レアアース再利用進む 中国に頼らない生産体制へ

 政府は今年1月に日本最東端の南鳥島沖(東京都小笠原村)でレアアースの試掘に着手した。高市早苗首相は6月末に開かれた「総合海洋政策本部」で、レアアース開発に関して、「産業規模での開発実証を速やかに進めることが必要」と述べ、経済安全保障の観点から開発に必要な体制を整備する考えを示している。

 中国による対日輸出規制の影響がレアアース(希土類)などの重要鉱物にも広く及んでいることが分かった。機械や化学などの日本企業の間では、品目によって手に入らない状況が続いており重要鉱物を巡る対日圧力は、規制開始から半年が経った今も収束する気配は見られない。

 7月の中国貿易統計によれば、レアアース4種類中、ジスプロシウムとテルビウムは1月以降、輸出が止まっている。また、レアアースの代表用途である磁石の状態でも輸出されてきたが、規制後は減少傾向にあり5月は前月比35%減(115トン)だった。

 三菱電機は信越化学工業とネオジウム磁石などのリサイクルを手掛けるエコアドバンス(埼玉県さいたま市)と組み、家庭用エアコンに使われるレアアース(希土類)磁石の循環リサイクルに乗り出した。国内で初の取り組みという。

再利用の効率化図る

 三菱電機によると、家電リサイクル法に基づいて、回収した家庭用エアコンの圧縮機(コンプレッサー)を分解してローター部品を取り出す。次いでエコアドバンスがローターからレアアース磁石を取り出し、信越化学がレアアース4元素(ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウム)を分離、精製し再資源化。再び三菱電機がレアアース磁石に作り直してエアコンに再利用するスキームだ。

 回収可能なレアアースは1台当たり数十グラムに上り、重量ベースで約35%を再利用品でカバーする計画で、業務用空調や自動車電装部品に使うレアアース磁石も視野に入れるという。この一連の流れを三菱電機が一貫して担い、レアアース磁石の再利用の円滑な循環と効率化の構築を目指す方針。

 レアアースなどの希少資源は採掘量に限りがあり、採掘時の環境負荷も大きい。これまで、ハイブリッド車(HV)やEVモーターからのレアアース磁石の回収は先行して進んできたが、家庭用空調製品からの回収は、部品分解の難しさやコストが要因で回収率も低く資源循環を進める上で課題とされていた。

 空調機器大手のダイキン工業も本紙などの取材に対し、来年から業務用エアコンについて同様の対応を始めるといい、年内にもAI(人工知能)技術を使いレアアース磁石を自動で分解し取り出す装置を開発する計画という。

 この取り組みでは、官民で中国に依存しないサプライチェーン(供給網)を築き、安定した生産体制を確立する狙いがある。レアアースは産業の「ビタミン」と呼ばれ、ネオジムやジスプロシウムはEVモーターや産業用ロボットの主原料としてハイテクや電化製品分野で幅広く使われる。しかし世界の生産量は中国が7割を占め、日本は輸入の6割以上を中国に依存しているのが実態だ。

電線業界も多角的に

 日本は官民挙げて調達網の多角化を急いでいるようだ。例えば、双日はオーストラリアの資源大手ライナス・レアアースと鉱山の新規開発に向け検討を開始することで合意した。また今年4月には経産省がフランスとレアアース供給などについ相互支援を確認した。フランスでは現在、レアアースのリサイクルなどが可能な精製工場の建設が進められており、ほぼ中国からの輸入に依存しているよりも希少な重希土類のジスプロシウムとテルビウムを生産する予定で、日本は将来的に国内需要の2割に当たる量をフランスから調達したい考えだ。

 電線各社でも素材技術を応用した新たな電力インフラの構築を加速させている。次世代エネルギーの鍵となる「高温超電導線材」の開発と製造ではフジクラが量産技術を確立し、

 次世代クリーンエネルギーである核融合炉向けに供給している。また、韓国のLS電線は、米国や韓国内にレアアース磁石の生産拠点を設けており、エネルギー安全保障を見据えた多角的な動きも散見される。

電線新聞 4439号掲載