【富士経済】次世代光源の市場調査

LED照明 2020年以降、縮小へ期待される有機EL照明
DALIスレーブの伸び

富士経済はこのほど、照明製品のモノ売りから照明制御・ソリューション・IoT化などコト売り展開の進む国内照明製品および照明制御/ソリューション/IoT化の市場ならびに有機ELやレーザー光源などポストLEDを担い多様なアプリケーションで拡大が期待される次世代光源の市場を調査した。

照明製品の国内市場

照明製品の国内市場は緩やかに縮小しており、2018年は前年比1.9%減の8205億円が見込まれる。
LED照明(LED照明器具とLED管球ランプ)は伸びており、2018年は全体の80%以上の6868億円が見込まれる。オフィス・ビルや店舗、施設で使用されるLED光源一体型ベースライト、工場や倉庫、体育館で使用されるLED高天井照明、住宅照明のLEDシーリングライトが中心である。LED光源一体型ベースライトはLED直管ランプのリプレイス需要を取り込んでおり、今後も安定した需要が期待される。LED高天井用照明は、水銀条約に伴う水銀ランプの規制を背景に伸びるとみられる。LEDシーリングライトは市場が成熟しつつあるが、高機能・多機能化やホームIoTの流れで製品開発が進んでおり、照明の新たな価値(ウェルネス、見守り、演出・エンタメ性など)を提案する製品として期待される。
照明製品の国内市場は、LED照明の低価格化の進行や製品リプレイスサイクルの長期化などを要因とし、今後も緩やかに縮小し、2025年には2017年比19.6%減の6729億円が予測される。
LED照明はストック市場からの置き換えにより当面は伸びるものの価格下落のため2020年以降は縮小が予想される一方、市場はまだ小さいものの有機EL照明とDALIスレーブ(DALI用電源)の伸びが期待される。
照明製品市場が縮小する一方で、参入企業は照明の新たな価値創出によるサービス展開を進めている。制御・ソリューションの拡充、有機ELやレーザー光源など次世代光源の採用、省エネに加えて省人・省力化などの「スマート」、防犯・防災機能を高める「セーフティ」、健康や生理的訴求を行う「ウェルネス」、他設備との連携やデータ活用を行う「IoT・コネクティッド」などのキーワードで新規価値の創出を進めてゆくとみられる。

注目市場


具体的なウェルネス訴求としては快適性、心理的健康効果(明るさ感、色温度など)、生理的健康効果(ブルーライト抑止、睡眠改善など)、知的生産性の向上などが挙げられる。照明の見た目や波長を自然光に近づけるアプローチによりウェルネス訴求を行う、自然光のスペクトルに近づけた無電極ランプやLEDパッケージなどを用いた照明器具が開発されている。2017年頃から自然光再現を訴求する光源の開発がみられ、2018年には自然光関連の照明器具やデスクライトなどが相次いで発売されている。
今後、これらの光源と制御・ソリューションを組み合わせたウェルネス照明ソリューションの提案が広がるとみられ、病院や福祉・介護施設、オフィス・ビルなどを中心に普及が予想される。
また、ウェルネス意識の向上や働き方改革に伴うオフィス環境の整備などを背景に、対応製品やソリューションの拡充、参入企業の増加も期待されるため、2025年の市場は120億円が予測される。
ビジネスモデルとしては、照明メーカーが照明製品や周辺機器の販売を軸にソリューション提案を行うケースと、建材メーカー、オフィス家具メーカー、寝具メーカーなどが空間や価値提案のための総合ソリューション提案を行うケースに大別される。


家庭用機器で一般的に使用されているWi-FiやBluetoothを用いて、スマートフォンやタブレット端末を介して操作を行う製品が多い。
とくにシーリングライトは、従来蛍光灯からLEDへのシフトが完了して低価格化・汎用化が進んでおり、カラーやシーン別の調光・調色機能も一般化したことで、さらなる高機能・高付加価値品としてデザイン性と共にIoT化が開発のキーワードとなっている。
大手または新興の照明・家電メーカーから、スピーカー付きLEDシーリングライト、スピーカー付きLED電球、スマートスピーカー対応LED電球/LEDシーリングライト、LEDシーリングライト一体型空気清浄機などが製品化されており、照明の多機能化や照明をハブにした設備連携を想定している製品が増えている。
現状、既存の住宅照明に通信連携機能を付与した製品が多く、照明器具同士の連携機能にとどまる活用が中心であるが、今後は多機能化や他設備との連携という点で改良が期待される。
中長期的には、住宅や福祉・介護施設、小スペースの店舗などを対象に、それぞれの用途・シーン別に訴求力のある製品開発、それを実現する機能付与(単独機能および他設備連携)が市場拡大のポイントになる。製品売りだけでなく、住宅の総合ソリューションとして展開する動きもみられ、今後は住宅向けを中心に需要が増加し2025年の市場は2017年比8・8倍の300億円が予測される。


これらの次世代有望光源は、技術開発段階にあった製品が徐々に市場に投入され始めており、今後は普及に伴う継続的な拡大が期待される。2025年には2017年比2・3倍の5兆2377億円が予測される。
マイクロ・ミニLEDは、急速に技術開発が進んでおり次世代ディスプレイ光源として注目される。ミニLED市場はすでに出荷が開始されており、2019年以降に採用が本格化するとみられる。
UV—LEDのうち、深紫外光LEDは特に注目される。コスト面や性能面に改善の余地があるものの、殺菌用途での需要増加が期待される。当面は浄水器や加湿器など家電製品向けで伸びるとみられる。
また、日系メーカーが家電よりも高出力が求められる業務用・産業用水処理装置での需要開拓を目指し技術開発を進めており、採用が本格化すれば大幅な伸びが期待できる。
自然光再現LEDや有機EL光源は、高演色性を生かし美術館やレストラン、化粧品販売店向けの照明向けで採用が増えている。一般照明での採用拡大の動きもあり今後さらに伸びるとみられる。高出力赤外光LEDは、セキュリティやセンシング用途での需要増加が期待される。


マイクロLEDおよびミニLEDは、有機ELディスプレイに続く次世代ディスプレイの光源として注目される。従来のLCDや有機ELを用いたディスプレイに比べ、高輝度・高コントラスト・長寿命・低消費電力といった優位性がある。
マイクロLEDは、参入メーカーが製品化に向けた研究開発を進めている段階である。製造技術における課題が解決し量産体制が整えば、ディスプレイ向けで採用が進むとみられる。特に大型パネル用途や、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスでの採用が期待される。歩留まりやマストランスファーなどの課題が解決すれば、LCDや有機ELディスプレイから置き換わる可能性がある。
ミニLEDは、2018年より出荷が開始されており、2019年からはミニLEDを採用した製品が発売されるとみられる。当面はゲーミングモニターや大型モニターでの採用が予想される。車載ディスプレイ向けの開発が進められており将来的には製品化が期待される。今後の需要増加が予想されるが、マイクロLEDの採用が本格化した際には競合が懸念される。

電材流通新聞2019年4月4日号掲載