電工さんの工具箱  第31回「カッターナイフ」日本生まれの画期的な道具

カッターにまつわる、よもやま話

職人さんの腰袋にはもちろん、どこの家庭にも1本はあるであろうカッターナイフ。切れ味が悪くなった刃先を折り取るという画期的な「折る刃式」は世界の国々でも愛用されているが、実は日本発祥の道具だ。オルファ株式会社の創業者である岡田良男氏が1956(昭和31)年に発明したもので、社名の由来が「折る刃」というのは有名な話。岡田氏の最初の仕事は電気の見習い工だったそうで、そのときにいろいろな道具を使った経験が後のカッターナイフづくりに役立ったという。

ちなみに、タイヤメーカーの「ブリヂストン」は、“石橋”さんという創業者の名字を英語の“ストーンブリッジ”にして、さらにひっくり返した“ブリッジストーン”が由来。また、衛生陶器メーカーの「TOTO」は、創業時の社名だった東洋陶器(Toyo Toki)の略称。殺虫剤で知られる「フマキラー」は、FLY(蚊)+MOSQUITO(ハエ)+KILLER(殺し屋)の造語。惜しまれつつ解散したジャニーズの「SMAP」は、スポーツとミュージックと…どんどん話が横道にそれるので、このへんにしておこう。
カッターナイフが誕生する以前は、紙などを切る際にはカミソリや普通のナイフを用いていたそうだ。しかし、使っていると当然ながら切れ味は落ちるし、ナイフなどは何度も研がなければならない。板チョコをヒントに発想したという「折る刃式」がいかに便利かが分かるというもの。

ちなみに(が多いけれど)、「カッター」という呼称を初めて使用したのはエヌティー株式会社だそうだが、どちらにせよ登録商標ではなく一般名称のようだ。同じカッターでも「カッターシャツ」はスポーツ用品メーカー「ミズノ」の元商標名なので、「ワイシャツ」などと書き換えるのが望ましい。また、「セロテープ」も「宅急便」も「タッパー」も「オセロゲーム」も「タバスコ」も「ユンボ」も登録商標なので、それぞれ「セロハンテープ」「宅配便」「食品保存容器」「リバーシ」「ペッパーソース」「パワーショベル」などと言い換えなければならない。ちなみに、オセロゲームも日本発祥だ。また話が大きく横道にそれてしまった。
日本で生まれ、世界で使われているカッターナイフだが、その名称も和製英語なので外国では通用しない。英語圏の国では「ユーティリティーナイフ」が一般的で、刃そのものを取り替えるタイプが主流。「折る刃式」はジャパニーズカッターと呼ばれることもある。

用途に合わせて多彩なカッターナイフ

日本では老舗のオルファやエヌティーが有名だが、今は工具メーカーから文具メーカーまで、さまざまな会社が多種多様なカッターナイフを製造・販売している。電工ナイフなど通常のナイフと違って刃が替えられるので、やはり刃の種類が豊富だ。幅は小型の9mmから大型の18mm、特大の25mmなど。角度は一般的な60度や、細かい作業に適した30度など。形状はペン型、フック型、ノコギリ型、円形などなど。左利き用もあれば電工用もあり、用途に合わせて選ぶことができる。
電気工事の現場ならケーブルの被覆むきはもちろん、梱包をバラしたり、養生シートを切ったり、何かと便利なカッターナイフだが、切れ味が鋭いだけに取り扱いにはくれぐれも注意してほしい。ちょっとした油断が大きなけがにつながる。また、仕事以外で正当な理由なく持ち歩いていると法律に触れるので、それもご注意を。道具は正しく安全に使用しよう。