9月に行われた「スマートエネルギーWEEK【秋】2026」では、「FUSION POWER WORLD―核融合発電ワールド―」が開催され、核融合発電(フュージョンエネルギー)に関わる30の組織・企業が出展し、最新技術や実現に向けた取り組みをアピールした。政府の戦略17分野にも選定されているフュージョンエネルギーの最新動向を追う。
フュージョンエネルギーの研究開発を振り返ると、大きな潮流となったのが1985年のジュネーブ・サミットだ。これを契機に国際協力が本格化し、ITER計画が始動。2005年には仏サン・ポール・レ・デュランスが建設地に決定した。
日本では1950年代から研究が始まっており、1960年代以降はトカマク型を中心に発展。2007年には日本と欧州が「幅広いアプローチ(BA)活動協定」を結び、ITERを支援・補完するJT―60SAの建設を開始した。
戦略17分野に選定
日本政府は2023年に策定した「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」で、同エネルギーを新たな産業創出の中核として示している。さらに、2026年7月に閣議決定された「日本成長戦略」では、戦略17分野にフュージョンエネルギーが選定された。
政府は2030年代に世界に先駆けて発電実証を実現することを掲げている。加えて、①世界のフュージョンエネルギー市場の約3割を中長期で獲得すること、②複数の主要コンポーネント(例:超伝導コイル、加熱装置、ダイバータなど)でシェア100%を確立することを目標とし、具体的な戦略を描いている。
この戦略のポイントとなるのが、次の3つだ。
①実績ある方法で実現を目指す技術開発(ITER・BA・原型炉開発等)=確実性の高いトカマク型を軸に発電実証まで進めるというもの。ITERやJT―60SAで培った技術を基盤とする原型炉「Q―DEMO」を用いて発電実証を目指す。QSTが中核となり、産学と連携して設計・技術開発を進めている。
②より競争力のあるシステムの実現を目指すスタートアップ等による野心的な技術開発=政府はトカマク型に加えて、ヘリカル型やレーザー型の研究開発も並行して進めることで、世界に先駆けたフュージョンエネルギーの実現を目指している。経産省はフュージョンエネルギーの発電実証を目指すスタートアップなど4事業者を「フュージョンエネルギー発電実証推進事業」の条件付き採択先に選定。補助額は総額600億円規模を想定している。補助率は3分の2以内となり、民間負担分を含めた事業総額は少なくとも900億円規模となる。
③共通的に必要な要素技術の開発・確立・基盤整備=QST、NIFSおよびILE(大阪大学レーザー科学研究所)をイノベーション拠点とし、超伝導磁石やブランケットなど、各方式で必要となる技術を整備する。
③を基盤に①と②を進め、数年後をめどに各取り組みの技術開発の進捗状況や海外動向を踏まえ、早期の発電実証に向けて国が支援するフュージョン発電システムを決定。発電実証を実現し、商用化前発電実証を経て社会実装していくことを打ち出している。
民間研究の現在地
「フュージョンエネルギー発電実証推進事業」の条件付き採択先に選定されたのは、Starlight Engine、Helical Fusion、EX―Fusion、LINEAイノベーションの4社。いずれも条件付採択であり、条件への対応が行われたことが採択審査委員会として確認できれば正式な採択および交付決定される。
Starlight Engineではトカマク方式を採用したFASTプロジェクトを推進している。同プロジェクトでは2025年11月に概念設計を終了し、現在、工学設計活動へと移行。同時に建設準備も進めている。
ヘリカル方式によるフュージョンエネルギーの実用化を目指すHelical Fusionは、ヘリックス計画に着手。最終実証装置で統合実証した後、発電初号機による実用発電を目指す。岐阜県土岐市に最終実証装置のフェーズ1を建設中だ。
大阪大学発のEX―Fusionは、レーザー型を採用。レーザーや光学系、燃料ターゲットなどの要素技術を統合し、1秒間に10回の核融合反応を連続して発生させることを目標に開発を続けている。
LINEAイノベーションは、水素とホウ素の反応を用いた核融合炉の開発に取り組む企業だ。FRC(磁場反転配位)/ミラー複合方式とビームを活用した非熱的な核融合反応の実現を組み合わせた独自のアプローチで開発を進めている。
国内のフュージョンエネルギーの研究開発においてトカマク型は主流であり、研究実績も豊富でスピード感がある。ただ、定常運転という側面ではヘリカル型が優勢との見方がある。また、レーザー型はパルス運転による高出力化が期待されるなど、それぞれ異なる強みを持っている。加えて、いずれの方式でも課題としてサプライチェーンの構築が急務だという声が挙げられている。









