暗闇には危険が潜んでいる
夜でも月が出ていれば、あんがい明るいものだ。条件にもよるが、満月の照度はおおよそ0.2~0.25ルクスといわれている。20メートルほど先に置いた100ワットの電球に照らされているような明るさなのだそう。感覚的にはもっと明るい気がする。なんといっても地球から見て太陽の次に明るい天体だ。太古の昔より人類は、その神秘的な輝きに魅了されてきた。しかし、月が私たちの目に映るのは、もちろん太陽の光に照らされているからに他ならない。月だけではない。光がなければ、この世は真っ暗闇である。
余談はさておき、電気工事の現場は薄暗い場所が多い。これから電気を通すのだから当たり前といえば当たり前だが、手元がおぼつかない状態で細かな作業をして、もし不備でもあれば発火などの原因になりかねない。手や指をけがしたり、何かに足を取られたりと、思わぬ事故につながることもある。電気工事士に限らず、暗所作業においてヘッドライトは必需品だ。
選ぶときのワンポイント
一口にヘッドライトといっても多種多様だ。近頃は防災用の備品としても注目されており、さまざまなメーカーから、いろいろなタイプが発売されている。
まず電源としては、乾電池式、充電式、両方使えるハイブリッド式の3タイプに大別できる。どれが良いかは使う人次第だが、あまり重いと作業に差し支えるため、重量も考慮して選びたい。肝心のライト部分は、LEDとHIDとがある。LEDの特長は省電力・長寿命、HIDは明るくリーズナブル。光の質や照射範囲も違うため優劣は付けられないが、やはり新しいLEDが人気のようだ。その明るさは「ルーメン」で表示される。ルクスやらワットやらルーメンやら、ややこしいのだ。電気工事関係の方はご存じかもしれないが一応整理しておくと、ルーメン(lm)とは光の量の単位であり、数値が大きいほど明るい。ちなみにワット(W)は消費電力を表す単位で、ルクス(lx)は照度の単位だ。つまり、ライト自体の明るさがルーメンで、ライトに照らされた場所の明るさがルクスで表される。昔は照明といえばワット数だったが、LEDは従来の照明と同じ明るさを小さな消費電力で実現するため、単純にWで比較ができなくなり、lmが用いられるようになった。あとは、ヘッドライトの照らす範囲や距離、防塵や防水といった機能を、用途に合わせて検討するといいだろう。
さて、最後にもうひとつ余談を。光速、つまり光の速さは1秒間に30万キロメートル進む。あっ、という間に地球を7周半だ。ゆえに、地球から約38万キロメートル離れた月からの光は1.3秒かけて私たちに届く。――私たちが見ているのは、常に1.3秒前の過去の月だ。