インタビュー新社長に聞く カナレ電気の中島正敬・新社長

4K放送12Gシステムに注力
高性能・高信頼製品を一気通貫で提供

 カナレ電気株式会社 代表取締役社長 中島 正敬氏


カナレ電気の中島正敬・新社長は「IoTの進展で社会インフラが大きく変貌し、連動して放送産業も5GやIPを含むIoTの導入で大きくインフラが変わる見込みだ。この分野の製品や技術開発へ力を注ぐ」とした上で、「当面は4K放送に最適な12G―SDIシステム構築に向けた高周波同軸ケーブルや光コンバーターや光伝送装置、これに付随する光ファイバ、光コネクタなど高品質・高性能・高信頼性の伝送システムを一気通貫で製品提供していく。また、現状、製品別の売上高割合は、ケーブル30%、コネクタ13%、ハーネス18%、その他40%。その他の中に含まれる光システム製品/電子機器類の売上げを伸ばしたい」と語った。


 ――社長就任にあたり、抱負から伺いたい。

「社員総会を1月25日に開催し、その際に、経営ビジョンとして、『顧客感動の創出企業』であるメーカーを目指していきたい、と述べた。当社は放送や音楽、エンターテインメント産業の映像・音響分野向けに電線ケーブル、コネクタ、アセンブリ事業などを専門的に手掛けており、今年で創立50年を迎えることができた。

自分は、プロパー出身では初の社長を拝命した。セールス担当だった当時、顧客へ我が社の製品を紹介したとき、それぞれの製品に驚きや感動話があり、喜んで購入していただいた。このような感動体験を提供できる製品づくりが大切であり、このことによって会社が成長してきた。これこそが当社の強みであり、次の50年に向け、さらにこの文化を磨き込み、伸ばしていきたい」

 ――新型肺炎の流行にともなう御社ビジネスへの影響は?

「中国・上海には生産拠点があるが、春節に入る時期でもあったので、主力の同軸BNCコネクタ等は一定量在庫を保有していた。工場は新型コロナウイルスの影響で、春節明けの1月31~2月9日まで休業した。翌日の10日から通常稼働に戻った。モノ作りのために材料も当面の生産態勢もそれなりに確保できているが、先行きは不透明といえる。

一方、営業面では中国、韓国、シンガポール拠点・エリアは、何らかの影響が出そうであり、今後の動向が懸念される。このうち中国と韓国は、当社の販売割合が高く、大きな市場になっている。例えば、中国ではeスポーツスタジアムや4K放送局の向けなどの大口需要はあるものの、顧客への納入が遅滞している状況である。韓国は、対日関係が厳しい上、自国経済の鈍化に、今回の新型肺炎が重なり、全般的に厳しい状況にある」

 東京オリンピックの需要、まだまだ続く

 ――新型コロナウイルスを除いた放送用ケーブルなど御社ビジネスの足下と20暦年の需要見通しはどうか?

「国内では、東京五輪の需要が増え、前期の当社業績を押し上げた。この五輪需要は、開催直前まで続くことを想定している。過去の世界的なスポーツイベント、オリンピックの事例では、開催中に電線ケーブルなどが不足した場合もあった。また、海外放送局のクルーが世界中から来日し、電線や光ケーブルの各種製品を現地調達するため、そうした分も含めると、まだまだ需要が発生する見通し。また、国内においては、野球場やサッカー場などのスポーツスタジアムの改修や建設などのインフラ需要も望める。

一方、昨年に引き続き欧米拠点の需要増が期待できる。欧州は、中継車向けの需要捕捉を推進したい。米国では、野球場向けなどスタジアム需要や4K放送向けで光ケーブルおよびコネクタ、光伝送システムなどの需要も含めシナジーで増えそうだ。また、地域や国によって寒暖の差はあっても、スタジアムや4K放送向け需要は、グローバルで伸長しそう」

 ――御社の注力製品や注力技術については?

「IoTの進展によって社会インフラが、大きく変貌しはじめている。連動して、放送産業も5GやIPを含むIoTの導入によって大きくインフラが変わることが予想されており、こうした分野の製品や技術開発へ力を注ぐ。

しかし、当面は4K放送に最適な12G―SDIシステム構築に向けた高周波同軸ケーブルや光コンバーターや光伝送装置、これに付随する光ファイバ、光コネクタなど高品質・高性能・高信頼性の伝送システムを一気通貫で製品提供していく。また、放送向け有線ドローンケーブルおよび応用製品等の開発も継続していく」

 欧米圏への取り組み 4K用等で一層強化

 ――20年の御社の事業戦略は?

「やはり、4Kや8K放送用途や、IoT分野の製品開発を事業戦略の主柱に据え、展開していく。主に12G―SDIシステム向けの電線ケーブル、光システム製品/電子機器類のラインナップの充実・強化を図っていく。また、現状、当社売上高に占める大まかな製品別割合は、ケーブル30%、コネクタ13%、ハーネス18%、その他40%。その他の中に光システム製品/電子機器類が含まれており、この製品の売上げを伸ばすとともに売上高構成比を引き上げていきたい」

 ――御社の海外展開は?

「今まではアジア圏を中心にビジネス展開してきた。今後は欧米圏への取り組みを一層強化していく。当社シェアが回復傾向にある米国においては、ハイビジョン放送から4Kへのアップグレードを図るニーズが次第に増えており、それをターゲットに販促策を進める。欧州は4K放送用中継車の需要が拡大しており、それを捕捉していく」

 ――御社の設備投資については?

「IP関連製品の開発や商品化を推進する。加えて、映像や音声を一本で伝送するHDMIおよび同応用製品のバリエーション増強や、AOC(アクティブ光ケーブル)ラインナップの強化も遂行する計画であり、そうした分野の研究開発に設備投資を実施する」

 ――御社の人材確保については?

「ここ数年、新人社員を計画的に採用している。一方、製品開発などでは、その分野の専門技術などに長けた優秀な人材を外部から登用するなど、事業のバランスをとりながら適切に進めている」

 ――御社の最重要課題は、何か?

「一つ挙げるとしたら、原点回帰で収益のアップである。近年、収益性が低下したため、その改善を図っていく」

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趣味は音楽。座右の銘は「敬天愛人(けいてんあいじん)」。天(森羅万象や真善美、真理)を敬い、それに従う。愛人とは、広い人間愛や万人への慈愛などを表す。西郷隆盛が遺した言葉。

電線新聞 4192号掲載