大阪メトロの照明② 広く高い天井に輝くゴ ージャスな照明に驚き

東京から来た友人が、新幹線の新大阪駅から御堂筋線の梅田駅に初めて降り立った時に、広く高い天井に白く明るく輝くゴージャスな照明に驚いたという。
よく見ると、蛍光灯を縦に並べたデザインの妙に気づき、淀屋橋、心斎橋,天王寺と各駅にそれぞれ違った形の蛍光灯のシャンデリアが設置されていることに二度驚いたと…。
なぜ、このような照明が各駅に設置されたのかはわからないが、筆者が昭和57年(1983年)に淀屋橋駅のシャンデリアのデザインを担当した際に、当時の大阪市交通局の方々からお聞きした話に少しはヒントがあるのかもわからない。
本稿出稿にあたり、大阪メトロに取材したが、年史のような書籍以外の資料は残っていなくて、当時携わった方々もすでに退職されたり故人になっておられたりで情報には限界があった。

大阪の地下鉄は『地下鉄50年のあゆみ』(大阪市交通局総務課企画・編集)によると、「昭和8年(1933年)日本初の公営地下鉄として梅田—心斎橋間が開通した。アーチ式ホームにはシャンデリアが輝き(中略)エスカレーターもあって、市民はその豪華さに感嘆した」とある。
地下鉄建設にあたり、関西近代建築の父といわれる武田五一の指導を仰ぎ、「明解壮麗」をコンセプトに造られ、当時は今とは違う白熱灯のモダンなデザインで、梅田は箱型、心斎橋は円形、淀屋橋は天井中央に直付のライン照明といった具合だったと大阪市交通局の写真資料にある。
6年前の昭和2年(1927年)開業した東京の地下鉄は民営でもあり駅は天井も低く豪華ではなかったようだ。
一方で大阪は商都・大大阪の情熱によって、市長を筆頭に良いものを後世に残そうと、開業当初は一両編成で運行していたにもかかわらず数十年後の発展を考え10両編成の列車が停まれるように計画し造られたのは有名な話だ。
また天井が高く計画されているのでホームをダブルデッキにして、混雑緩和に今役立っている、先見の明だ。

(中尾晋也)

電材流通新聞2020年5月21日号掲載