【富士経済】 EV・PHVの普及に必要な充電インフラの市場調査結果

主要16カ国の現状

普通、急速充電器ともに 中国や米国では普及加速

富士経済はこのほど、EV・PHVの普及に必要な充電インフラの市場について主要16カ国の市場を調査した結果をまとめた。

この調査では、主要16カ国の3タイプの充電インフラ(急速充電器、ワイヤレス給電システム、普通充電器)の市場について整備実績と普及政策などを踏まえた現状を把握した。
また、利用形態別として、公共用、職場用(自社の社用車・社員用)、商用車用(バス、トラック、タクシーなどの商用車専用)などの観点からも普及状況を整理した。
EV・PHVの充電インフラは、普通充電器を中心に普及が進んでいる。急速充電器についても中国や米国では普及が加速しており、今後の大幅な伸びが期待される。ワイヤレス給電システムは、まだ数千台の市場規模であるが、利便性の良さなどから、今後普及が本格化するとみられる。
国別にみると、中国では国策によりEVやPHVの販売が急増しているため、各充電インフラについても他国に先行して普及が進んでいる。続くのは米国であり、普通充電器だけでなく急速充電器の需要が増えている。欧州ではEU内で急速充電器の規格統一が進展しており、普及の後押しとなっている。
急速充電器は、中国の標準であるGB/T、日本を中心とするCHAdeMO、欧州や米国を中心とするCCS(Combo1・Combo2)、Teslaが展開するSuperchargerなどの方式がある。普通充電器は、米国や日本で普及するType1、欧州で普及するType2、中国の標準であるGB/Tなどの方式がある。ワイヤレス給電システムは現状、停車中給電システムが大半であるが、一部で走行中給電システムの実用化が始まっている。

■主要国の急速充電器のストック市場
中国の普及が先行している。タイプとしては、国家指針としてGB/Tに統一されつつある。出力レンジ62.5㎾の設置が最も多く60%以上を占めている。公共用のウエイトは70%弱と他国と比べると低めである一方、企業や公的機関が積極的な設置を行ってきたため職場用のウエイトが比較的高い。
米国は、CCS(Combo1)やSuperchargerを中心に普及している。今後はCCS(Combo1)の設置が堅調に進むとみられるほか、Teslaが展開するSuperchargerの高速道路沿いへの設置は一巡し、今後は都心部の商業施設などでの設置が増えるとみられる。
日本では、CHAdeMOの出力50㎾以下の機種が大部分を占め、ほかにはSuperchargerが100台弱設置されている程度である。2019年よりCHAdeMOの出力90㎾タイプの設置が徐々に進んでいる。現状では大部分が公共用である。
欧州ではCCS(Combo2)で規格が統一される方向である。CCS(Combo2)への規格統一を推進するDaimlerやBMW、Volkswagenグループなどの本社所在地であるドイツでCCS(Combo
2)の普及が進んでおり、先行していたCHAdeMOの普及台数をすでに上回っている。英国では、CHAdeMOの新規設置が堅調ではあるが、大半はCCS(Combo2)とのデュアル充電器となっている。

 ■主要国のワイヤレス給電システムのストック市場
中国が先行しており、タクシーやバス向けで実用化が始まっている。タクシー向けは駅前ロータリーなどの停車中給電システムが大部分である一方、バス向けはバス停や車庫での停車中給電システムに加えバス専用レーンでの走行中給電システムの設置が増えている。
ドイツでは、DaimlerやBMWのPHV上位車種で停車中給電システムがオプション設定されているため普及が始まっているほか、EVバス・タクシー事業者の一部では車庫や停車場での待ち時間充電のために停車中給電システムの設置がみられる。
米国では、EVバス用の停車中給電システムを中心に設置が進んでいる。フランスや英国でもDaimler、BMWのPHVオプション設定車が販売されているため、少量ではあるが停車中給電システムの設置事例がみられる。
日本では、一部の実証実験用途にとどまっている。

 ■主要国の普通充電器のストック市場
中国は、国家規格であるGB/Tの出力レンジ7kW台の製品が中心である。設置数は公共用を中心に伸びている。
米国は、Type1が主流である。普通充電器の大出力ニーズが高まっているため、現時点で最も普及している3kWクラスは段階的に排除され、7kW台から22kWの大出力機が主流になるとみられる。大規模工場やオフィスが多いため、職場用が15%近くを占める。
日本は、米国と同様にType1が主流である。現状は出力3kW台までの低出力機が大半を占める。
ドイツは、EUの標準規格であるType2のウエイトが高いが、一部で独自規格プラグも残っている。Type2ではすでに22kWの大出力機が主流となりつつある。

電材流通新聞2019年12月5日号掲載