トップインタビュー 新事業戦略㊦ 矢崎エナジーシステム 矢﨑航社長

大変革期 顧客と越える
関東圏 新設含め物流戦略策定
サービスに注力、提供

矢崎エナジーシステム 矢﨑航社長


矢崎エナジーシステムの矢﨑航社長は「今後、製品のほか、サービスにも注力し顧客と一緒にAI、IoTの大変革期を乗り切りたい。その際、専門家たちも新戦力に加え、自分が事業責任者になり当社の統合基幹業務システムを刷新する。電材店など膨大な顧客データを集めAIで整理・分析し有効活用できるようにした上で、他情報と合わせて展開する。つまりモノづくりに限らず、在庫や物流なども含む高付加価値な新トータルソリューションを顧客に提供したい」と語った。また、関東エリアの物流網について「16年に神奈川県海老名市に東日本物流センターを新設して以来、千葉・野田拠点、静岡・沼津拠点の3拠点でカバーしてきた。ただ、物流量は飽和状態に近づいたため、関東エリアでの拠点新設なども含む物流戦略プランを、今期中に策定する予定」と語った。(前号から続き)


―(前号からの続きで)御社における注力製品や技術、注力サービスについては、どうか?

「これまでの基本路線を変えずに、やわらか電線もしかり、顧客の現場にやさしく、喜ばれる製品を開発することに注力する。

今後は特に、製品のみならず、サービスにも注力しながら、顧客と一緒にAI、IoTの大変革期を乗り切り、そのノウハウも共有しながら、ともに成長し発展を遂げたい。同時に現状の方式を継続する顧客も、今まで以上に大切にしながら、多様なニーズに最適に対応したい。

そうした中で、これからの取り組みとしては、当社の統合基幹業務システム(ERP=エンタープライズ・リソース・プランニング)を刷新する。さらに、より細やかな顧客サービスの強化、充実を図るため、ツールとしてAIデジタルを活用していきたい。

これは電材店など膨大な顧客データを集めてAIで整理・分析し有効活用できるものにした上で、ほかの情報と組み合わせて新たなソリューションを顧客に提案するサービスである。この分野の専門家たちも新たに戦力に加え、自分が事業責任者となり、モノづくりのみならず、在庫や物流なども含めた高付加価値なトータルソリューションを顧客に提供したい」

アルミ電線の展開 矢崎グループ内で協力し、研究開発

 ―御社における電線ケーブルのアルミ化への取り組みは、どのようになっているか?

「色々な企業がアルミ化へ取り組んでいる。当社の技術陣も矢崎グループ内で協力して研究開発を推進し、合金を含むアルミ電線の需要が本格的に動き出した際には、いつでも対応できる態勢にしたい。しかし現状、アルミ電線が軽くて安価というだけでは、建設電販分野での本格的な普及にはつながらない点もあり、長い目で見ても銅電線は必要と捉えている」

 ―御社の国内の物流拠点への取り組みは、どうか?

「関東エリアの物流網は、16年に神奈川県海老名市に大型の『東日本物流センター』を開設して以来、千葉県の野田拠点、静岡県の沼津拠点の3拠点でカバーしているが、物流量は飽和状態に近づいてきた。そのため関東エリアでの新拠点設立なども含めた物流戦略プランを今期中に策定する予定である」

 ―御社の国内における設備投資については、どうか?

「コロナ禍のなか特段、目新しい展開はないものの、当社の沼津製作所における新工場の設備投資については、順調に進んでいる。また、新工場南棟の空いたスペースに、電線の製造設備を導入する。これは旧工場分の設備更新のためだ」

 ―ところで御社における海外事業展開については、どうか?

「注力するのは、タイ矢崎を軸とした東南アジアにおける事業展開である。タイはもちろんのこと、カンボジア、ミャンマーで積極的な市場開拓を図っている。国によって文化や商習慣が異なるため、タイ矢崎の時と同様に、現地ローカルのパートナーとともに、その国の人たちを尊重しながら、社員教育・育成や企業の発展に、長い目で取り組む。

例えば製造拠点を設ける場合には、タイ矢崎がマザー工場になる。タイ矢崎の製造エンジニアの中には、電線製造のキャリアが数十年になる人たちも多い。こうしたエンジニアたちにASEAN戦略の製造スタッフとして活躍してもらいたい。そうした場合、既存のタイ矢崎パパデン工場で余剰となる電線製造マシンを有効活用していくことも考えている」

DX化が進む情勢下 顧客に選んで貰える新ソリューションを

 ―御社における中期経営計画の取り組みについては?

「現状、従来通りで大きな方向性の変化はない。つまり電線事業に傾注しながらも、非電線の売上高割合を伸ばしていく。さらに国内の電線事業に力を注ぐと同時に、海外の電線事業の売上高割合を増やしていきたい。また、AIをはじめとした最先端のデジタル技術を用いて、ビジネスを変革するDX(デジタル・トランスフォーメーション)化が進む情勢下、当社のビジネスも大きな変化点に差し掛かっている。その潮流をしっかりと把握して、顧客に当社を選んでもらえるような新たなソリューションを提供していきたい」

 ―今年度における御社の最重要課題について伺いたい。

「足下のコロナ禍対応である。顧客はコロナ禍で、様々な困りごとを抱えている。それにしっかりと応えていくことにある」

電線新聞 4220号掲載