仕事用のカバンあれこれ
「さあさあ、寄ってらっしゃい、見てらっしゃい! けっこう毛だらけ猫灰だらけ、お尻のまわりはクソだらけ!」と威勢のいい啖呵売(たんかばい)で道ゆく人を楽しませるのは、ご存じ、“フーテンの寅さん”こと車寅次郎だ。流れ者である寅さんは、腹巻きにお守り、帽子に雪駄という独特のファッションを身にまとい、大きなトランク一つで商売をしながら全国を旅する。しかし、その愛用のトランクの中身は、ダボシャツ、ふんどし、手ぬぐい、トイレットペーパー、うちわ、蚊取り線香、花札、サイコロなどなど、仕事道具ではなく寅さんにとっての生活必需品が詰め込まれているらしい。ともあれ、寅さんのトレードマークである。
さて、仕事用のカバンといえば、鉄道の車掌や郵便配達の人が持っている大きなガマグチのようなカバンが思い浮かぶ。ショルダータイプもあって結構オシャレだ。医師が往診のとき手にしているドクターバッグも口の部分が大きく開く形状で、聴診器や注射器を入れるため厚みがある。ドクターバッグ風のビジネスバッグも多い。また、ビジネスマンが小脇に抱えている、書類を入れた薄いカバンはブリーフケースという。もちろん男性用下着は入っていない。映画やドラマで悪役が裏の仕事に使うのは、決まって黒のアタッシュケースだ。しかし、アタッシュとは大使館員といった意味で、彼らが用いたことから、その名が付いたのだそう。使い手から名称が付けられたカバンは意外と多く、前述のドクターバッグしかり、エディターズバッグやスタイリストバッグしかり。あるいは、仕事用ではないが、ボストン大学の学生が好んで使ったからボストンバッグというのは有名だ。さらに有名な話では、世界中の女性が憧れるエルメスのバッグ。「ケリー」は、後にモナコ公妃となるアメリカの女優、グレース・ケリーが愛用していたことから商品名になり、「バーキン」は、イングランド出身の女優で歌手のジェーン・バーキンが偶然、飛行機でエルメスの社長と隣同士になったことから生まれた。
少し話を戻して、職人のカバンを見てみよう。大工が持っているのは、カバンではなく木箱だ。時代劇などで、肩に担いでいるのを見かける。昔は大工がそれぞれ自分に合った道具箱を自作していたという。スライド式の蓋を“やりくり型”と呼ぶそうだ。植木職人や庭師には、厚手の綿生地で作られた細長いバッグがある。ひもで口を絞る形状で、ひもを持って片手で担ぐ姿が格好いい。
工事用のカバンあれこれ
電気工事士のカバンは多種多様だ。電工バッグやツールバッグといった名称で、各メーカーからさまざまな形のものが発売されている。
たとえば、たっぷり収納できるトートバッグ型。
大きく分けて手提げタイプとショルダータイプがあり、バッグの外側にたくさんポケットが付いているものもある。使いやすくて見た目もシャレている。
続いて、ボックス型。
レジャー用のクーラーボックスのような四角い形状で、こちらも収納量が多く、口が広いので出し入れがしやすい。その多くはショルダータイプなので持ち運びも便利だ。
そして、ドクターバッグ風も人気が高い。
横から見れば三角形なので手提げでもショルダーでも持ちやすく、ガバッと開くので使い勝手が良い。その他にも、リュックタイプ、アタッシュケースタイプ、巾着タイプ、ウエストポーチタイプ、折り畳みイスとバッグが一体になったタイプなどもある。どれも頑丈でデザインも良いので、レジャー用やタウンユースにも便利そうだ。