有人環境下で使用可能
ウシオ電機の殺菌技術「Care222TM」光源モジュール搭載
自動車、鉄道車両に搭載する 装置や一般照明器具開発も
ウシオ電機では、創業以来56年にわたり紫外線が持つ効果に着目し、2015年からは米国コロンビア大学とともに人の皮膚や目に安全な222nm紫外線技術の開発に着手。自社の使命のひとつと位置付ける光技術での「安心・安全」な環境づくりの実現に向けて、有人環境下で使用できるウイルス不活化・殺菌技術「Care222TM(以下Care222)」を確立した。
新型コロナウイルスの感染拡大に対して様々な対策が講じられているなかで紫外線によるウイルス不活化・殺菌が注目されているが、従来の殺菌用紫外線は人体に有害なために有人環境下での使用は避けられてきた。これに対してCare222は、高い殺菌力を持つ222nmの遠紫外線(Far-UVC)をピークに持つエキシマランプに独自技術を用いた特殊フィルタを組み合わせることにより、人体に有害な230nm以上の波長をカットしている。人の皮膚や目に障害を起こさない200〜230nm紫外線のみを環境に合わせて任意照射することで、学校やオフィス、商業施設などの経済・社会活動を止めることなく有人環境下でのウイルス抑制・除菌を可能とした。
一方、東芝ライテックは、照明事業130年の歴史を持ち、オフィス・店舗・工場などの照明器具や、舞台・スタジオや空港などの専門性の高い照明システムに加えて車載光源、紫外線光源およびそれらを組み込んだ光学装置、赤外線ヒーターといった産業光源など幅広く事業展開している。
ともに「光」を軸に事業を展開している両社は、いまだ収束の兆しが見えない新型コロナウイルスの感染拡大の防止に向けて、それぞれの光技術を融合させることで安心・安全な空間・環境を光で実現すべく今回の業務提携に至った。これにより両社は、自動車/鉄道車両向け紫外線除菌・ウイルス抑制装置を共同開発するとともに、ウシオ電機は自社のCare222光源モジュールを東芝ライテックへ供給し、東芝ライテックはCare222光源モジュールを自社の照明器具に組み込むことで「ウイルス抑制・除菌+照明」という新しいコンセプトの商品やサービスを開発する。
なお、開発された商品は、2021年1月からの販売を目指している。
移動空間や公共空間でのウイルス感染リスク低減
8月26日に行われた製品発表会では、ウシオ電機の内藤宏治社長が「わが社では以前から紫外線殺菌に取り組んできたが、問い合わせは年間で約100件程度だった。しかしながら今回の製品開発を発表した3月以降、半年で2千を超える国内外の施設や団体、企業から購入や設置、共同開発の問い合わせをいただいている。この紫外線ウイルス不活化・殺菌技術は従来の殺菌方法とは異なるまったく新しい技術で、弊社としてはこれまでの殺菌技術や紫外線に対するイメージを払拭しウィズコロナ時代における安心・安全な空間や環境の実現に貢献する」と述べた。
今後の展開については、「照明機器・空調設備・昇降機などの空間インフラ市場(Step1・2020年度)、自動車・電車・航空機・船舶などのMaas市場(Step2・2022年度)、治療機器・除染機器・感染予防機器などの医療機器市場(Step3・2025年度)の3つのステップによりCare222の基盤確立と拡大を目指す」ことを明らかにしたうえで、「安心・安全な空間を実現するために私たちは東芝ライテックさんという国内の有力メーカーとの業務提携に合意した。産業向けから医療向けまで光源をはじめとしたコンポーネントを得意とするわが社と、照明アプリケーションに強く自動車産業や公共施設へのパスをはじめ強い販売力を持つ東芝ライテックさん。ともに光を軸に事業を展開している両社の特性を融合させることで、不特定多数が共有する公共交通機関や施設における感染リスクの低減、ひいては安心・安全な空間や環境を光で実現すべく今回の業務提携に至った。これにより、紫外線殺菌・ウイルス不活化装置を共同開発するとともに、わが社がCare222光源モジュールを東芝ライテックさんに供給し東芝ライテックさんが自社の照明器具に組み込むことで『ウイルス不活化・殺菌+照明』という新しいコンセプトの商品やサービスを開発する」と業務提携の意義を説明した。
一方、東芝ライテックの平岡敏行社長は、「当社の照明事業には130年の歴史があり、最近ではカメラ付きLED照明などを開発している。紫外線領域においては、古くは1930年の紫外線放射電球、最近では深紫外線LED流水殺菌モジュールなどを手掛けてきた。こういったランプの技術や紫外線に対する技術の蓄積などを評価していただき、我々を選んでいただけたものと考えている。今回の業務提携は、『UVライティング』というコンセプトで社会貢献したい。プロフェッショナルユースを得意とするウシオ電機さんと公共施設や交通機関の顧客実績があり全国に広がる販売ネットワークを持つ当社が提携することでより早く商品を展開し、ユーザーに貢献することができる。世界中が新型コロナウイルスで困難を極めるなか、皆様のためになる商材をウシオ電機さんと一緒に1日も早く開発し、安心な暮らしに貢献したい」と述べた。
今後のモビリティおよびファシリティ向け商品展開については、順次案内する。
□安全で新しい紫外線によるウイルス不活化・殺菌技術Care222
Care222は、人や動物の皮膚や目に安全でありながら、紫外線本来のウイルス不活化・殺菌能力を保持した新しい紫外線光源。従来、紫外線によるウイルス不活化や殺菌には、波長254nmの紫外線が用いられてきたが、皮膚傷害などが発生するリスクが高く、人体への直接照射は避けられてきた。それに対し、ウシオが開発したCare222は、自社のエキシマランプに特殊な光学フィルタを組み合わせることで人体に安全な200〜230nm紫外線のみを照射。これにより、有人環境下においてウイルスや細菌の付着が疑われる空間や環境表面(建材や器具、衣服などに)に直接照射してのウイルス不活化・殺菌を可能にした。
製品は「Care222・U3ユニット」と「Care222光源モジュール」の2種類。「Care222・U3ユニット」は1台30万円で、9月から発売する。代理店を通して販売、設置する。「Care222光源モジュール」は、照明器具メーカーや空調機器メーカーなどに提供し、各メーカーのOEM製品として展開するほかモジュールを搭載した新製品の共同開発などにも取り組む。
業務提携について語る内藤ウシオ電機社長㊨と平岡東芝ライテック社長