トップインタビュー 因幡電機産業の喜多肇一社長 ジャンボ見本市、リアル大阪会場&バーチャル開催

前向きな提案型営業し事業領域も拡大

因幡電機産業株式会社 代表取締役社長 喜多肇一氏


因幡電機産業の喜多肇一社長は、取材のなかで、「今年のジャンボびっくり見本市は、メーカーや顧客の要望もあり、感染予防対策を十分に取ったうえで例年通りにインテックス大阪にて(リアル)開催する。一方、東京会場は五輪延期で会場確保が難しく2年続けて中止になったが、ウェブ上(バーチャル)で全国を対象に『バーチャルジャンボびっくり見本市』を大阪と同じ会期で行う。コロナ禍で密状態回避のため、今年は顧客動員より売上高(総売上目標131億円うちウェブは30億円)に重点を置く。また、ニーズを最優先にコロナ禍のピンチをチャンスに変えるため(ジャンボをはじめ)前向きな提案型営業を行う」と述べた。また、喜多社長は、商社の強みを活かした製品開発や、情通、建材分野などへの事業領域の拡大と、首都圏もカバーする東日本エリアの増員を図る意向を示した。


 ―今回のジャンボびっくり見本市の見所は?

「今年の第47回ジャンボびっくり見本市は、メーカーや顧客からの要望もあり、感染予防対策を十分に取ったうえで大阪会場のインテックス大阪6号館C・Dゾーンにおいて例年通りに(リアル)開催する。会期は4月9日、10日の両日。
一方、東京会場は、五輪の延期で展示場の確保が難しく、2年続けて中止になったが、ウェブ上(バーチャル)にて全国を対象に『バーチャルジャンボびっくり見本市』を大阪と同じ会期で行う。今年は密状態の回避のため、顧客動員よりも、売上高に重点を置く。また、常に顧客に寄り添い、ニーズを最優先にコロナ禍のピンチをチャンスに変えるため、(ジャンボをはじめとして)前向きで積極的な提案型営業を推進する。今後、バーチャルは進化するだろうし、それを有効に活用していきたい」

 ―ジャンボの具体的な見所や目標は?

「『再始動! 新たな時代の春の祭典』を総合テーマに、電線・ケーブルをはじめとした電設資材、照明、工具、電子・制御、情報・通信・セキュリティ、空調・住宅設備の最新製品&技術の展示即売会と銘打って実施する。サブタイトルは、『総合力で魅せる! 専門メーカー200数十社が一堂に集う(展示即売会)』とした。特にコロナ禍でデジタル化の流れが加速し、IoT・5G・ロボットなどの需要も、さらに高まっている。これら新商材や新システムも訴求していく。
コロナ禍を契機とした社会変化を踏まえ、①特設テーマゾーンでは『ニューノーマルの時代をつくる』(~Society5・0の実現に向けて~)と題し、期待されるイノベーション像などを盛り込みながら、新たな価値を発信していく。
また、②テクニカルセミナーが4月9日に『デジタルとリアルが融合する次世代工場とは?』(講師:飯野英城オフィス エフエイ・コム社長)というテーマで(ジャンボ会場とは別のセンタービル2F国際会議ホールで)行われる。
このほか、③来場者が投票で選ぶ『いちおし商品コンテスト』の実施や、『ショッピングモール』の開設、さらには“日本の電気工事をハッピーに”を主眼にし、商社の強みと共存共栄の理念が生んだ『電設資材の当社オリジナルブランドJAPPY』展示などの多彩な催しを用意している。

総売上目標131億円 うちウェブは30億円

一方、第47回の出展店数(1月28日現在)は、大阪・リアルが238社(19年の大阪257社、同東京205社)、バーチャルは82社。売上高目標は、全体で131億円。このうち大阪・リアルが101億円(19年大阪の実績113・4億円、同東京実績74・9億円)、ウェブ30億円に設定した。参加見込み数は、今年は非公表だが、19年の大阪は目標が2万1千800人超、実績2万2千144人、19年の東京は目標が1万5千人超、同実績は1万3千337人となった。
また、この催事は、例年2万人超が来場し、招待制で狙い通りの客層が参集しており、招待客の80%が来場するのが、大きな特色。大阪・リアル開催では、近畿2府4県を中心に西日本全域の電材卸業、工事業、ゼネコン、住宅メーカー、制御・電子関連メーカー、設計事務所関係者などで賑わう」

 ―ウェブ(バーチャル)会場の展開は?

「①ゲーム感覚でメーカーの特設テーマゾーン展示を訪問・閲覧できる方式を導入した。また、リアルと同様に②会場で行うテクニカルセミナーのライブ配信のほか、③来場者が投票で選ぶ『いちおし商品コンテスト』の実施や、ポイント券で買い物が楽しめる『ショッピングモール』の開設などを行う。また、各種展示の閲覧に伴う記念品の後日進呈などの様々な特典も用意し、趣向を凝らした」

 ―ところで、感染予防対策とは?

「具体的には全参加者のマスク着用を実施し、37.5℃以上の発熱者の入場制限を行い、セミナー会場を含む展示会場内での消毒液の設置はもとより、三密対策のため会場内での抽選会も中止した。また、最寄り駅から会場までの送迎シャトルバスや遠方からの参加者のバス動員を中止した。さらに、会場などでの食事中止、医師・看護婦の医務室常駐、混雑時に応じた入場制限の実施などを遂行する」

商社の強み活かしたものづくりと開発を

 ―御社の注力製品は、どんなものがあるか?

「先に一部触れたが、物販に限らず、物販を含めたシステムで付加価値を高めた提案営業を進める。並行して顧客の困り事に即したソリューション営業にも力を注ぐ。分野別ではロボット、情通分野などが対象だ。

一例として、ワゴジャパンのファシリティソリューションが挙げられる。これはビル内において、つながる機器・システムで国内最大クラスの便利なゲートウェイ+コントローラーによって、情通、照明・湿度および温度・大気圧、シャッターなどの開閉や二酸化炭素量などを最適化するもの。バッテリーレスで作動するワイヤレスセンサ・スイッチの画期的な技術によって、運動エネルギー、圧力、光や温度差などを利用し発電、送受信する。加えて壁スイッチなどの配線が不要で、工事費の大幅削減が図れる。そのため顧客の反応も良好だ」

 ―電材と電設などの事業見通しは?

「20FYの電材売上高は、コロナ禍で第1Qの苦戦が尾を引き、着地は厳しい見通し。また、ここにきて銅価が急騰し、その価格転嫁をしっかりと実施し、収益の改善を図る。21FYの電材売上高は、コロナ禍の影響が薄れ、少しでも上向くことに期待したい。
ただ、21FYの電設売上高は、東京五輪の開催で、首都圏の工事中断などが懸念され、厳しい見通し。
産業機器(産機)事業の20FY売上見通しは、設備投資の伸び悩みで電材よりさらに厳しい見通しだが、21FYは、電子部品が好調に動くなど、先行き明るい兆しがみえてきた」
―コロナ禍のなか20FYや21FY事業展開で、好材料は何か?
「巣ごもり需要などがあり、エアコン年間出荷台数が1千万台に迫る勢いだ。この需要の捕捉に加え、空調設備の自社製部材ビジネスも伸ばしたい。また、工作機械の需要や住宅着工件数も上向いており、当社にとって追い風になりそう。昨年同期からコロナ禍で市場の動きが、停止した感がある情勢下、今年は一連の需要を第47回ジャンボによって発火し、一気に上昇気流に乗せたい」

 ―御社はメーカー機能を持つ商社として、事業が注目されているが?

「当社は4月1日付で、社長直轄の技術本部設置などの組織変更を行う。この再編によって、商社ならではの強みを従来以上に活かし、顧客(現場)の声を直接ものづくり・製品開発に反映できるメーカーにしたい」

事業領域の拡大推進 情通、建材など傾注

 ―電材や電設の事業戦略は?

「当社の電材や電設ビジネスは、首都圏がメインのため、東日本エリアで増員を図っている。現状、営業人員は西日本より、東日本の方が多いかもしれない。当社の同ビジネスは従来、本社のお膝元である大阪を中心に西日本の方が強かったが、今後は市場開拓の余地がある東日本エリアで戦略を強化する。そのため東日本エリアの新卒採用も増やしていきたい」

 ―産業機械(産機)の事業戦略は?

「事例を挙げるとロボット及び、そのシステム事業などを展開する。ロボットと自動搬送機の事業は、売上規模が小さいが、コロナ禍でも伸び率は高く注目している。工場向けなどの引き合いが強く、その省人化などで市場は拡大する見通し」

 ―他に、どのような事業戦略があるか?

「事業領域の拡大を進めたい。具体的には情通、管工機材、建材などになる。いずれも当社の現事業に隣接している分野・産業であり、取引メーカー数も拡大したい。また、その際には、将来に向けアンテナを高くし方向をしっかりと見極めながら進める」

 ―営業戦略は?

「営業戦略本部を指令塔にし、4カンパニー(電材、電設、産機、電工)に横串を通し、効率的、柔軟に事業展開し、シナジーを発揮したい。また、並行して電材、電設分野などで色々な資格取得者を増やし、技術面などの専門性を磨き、その付加価値を高めていきたい」

 ―中期事業計画は?

「現状、ローリング方式で中計に取り組んでおり、23FY通期連結事業計画では売上高2千860億円(20FY対比7・9%増)、営業利益143億円(同7・5%増)を目指している。ただ、先行きコロナ禍の動向などで中計を変更する可能性がある」
―御社の最重要課題とは?

「新型コロナで市場環境が変貌したり、あまり変化がなかったり、色々なケースが想定される。いかなる状態でも付加価値の高い商材やサービスを提供していきたい。これに適した組織体制にするとともに、自由闊達なチャレンジができる企業体質にし、成果に報いていきたい。さらに、会社を支える人材育成も必要である」

出展企業の注力製品

電線新聞 4234号掲載