電設・ウォッチ! 第9回 SDGsと電気工事業界にはどんな関わりがある?

「SDGs」という言葉をご存知でしょうか。SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称で、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」という意味です。

昨今、企業の指針などでちらほら耳にすることがあるSDGsですが、そもそもどういった内容で、私たちの生活とどのように関係するのでしょうか。

そこで、SDGsの具体的な内容をご紹介しつつ、今後、私たちの生活や仕事にどう関わってくるのかを紐解いていきましょう。

17の目標と169の具体目標

SDGsとは、簡単に言えば、世界に存在する様々な問題を解決する目標のことです。2015年9月に国連総会で採決されました。

まず、SDGsは17の大きな目標があります。具体的には「働きがい」や「健康」に関する身近なものから「平和」や「気候変動」といった規模の大きなものまで、さまざまな問題を解決するための目標となっています。

さらに、その17の目標をより深く掘り下げたものが、169の具体目標です。例として「目標2 飢餓をゼロに」に設定されている具体目標の一部をご紹介します。

・2.1 2030年までに、飢餓を撲滅し、全ての人々、特に貧困層および幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。

・2.2 5歳未満の子供の発育阻害や消耗性疾患について国際的に合意されたターゲットを2025年までに達成するなど、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消し、若年女子、妊婦・授乳婦及び高齢者の栄養ニーズへの対処を行う。

「飢餓をゼロに」という目標だけを提示されると「では具体的にどのような行動が必要となるのか」という疑問が浮かびます。169の具体目標では、それぞれの目標の具体的な達成期限や対象となる人々が事細かに設定されています。

実は、SDGsは2015年が達成期限と定められていた「MDGs(ミレニアム開発目標)」が前身となっています。MDGsは「エイズやHIVの蔓延を防止」や「乳幼児死亡率の削減」など8つの目標が掲げられていました。ですが、国によって状況が異なるため、発展途上国を軽視しているのでは?という声もありました。

そこで、発展途上国も先進国も、すべて取りこぼさないように、細かい要素を盛り込んで設定されたのがSDGsなのです。

電気工事業界も無縁ではないSDGs

SDGsの中で最も電気工事業界に関わりがあるのは目標7の「手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」でしょう。

世界的に見ても、エネルギー問題は深刻で、5人に1人は電気を使わずに生活をしていると言われています。石炭や石油といったエネルギー源から脱し、クリーンで枯渇の恐れが少ない再生エネルギーに切り替えていくことが必要とされているのです。

日本では再生エネルギーの発電コストが高く、国民が負担する金額もおのずと高くなっています。そのため、日本はまだまだ石炭や石油に依存している状況だといえるでしょう。

【図A 2018年の電源構成:世界15カ国】 出典:電気事業連合会

 再生エネルギーを日本の主流電力として普及させるためにも、電気業界の取り組みは欠かせません。
環境への負担の少ない更なるクリーンエネルギーの研究・開発も、重要な取り組みのひとつです。

さらに、再生エネルギーの普及はCO2削減の助けになり、目標13の「気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る」の達成にも繋がります。

そんな世界規模の話となると、多くの方々は「関係ない」と感じるかもしれませんが、実はそうではありません。

SDGsは、個人であってもできることはたくさんあります。さらに、これからの時代SDGsに繋がるサービスや商品は、大きなビジネスチャンスに変わると見られています。

まずは経営コンサルタント会社・デトロイトトーマツが発表した、SDGsが達成された場合の市場規模試算結果を見てみましょう。

【図B SDGsの各目標の市場規模試算結果】出典:デトロイトトーマツ

 試算によると、17の目標の中でも電気業界に深く関わりのある目標7が、最も大きな市場規模になるという結果が出ました。今後SDGsに力を入れる企業が増える中、太陽光発電システムの設置や施工、メンテナンスなどの需要も高くなっていくと考えられます。

また、白熱電球をCO2の排出量が少ないLED電球に変える、お客様に節電対策を提案するなど、地道な活動からSDGsの目標を達成することへと繋がっていきます。

すべての目標が関わりあうSDGs

さらに、電気業界が直接的に取り組めるもの以外にも、企業として行えるものとしては以下の目標が挙げられます。

・目標8 包摂的かつ持続可能な経済成長及び全ての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用を促進する

・目標17 持続可能な開発に向けて実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する

目標8と17は、簡単にいうと従業員が働きやすい環境を作ることや企業同士の協定などを指します。

一見、電気業界とは無関係な目標に見えますが、SDGsは、すべての目標がそれぞれ関係し、絡み合っています。企業の状態や雇用問題を良くすることが、環境問題を解決することにも繋がる……。それが、SDGsの考え方なのです。

まとめ

企業広報戦略研究所が行った『ESG /SDGsに関する意識調査』というリサーチによると、2019年時点でのSDGsについて「詳しく知っている」「聞いたことはある」と回答した人は24.2%でした。まだまだ認知度は低いと言えるでしょう。

SDGsには、貧困や男女格差といった世界規模の問題が含まれており、個人や民間企業レベルで取り組むことは難しいように思えます。しかし、SDGsの目標達成には、民間企業のサービスや商品、また個人が関心を持つことが欠かせないのです。

例えば、スーパーで買い物をするときにマイバッグを持っていく、使っていない家電は小まめに電源を切る……。
そんな小さな行動でも、積み重ねていけば、環境保護や電力節約に繋がるはずです。

「誰も置き去りにしない」を基本理念として掲げているSDGs。私たちの次の世代に過ごしやすい環境を残すためにも、今できる小さな行動から始めていきませんか?