を行い統一したデザインで良質な設計が可能

【評価】
日本は超高齢社会を迎えたことで、夜間通路での高齢者の事故要因は暗がりだけでなくまぶしさも一因であるということが判ってきた。受賞製品は、導光板による配光設計により直接見える光と足元を照らす光を分光させ「まぶしくないのに明るい」を実現させた。ランドスケープに配慮した薄くミニマルな造形と安全かつ上質な光の演出は、ユニバーサルな思想を持ったプロダクトとして高く評価した。

■プロジェクター照明「BioSHADOW(バイオシャドー)」

自然の情景を取り込み、居心地の良い空間を作る演出用のダウンライト型プロジェクター照明。木漏れ日や水面などのコンテンツを映し出し、心地よさを感じるような心理的効果をもたらす。陰影の移ろいと音による「自然を感じるあかり」がより豊かな暮らしを演出する。

【デザインのポイント】
①光の陰影と音で自然を再現しリラックスや開放感などの心理的効果をもたらす

②露出するプロジェクターではなく連灯しても空間に調和する埋込式ダウンライト型デザイン

③照明として美しい光のグラデーションと壁や床に映る光の形

【評価】
これまで、プロジェクターを用いたインスタレーションや建築と一体化した設備などで類似した表現手法はあったが、コンテンツも含めた単体製品としたことで新鮮な提案となっている。映像装置としてのプロジェクターではなく照明器具の発展形として位置付けることで、特殊な演出用ではなく多様な空間での活用が期待できる。用意されているコンテンツには、効果的な空間演出のための作り込みが感じられる。

アイホン

ディアリス

■集合住宅用インターホンシステム「ディアリス」

マンション用インターホンシステムの居室内親機とエントランス用の集合玄関機。受賞システムは通常のインターホン機能に加え外出先でのスマートフォンによる応対や宅配ボックス着荷通知、管理人との連絡等々、快適なマンションライフに寄与する機能を提供する。

【デザインのポイント】
①業界最薄形状とフェイスのフラット化により箱感を排除し空間へのフィット性を高めた

②大画面化による来客映像の視認性と操作UIのユーザービリティ向上をはかった

③集合玄関機はメカニカルな要素を極力抑えノイズレスな印象にしながらも外周のダイヤカットで質感を高めた
【評価】
集合玄関、住居内においてその空間への納まりを考慮したシンプルな造形と薄型化を実現している。また従来のインターホン機能の改善だけではなく、使用者が相手との応答プロセスの中での状況がわかる表示画面などを充実させて居住者・来客・管理室とのコミュニケーションツールとして再考している点を評価した。

コイズミ照明

arkia フットライト

■照明器具「arkiaフットライト」

輝度をおさえたミニマムデザインのフットライト。器具下面に発光部を配置することで人の目に入る光刺激を最大限低減させ、夜間の歩行に必要な照度は確保しつつも入眠を妨げない優しい光環境を作り出す。

【デザインのポイント】
①光刺激をおさえるため器具下面に発光部を設けた設計

②光の創出装置であることに徹し不要なディティールを全て削ぎ落したミニマムデザイン

③薄型化を追求しつつも光品質は妥協せずカットオフラインの出ない美しい光のグラデーションを実現

【評価】
住居空間において最低限の存在感とした主張の少ないフットライトであり、そのサイズ感やミニマルなフォルム・ディテールは高く評価出来る。肝心の光は敢えて暗い中での「道しるべ」程度に抑えられ、とても柔らかい印象で機能上過剰な光演出をしないという器具本体の存在感を抑えたのと同じく、ある意味で謙虚な一貫した姿勢を感じる点にも好感がわく。