センキュー! ミャクミャク

「かわいくない」「こわい」「キモい」と、さんざんないわれようだった誕生当初のミャクミャク。そう、大阪・関西万博の公式キャラクターです。一般公募で集まった1898作品の中から栄えある1位を獲得したデザインなのですが、未知の生物のようなその面貌は残念ながら子どもにも大人にも不評だったようで。
ところが、どうでしょう。万博が盛り上がるにつれて一転、ミャクミャクの人気も急上昇。子どもも大人も「かわいい!」といって一緒に写真を撮り、グッズを買い求め、万博の閉幕後もミャクミャク“ロス”が続く状況が生まれました。確かに、いつの間にか愛らしく見えてきたから不思議です。
閉幕日の夜には会場上空に巨大なミャクミャクが現れ、お別れのあいさつをすると、「Thank you!」といって静かに消えていきました。夜空を見上げながら涙した来場者も多かったようです。それほどリアルな演出でした。
この2025年の万博で初めてドローンショーを見たという人も大勢いるのではないでしょうか。
そもそもドローンってなに?
ドローンには国際的に統一された明確な定義はないそうですが、ごく簡単にいえば「無人航空機」のことを指します。
一般的に身近な存在になったのは近年という印象ですが、実は歴史は古く、ドローンを世界で初めて開発したのは1935(昭和10)年のイギリスとされています。目的は軍事利用。爆弾を搭載しようと考えたわけです。技術の変遷をたどればさらにさかのぼりますが、特に第一次世界大戦の終結後、各国が無人航空機の研究を行っていたようです。中でも一歩進んでいたイギリスがつくったのは対空射撃演習用の無人標的機で、機体名は「Queen Bee(クイーン ビー)」。「女王蜂」です。
そもそも「drone(ドローン)」とは「雄蜂」という意味で、その由来には幾つかの説がありますが、確かに「ブーン」という飛行音は蜂の羽音を思わせます。
飛ぶ鳥を落とす勢いのドローン⁉︎
現代のドローンは飛行性能が向上し、小型・軽量化、低価格化が進んだことで、用途の幅がまさに飛躍的に広がりました。空撮はもちろん、物資の輸送、農薬の散布、自然環境やインフラの点検・調査・測定、防災・防犯に関する監視や状況確認、そしてホビーとして楽しんだり、エンターテインメントの演出に用いられたりしています。大阪・関西万博で連夜開催されていたドローンショーには約1000機、閉幕日のフィナーレには約3000機ものドローンが使用されていたそうです。
ちなみに、ドローンの動力源は主にバッテリーで、リチウムポリマー電池やリチウムイオン電池が使われています。また、産業用などのドローンにはガソリンや水素燃料電池を利用したタイプもあります。
1600万色を表現するドローンShow!

ドローンショーとは、数十機から数千機のドローンを飛ばして夜空に文字や図形や絵を描き出す多彩な光のショーです。単なる静止画ではなく、小型機の編隊飛行によって滑らかな動きを演出します。しかも高輝度LEDを搭載しているため光が鮮明で、理論的には約1600万色もの表現が可能だそう。
数千機ものドローンが衝突することなく正確に飛行するのはテクノロジーの成せる技です。専用のソフトウエアを用いて位置、高度、飛行経路、光の点滅パターンなどを細かく設定し、音楽やセリフとも同期させるなど、事前のプログラミングによる自動操縦で一糸乱れる演出を実現します。
こう書くと簡単なようですが、実際にはもっと複雑な作業工程があり、仮想空間でシミュレーションも行うといいます。天候も考慮に入れなければなりませんし、国土交通省への飛行許可申請なども必要なため、企画から実施までには最低でも2~3カ月はかかるようです。
大阪・関西万博の感動的なフィナーレの演出は、やはり開幕前に決まっていたのでしょうか。そうだとしたら、ミャクミャクの人気ぶりだけは、きっと想定外だったはずです。








