電設・ウォッチ! 第2回 人手不足をどうやって解消するか?

深刻化する人手不足

日本の多くの労働現場は、いま深刻な人手不足に直面しています。電気工事業界も例外ではありません。今回はその現状と解決方法について考えてみました。

現在、業界全体の現状はどのようになっているのでしょうか。

いま直面しているもっとも大きな動きとしては、エコ商品への切り替えがあげられます。パリ協定の締結にともなって、環境への配慮は官民一体となって取り組むべき重要な課題となっています。そのため各事業所や工場などにおいてEMS(エネルギー・マネジメント・システム)の導入や、太陽光発電などのエコ商品の受注が増加しています。

次にインターネット業界の発展にともなうエネルギー需要の増加があります。IT関連企業に対するインフラ整備の受注が、今後ますます増えると予想されています。そのほか電気自動車の普及に向けた充電施設の拡大や、スマートハウスの建設にともなう工事の需要、2020年に向けてオリンピック関連の電気工事、あるいは震災復興に関わる工事などもまだこれから続いていくことでしょう。

また最近では、設備の老朽化にともなってビルや工場の改修・補修工事の受注も活発になっています。電気工事会社の中には新規の建設にともなう工事は受注せず、改修・補修のみの工事を受けているところもあります。

このように、電気工事関連の仕事量は今後ますます増加していくと思われます。

しかしその反面、人手不足は深刻化する一方です。

少子高齢化による労働人口の減少は著しく、50年後には現在の半分に減ってしまうという調査報告もあります(国立社会保障・人口問題研究所の発表より)。先に述べたように電気工事の受注は増加することが見込まれていますが、それを支えるべき「電気工事士」の人材が不足しているのです。

こうした動きは2020年の東京オリンピック後に、顕著に現れるといわれています。これからは電気工事士を確保している企業が生き残る時代なのです。

では電気工事会社は、今後どのようにして優秀な人材を確保すればよいのでしょうか?

その具体例を順にあげていきたいと思います。

1・シニア世代を取り込んで再雇用化を図る

「中国系の企業が、邦人技術者をヘッドハンティングしている」…近年そんな報道がメディアをにぎわせています。それは働き盛りの技術者だけでなく、定年退職したシニア世代やリストラ対象者にまでおよんでいるといいます。

なぜ中国企業が邦人技術者を求めるのか? 急成長を続ける中国企業がいまいちばん欲しいのは、日本企業が時間とお金をかけて築いてきた高い技術力にほかなりません。それを手っ取り早く手に入れるには「人材を引き抜く」こと。それは電気工事業界も例外ではありません。

国内に目を向けると、団塊の世代が65歳定年を迎え、シニア世代の技術者が行き場を失っているという現実があります。体力と意欲にあふれ、活発に行動する「アクティブ・シニア」が増えているにもかかわらず、貴重な戦力として捉えている企業はまだまだ少ないのが現実です。

シニア世代の電気工事士

このような状況を踏まえた上で、積極的にシニア世代にむけた求人活動を行うことは、電気工事業界全体の活性化につながるだけでなく、高度な技術力の海外流出を防ぐ手だてになるともいえます。