LED照明特集

効率だけでなく調光・調色などの機能も求められる

我が国の照明市場はほぼLED化が進み2009年以降、LED照明器具の出荷台数は右肩上がりで増加し、2018年度の照明器具の出荷台数におけるSSL化率が98%を超えている。LED市場を取り巻く環境は異業種との協業など変化が大きく表れてきている。今後、LED照明はどう進んでいくのか。LED照明業界を展望する。

東日本大震災以降の消費者の省エネルギー志向の向上などもあり世界でも類を見ないスピードでLED照明を中心としたSSL化が進展した。
2017年度末でストック市場におけるSSL化率はおよそ34%といわれているが、日本照明工業会では2030年に国内照明市場におけるSSL化率100%を目指すとしている。
照明器具市場を住宅分野、非住宅分野と分けてみると、住宅分野では新築住宅ではLED化はほぼ100%と見てよいだろうが、一方で年々空き家などが増え現在、およそ900万戸あり、それに毎年およそ50万戸ずつ増えていくという。
このストック需要を考えると住宅でのLED照明の普及率100%へは10年以上のスパンで考えていかねばならないのであろう。

一方、非住宅分野の物販店はネット販売などの普及で若い世代などを中心に実店舗の必要がなくなり、アパレルなどを中心に物販店舗への需要が減速しているという。
大型店なども含め、10年程前にLED化した店舗はそろそろリニューアル時期となり需要も期待できるものの、物販店などの撤退もあり予断を許さないところであろう。
飲食、サービス業やホテルなどはインバウンド需要もあり物販ほどは冷え込んではいないようだが、今後の展開に注目する必要がある。
工場や倉庫、道路、橋梁、トンネルなどは水銀灯からの置き換え需要があり少しは期待できる可能性があるようだ。

LED照明は効率を向上させることが主眼だったが、いまでは調光・調色、高演色など効率以外の部分でも性能が向上し、各社が新製品を続々と生み出している。
調光・調色機能により、人の生体リズムにあわせたあかりを作り出すことができるため、病院、老人ホームなどでのLED照明が採用されているが、政府の「働き方改革」や、「リクルート対策」も含めオフィスでも直管形の照明器具が並んでいる様子から一変し従来の照明とは一味違う照明が採用されはじめ、いままでの施設照明とは一線を画し、インテリアを得意とする照明メーカーにも参入の機会が出てきたようだ。
無線制御とLED照明は非常に親和性があるため、手軽にスマートフォンなどで使える。そのため、Blutooth®などで制御ができるLED照明が普及したが、今後はZEHやHEMSにも対応した照明器具のさらなる開発や人工知能(AI)による照明制御や最適な照明設定、IoTにつながり各種情報とリンクした照明設定など、より高度な人にとってより豊かな生活が享受できるような、照明器具の開発も大いに期待される。

一方LED照明器具だけではなく、LED素子やパッケージも青色LEDと黄色蛍光体の組み合わせで白色光が作られていたが、最近では紫色LEDと蛍光体の組み合わせで白色光を作り出すなど、素子の分野でも新しい動きが出てきている。
照明器具メーカーと素子メーカー、あるいは蛍光体メーカー、実装メーカーなどとの協業も従来光源メーカーと照明器具メーカーという関係とは違った形で展開されていく点にも注視していきたい。

また、植物育成、医療、可視光通信などLEDの用途開発も進み、新たにLED照明とスピーカー、カメラ、センサーなど他の用途のものとの組み合わせなど照明器具メーカー以外がLED照明分野に進出するなど業種のボーダレス化も進んでいる。
現在は、LED照明普及期のように海外メーカーも含め雨後の竹の子のごとく、LED照明に参入はしてきてはいないが、他業種、異業種など想像もつかないところから、LED照明が市場に出てきてもおかしくない時代になった。反対にLED照明器具メーカーが全く違う市場で活躍するかもわからない。
その各メーカーの可能性やポテンシャルに期待したいところだ。

総合メーカー

パナソニック ライフソリューソンズ社は、水銀灯買い替え需要に対して必要な明るさ、天井高や点灯時間などニーズに合わせて選べる高天井LEDを積極的に展開。道路照明、投光器など従来水銀灯など放電灯が多く使われていた分野に積極的にLED照明器具へのリニューアル提案をしていくという。

東芝ライテックは水銀灯や放電灯に代わる高天井用の照明器具として平成30年度省エネ大賞を受賞したLED高天井器具は、電気工事の負担軽減を考慮し、特に軽・小型化を実現した点を訴求し、積極的にPRし拡販につなげるという。

岩崎電気はインターネット経由で照明演出ができるIoT照明コントローラー「Link—Core」や多様なニーズに対応する街路照明「レディオック エリア トリカーエル」を発売。豊富なバリエーションで、多彩な組みあわせが可能なシリーズとして提案していく。

三菱電機照明は平成30年度省エネ大賞を受賞した施設の規模に応じてフレキシブルに管理ができるネットワーク照明制御システム「MILCO.NET」に力を入れる。
NECライティングの事業を継承した「ホタルクス」は「安心・安全・快適」をテーマに「IoT照明器具による異常検知ソリューション」の実証実験などを手がけ防災照明シリーズを充実させるという。

専業メーカー

専業メーカーも特徴を生かし個々に新たな方向を見つめている。
大光電機は屋外照明シリーズ「ZERO(ゼロ)」に大きな期待をかけ注力をしている。日本は周りが海に囲まれているが、従来の耐塩塗装では、一年も持たないところに着目。重耐塩塗装を施し、ビス一本も錆びないパーツを使い大きく他社製品を引き離し、日本の屋外照明は「ZERO」といわれるまでに育てるという。
建築家やデザイナーにとって自分の設計したプロジェクトにマッチする照明器具の外観色をオーダーしても価格が変わらないという点も評価され、沖縄などのホテルプロジェクトでも多数採用されているという。

コイズミ照明はライティングフェアで「オフィス ワンストップ ソリューション」をテーマに、光・制御・デザインソリューションによる「働き方改革」を提案。生産性が高く魅力的なオフィス空間を実現するための照明計画を独自の照明制御アプリ「TRee」などで光や音声操作ができる提案をしていく。
一方住宅用ではスマートスピーカーに連携するおよそ3000アイテムの家のあかりを「おはよう」から「おやすみ」まで、声でつながるアクティビティライフを提案し、コイズミ照明の新しいコーポレートキャッチフレーズ「違う発想がある」のとおり「つながるあかり」を提案していく。

遠藤照明は「Smart LEDS SYSTEM」の進化版として、より簡便に扱いやすく、対応の照明器具を入れておくだけでスタートできる「Smart LEDS Fit」を発表。
人と空間を自由自在に「Fit」する、新発想の調光アプリケーションシステムで、スマートフォンやタブレットで簡単に設定できる。
この手軽さを武器に遠藤会長は本紙主催「照明専業メーカー座談会」で「商業施設の遠藤照明ということから、住宅照明についても検討したいと考えている」と住宅分野への進出も示唆した。

オーデリックは引き続き制御とデザインの二面作戦で展開する。特にデザイン面では商業施設向けのダイクロイックハロゲン代替の小型ダウンライト、スポットライトの「MINIMUM」シリーズに傾注するという。同シリーズは建築への干渉を最小限にとどめるコンパクトな点が評価され「2018年度グッドデザイン賞」を受賞している。
平均演色評価もRa95と高演色で2500Kから3500Kまでの低色温度を設定し、飲食店やホテル、高級物販店などプレミアムな空間に適している。さらに信号線不要の位相制御調光とし調光比の下限はわずか1%としっかりと繊細な調光ができるのが特徴。

星和電機は道路照明、信号機、工場などの防爆照明、構内道路灯、クリーンルーム用器具などのLED照明器具の普及に努める。現在8割程度のLED化比率を2020年をめどに100%にしたい、と増山社長は本紙主催「照明専業メーカー座談会」で述べている。
3月から発売した新製品の施設照明として広い用途に対応する防水形非常用照明器具は保護等級IP55に適合し、エネルギー効率も防水形非常用LED照明器具においては業界最高クラスのエネルギー効率を誇っている。
他に防湿・防水形LED器具や防爆形非常用LED灯器具など独自の技術で防爆エリアでのLED化により白熱灯に比べ設置台数の削減などによる省エネも含めて提案していく。

因幡電機製作所は「次世代街路灯へのアプローチとして光と音のバリアフリーを実現し持続的なユニバーサルデザインを実現し、あらゆる活用シーンに最適な光と音の世界とサービスを提供するのが基本コンセプト」とする新製品をライティングフェアで発表した。
京セラの蛍光体調合技術「SERAPHIC」を活用し、太陽光に近い演色性を実現しカラーLEDで調光・調色を実現。
言語、聴力の違いによる情報格差・差別の解消を推進する音のユニバーサル化と、持続的なユニバーサルデザインを実現するためにSoundUDを共通基盤化して新たな利活用を推進する音のプラットフォームを採用。
これらの異業種の技術とLED照明街路灯とを組み合わせることで新しい可能性を追求している。

5年前はLED照明というだけで製品は注目された。しかし、いまはどうだろうか、LED照明はもう特殊な照明ではない。
LED照明単独では成り立たない、複合機能や多機能など照明以外のテクノロジーとのコラボレーションなのか、次のLED照明の方向性はどうなのか。成熟したLED照明市場の各社の製品戦略などを展望したい。

照明器具・電球の省エネ基準改正
LED器具も対象に追加

経済産業省は、照明器具ならびに電球についてそれぞれ2020年度、2027年度を目標年度とする新しい省エネ基準等を定める省令・告示を12日に公布、15日に施行した。
「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」では、照明器具及び電球を含めエネルギーの使用の合理化を図ることが特に必要な機器について現在商品化されている製品のうちエネルギー消費効率が最も優れているもの(トップランナー)の性能、技術開発の将来の見通し等を勘案し、製造事業者等が目標年度に満たすべき省エネ基準を設定するとともにエネルギー消費効率に関する表示事項等を定めている。

 1、照明器具
照明器具の省エネ基準は、これまで蛍光灯器具のみを対象としていたが、新たにLED電灯器具を対象に加えて2020年度を目標年度とする新たな基準を定めた。これまでの基準では、エネルギー消費効率を消費電力量あたりの「照明器具の光源の明るさ(全光束)」としていたが、新たな基準では消費電力量あたりの「照明器具の明るさ(照明器具全光束)」とした。
また、これまでの「照明器具の光源の明るさ(全光束)」の表示に変えて、新たに「照明器具の明るさ(照明器具全光束)」の表示が義務付けられ、同一の蛍光灯器具であっても「照明器具全光束」は「全光束」よりも値が小さくなる。

 2、電球
電球の省エネ基準は、これまで蛍光ランプとLEDランプを対象としていたが、新たに白熱電球を対象に加えて2027年度を目標年度とする新たな基準を定めた。旧基準と同様に消費電力量あたりの「ランプの光源の明るさ」をエネルギー消費効率としている。

なお、表示事項の見直しについては1年間の経過措置期間を設け、2020年3月31日までは引き続き従来の表示が認められる。

(参考)
照明器具のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等(平成22年経済産業省告示第54号)

https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/equipment/pdf/03_shoumeikigu.pdf

電球のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準等(平成25年経済産業省告示第235号)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/equipment/pdf/28_denkyu.pdf