ニッチもエコ電線、好況で品薄も

問屋〜石化も繁忙 五輪や再開発が下支え


ニッチな分野だが、EM電線・ケーブル(エコ電線)の需要が、活況を呈している。東京五輪施設の建設が追い込みを迎えているのに加え、都市再開発や学校のエアコン設置絡みで建販市場が好況な情勢下、エコ電線の中には、品種やサイズによってはショートするケースも多い。電線問屋では、エコ電線の調達は「電線メーカー1社からでは間に合わず、複数の電線メーカーから何回かに分けて、仕入れる。遣り繰りが大変になった」としたケースが増えている。


エコ電線需要は活況であり、各社のエコ電線の生産ラインは、ほとんどがフル稼働を持続している。
背景には、東京オリンピック・パラリンピック施設の建設が追い込みを迎え、都市再開発や首都圏の駅舎リニューアル、学校のエアコン設置が継続していることが挙げられる。さらにこの間、電線メーカーが、エコ電線の生産能力を絞ってきた経緯も相俟った。
電線工業会がまとめた今年3月以降のEM電線・ケーブル出荷量をみると、19年3月は3千13㌧(前年同月比18.4%増)、4月は3千624㌧(同72.7%増)、5月が3千423㌧(同47.7%増)、6月は3千209㌧(同26.0%増)と、いずれも月間3千㌧を上回り大幅増で推移している。
そのためエコ電線用難燃剤やエコ電線用コンパウンドなどのシース被覆石化材料メーカーから電線問屋までも繁忙だ。
あるエコ電線用難燃剤水酸化マグネシウムメーカーでは「昨年の12月頃から、繁忙になる兆しが出はじめ、例年よりも引き合いが強まっていた。現状は、エコ電線用コンパウンドメーカー向け及びエコ電線用コンパウンドを自家練りしている電線メーカー向けとも、通常よりも出荷量は増加している。用途は建販向けエコ電線ケーブルと伺っている。ただ、機器用電線ケーブル向けは、米中貿易摩擦の影響で減っているようだ。それを差し引いても、エコ電線用の水マグ出荷量はトータルで増えている。今後も、こうした状況が続くことを願っている」と期待感を滲ませている。
電線問屋では、エコ電線の調達は「電線メーカー1社からでは、間に合わない状態が続く。複数の電線メーカーから何回かに分けて、仕入れて対応している。エコ電線に限っては遣り繰りが大変であり、品薄になっている品種やサイズが、今春頃に比べて増えているようだ」とした状態にある。
エコ電線需要の今後の見通しについて問屋筋では「建販電線にある程度リンクするだろう。各種案件の工期がやや延びることを勘案すれば、年度内一杯はこの状態が継続しそう。需要はある程度底堅い。ただ、価格は厳しい」という。
電線工業会の出荷統計によると、建販電線トン当たりの出荷金額は、自動車電線の約4分の1。それだけ建販用エコ電線事業も、電線の中でも収益面で厳しい事態に至っている。エコ電線は塩ビ系建販電線より原価率が高いため、幾分高値で取引されているが、ほどんど大きな価格差は無い。

電線新聞 4174号掲載