堅調に推移している換気扇市場は、昨年も1年を通してほぼ横ばいで推移した。その好調の要因やメーカー各社の商品提案の切り口などについて探ってみた。
日本電機工業会が発表した資料によると、2019年12月の換気扇国内出荷実績は、数量ベースでは前年同月比96・3%、金額ベースでは97.3%(同)と前年を若干下回ったが、2019年度は第3四半期までで、数量ベースでは前年同期比99.7%、金額ベースでは100.6%(同)となった。また、2019年1月から12月までの累計を見ても、数量ベースで前年同期比99.3%、金額ベースでは100.6%(同)と、前年のペースを維持した。昨年10月に施行された消費税増税による影響も懸念されていたが、ここまでの数字を見る限り、それも杞憂に終わりそうだ。
換気扇市場と密接に関連する新設住宅着工件数を見ると、昨年12月は対前年比7.9%減の7万2174戸で、6カ月連続の減少となったが、換気扇市場は昔ほど影響を受けていないようだ。
人口減や高齢化などにより新築が期待できないなか、リニューアルや新たなニーズに的確に対応し、堅実な市場開拓を行っていることが奏功していると見る向きも多い。
各メーカーでは、省エネ、リニューアル、空気質の向上、高付加価値化など、様々な切り口で市場のニーズをいち早く取り入れ、積極的な製品開発と提案を行っている。とくに、「空気質」と「健康」、さらにZEHやスマートウェルネス住宅などをキーワードにした製品開発が目立つ。
パナソニックエコシステムズでは、室内に存在する空気そのものの向上を実現し、IAQ(室内空気質)の価値提供が生活価値の向上にもつながる提案を強化している。“いい空気”が人の生活における“コト”の改善に貢献できることを体感も含めて訴求展開している。
商品としては、熱交換換気などの給気フード側から浸入する虫や粗塵を旋回流により分離し、自然風でフード外へ排出するサイクロン給気フードの接続口径150㎜タイプを昨年10月に発売したほか、住宅用熱交換気システムIAQ制御搭載モデルである「住宅用熱交換気システム・カセット形(FY-14YBD2SCLほか4機種)」も大きく拡大している。
また、大空間の除菌・脱臭機器として市場拡大している次亜塩素酸空間除菌脱臭機「ジアイーノ」は、4月に「水道直結タイプ」を新たに発売する。
水道直結タイプでは、自動給水機能と塩タブレット自動投入機能の搭載により従来必要だった毎日の水補給と塩タブレット投入の手間をなくすとともに排水タンクを大きくすることで排水の頻度を低減。日常メンテナンスの頻度を、毎日から月に1度と大幅に削減できる。
また、設置空間で効率的に除菌・脱臭効果が得られるよう次亜塩素酸濃度シミュレーションを実施し、適切な設置台数・位置を室内環境に合わせて提案する「配置提案サービス」を提供する。
三菱電機では、「24時間換気提案」に加え、「室内環境改善商品」による用途別提案の取り組みを強化し、新設・既設の両市場の換気啓蒙活動に取り組み、換気扇全需のさらなる拡大に向けた啓発活動に引き続き注力する。
商品としては、全熱交換形換気機器「ロスナイ」発売50周年を記念し、7月に記念モデルとしてDC(直流)ブラシレスモーター搭載による業界最高の機外静圧により送風性能を高め、設計自由度と省エネ性を向上した「業務用ロスナイ天井埋込形標準タイプ」11機種を発売する。併せて、業界初のリニューアル専用機種「業務用ロスナイ 天井埋込形リニューアル専用タイプ」16機種も発売する。
新製品では、設備を含めた建物の省エネに寄与する先進技術導入に対応するとともに、新設・既設問わず設計・施工のしやすさも追求する。
東芝キヤリアでは、省エネ、空気質の向上をキーワードに新商品の提案により換気扇需要の拡大に努める。
商品としては、ダクト用換気扇「ツインエアロファンシリーズ、羽根径10㎝・14㎝サイズ」の本体鋼板製タイプのラインアップを拡充。昨今の節電意識の高まりによる省エネや換気扇の基本性能である換気風量アップと快適さを損なわない運転音との両立、性能を維持するためのメンテナンス性をさらに向上させた商品として注目されている。
そのほか、省エネ性や衣類乾燥の仕上がり品質や施工性に優れた浴室換気乾燥機「バスドライ」6機種(DCモータータイプ2機種)、戸建て住宅の24時間換気の主流である「ダクトレスシステム」において、室内へ侵入するPM2.5を高い性能で捕集し、24時間換気運転時の給気をきれいにするパイプ用ファン「PM2.5対応給気ファン」1機種、建物のデザインにマッチするスクエア形状で施工性を向上させた外壁部材「スクエアパイプフード」10機種を発売している。
同社では、多様化する換気のニーズに応え、より快適で健康的な空気環境を創造するための商品とサービスを提供する。
変わりつつあるユーザーニーズに対応しながら、様々な切り口で活路を見出している換気扇市場。新築市場では大きな伸長が見込めないなか、リニューアルも含め、「空気質の向上」などをテーマとした新たな商品提案を行う各メーカーの今後に注目したい。