【富士経済】 再生可能エネルギー発電システム関連の国内市場調査

太陽光発電システムが80%以上(2018年度見込)

富士経済はこのほど、FIT制度を背景に太陽光発電を中心に導入が進む一方、FIT買取価格の引き下げや入札制度の範囲拡大、非FITによる自家消費案件の増加など、変革期を迎えている再生可能エネルギー発電システム関連の国内市場について調査した。
この調査では、太陽光や風力、水力、バイオマス、地熱を利用する発電システム/関連機器・サービス市場を調査、将来を予想する。

■再生可能エネルギー発電システム市場
太陽光発電システムが80%以上を占める(2018年度見込)。
2017年度から始まった事業計画認定制度により、設備認定取得済(みなし認定)案件の迅速な運転開始が求められ、未稼働案件の導入が進んだことで18年度は好調だった。
しかし、FIT買取価格の引き下げや入札制度の範囲拡大を背景に今後は自家消費型の非FIT案件中心の市場に移行していくとみられ、30年度の市場規模は18年度の3割以下まで縮小するとみられる。
太陽光以外の再生可能エネルギー発電システムでは、とくに風力発電システムや水力発電システムの伸びが期待される。風力発電システムでは大規模な陸上風力発電所の建設導入が進み、水力発電システムではフルリニューアル案件の顕在化で市場が活性化するとみられ、18年度と比べて30年度は大幅な拡大が予想される。

〈太陽光発電システム〉
2018年度は未稼働案件の導入が進んだことにより、市場は17年度比4.1%増の1兆7195億円が見込まれる。
太陽光発電はグリッドパリティを迎え、遅くとも25年度までにはFIT制度による新規認定がなくなると予想される。
今後、自家消費を目的とする導入が進み、将来的には非FITが市場の大部分を占めるとみられる。

〈風力発電システム〉
2017年度の市場は16年度にFIT施行後の認定案件の運転開始が集中した反動により縮小したものの、18年度は陸上大型発電システム、小型発電システムともに好調で、市場は1千億円に迫っている。
25年度頃までは、陸上大型の事業計画認定取得済案件が市場をけん引するとみられる。
一方、小型風力発電システムは20kW以上のFIT区分に統合され、19年度以降は需要減少が予想される。
また、洋上風力発電システムの本格的な市場拡大は25~30年度頃からとなり、好適地選定が難化し始めた陸上大型発電案件向けの投資意欲が洋上風力発電に向けられるとみられる。

〈水力発電システム〉
2017年度は水力発電機メーカーの供給が追い付かず施工が後ろ倒しとなり、市場は縮小した。18年度も同様の状況が続いており、市場は17年度を下回ると見込まれる。
17年度に1~5MWで買取価格27円の新区分が定められたが、市場では5~30MW未満の容量帯の商談が活発化している。20年度に予定されている発送電分離にともない、旧一般電気事業者の発電事業部門が積極的な水力発電のリパワリングやフルリニューアルを進める見通しであり、市場拡大をけん引すると予想される。

〈バイオマス発電システム〉
2018年度の市場はメタン発酵ガス利用発電システムが直近の導入ピークを迎え、未利用木質(2000kW未満)利用発電システムの導入が17年度を上回るなど、好調な品目もみられた。
一方、一般木質・農作物残さ利用発電システムは改正FIT法への対応や駆け込み認定案件に対する事後規制などを受けて停滞したため、市場全体では前年度を下回ると見込まれる。
今後は、一般木質輸入材(主にPKS)を燃料とした認定案件の導入が、20年度前半まで市場をけん引する。中長期的にはFIT制度の対象となるバイオマス資源の見直しや入札制度の導入により、市場は縮小するとみられる。

〈地熱発電システム市場〉
2017年度の「山川バイナリー発電所」、18年度の「松尾八幡平地熱発電所」などの大型案件をはじめ、一定規模の市場形成がみられる。
20年度以降は200kW級までのバイナリー発電所が年間12~15件程度のペースで運転開始となり、加えて政府の地熱発電開発導入促進策によりMW級の大型案件が2年に3~4件程度のペースで運転開始するとみられ、今後の市場拡大が期待される。

■再生可能エネルギー発電システムの累計導入容量
FIT開始以降、計画から運転開始までのリードタイムが短く、設備投資の費用対効果が高い太陽光発電のシステム導入が進んだ。太陽光発電システムの2018年度末までの累計導入量は全体の75.5%を占めると見込まれるが、今後はFIT買取価格の引き下げや入札制度の範囲拡大により、新規導入量が鈍化するとみられる。
今後の伸びが期待されるのは、風力発電システムである。開発に時間がかかるものの、25年度にかけて陸上大型の導入が加速し、以降は洋上風力発電システムの導入拡大も予想され、累計導入量の増加が期待される。
水力発電システムや地熱発電システムは、開発に時間がかかるため導入ペースが加速しにくく、大幅な伸びはむずかしいと想定される。
バイオマス発電システムは、16年度から17年度にかけて熱源種の拡大とFIT認定量の大幅増がみられた。
今後は認定済み案件の導入拡大にともない、累計導入量は順調に増えると予想される。

電材流通新聞2019年8月29日号掲載