電子情報技術産業協会(JEITA)はこのほど、2021年度税制改正要望書をまとめた。
デジタルサービスを活用したビジネスモデルへの変革が世界中で起こり、この変革の流れを取り込むことが国際競争力強化に向けて極めて重要となっている。
加えて、新型コロナウイルス感染拡大により、遠隔・非接触・非対面のデジタルサービスを活用したニューノーマル社会を早急に構築しなければならない状況にある。
わが国においても、デジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れから、ビジネスモデル・産業構造の変化への取組み等を推進することが成長戦略実行計画2020にも明記されている。
JEITAでは、デジタルサービスの根幹を支えるソフトウェアをはじめとした研究開発や柔軟な組織再編の促進等、ビジネスモデル変革の後押しに向けた税制面での支援を要望する。
①研究開発税制の拡充
●(1)質的拡大
自社利用ソフトウェアのうち、クラウド等の顧客にサービスを提供するためのソフトウェア開発費(製品開発のために用いられる検証ツール等も含む)を試験研究費の対象とすること。なお、クラウド等のサービス利用についても支援する税制措置を創設すること。
●(2)量的拡大
総額型における控除上限の引上げ(現行法人税額25%↓30%)
②株対価M&Aに係る株式譲渡益の課税繰り延べ措置の本則化(事前認定の廃止)
大胆な事業再編の促進を目的として平成30年度税制改正において株式対価M&Aに係る株主の株式譲渡益課税の繰延制度が創設された一方、M&A実務にそぐわない事前認定を受けることが要件となっており、現行制度では認定実績が増加しない状況にある。
昨年度の税制改正大綱においても、会社法制の見直しを踏まえて組織再編税制等も含めた理論的な整理を行ったうえで必要な税制措置について引き続き検討することが明記されている。
新型コロナイルスの影響により、ビジネスモデル変革の前倒しやデジタルサービスが求められるなかで設備・開発・M&A投資が必要であり、柔軟な組織再編に向けてキャッシュを使用しない株対価M&Aは有効なものとなる。現状、租税特別措置法となっている本税制措置について事前認定を必要としない円滑な事業再編を促進できるよう、本則化を要望する。
③繰越欠損金における繰越期間の延長(現行10年↓20年)
わが国の欠損金の繰越期間は10年で、他国は無期限など諸外国と比べて不利な状況にある。
今回の新型コロナウイルスの影響によりアメリカでは繰越欠損金制度の緩和(控除上限80↓100%への引上げ)、ドイツでは繰り戻し還付の時限的上限引上げ等制度自体の緩和を実施している。
わが国においても、経済回復後を見越したリスクの高い事業への投資を促進させるために、少なくとも繰越期間の現行10年を20年へ延長するよう要望する。
④技術研究組合の所得計算の特例措置の延長
技術研究組合が試験研究の用に供するために取得し、または製作した機械設備(固定資産)について帳簿価格を1円として財産目録に圧縮記帳する特例措置の適用期限の延長を要望する。